第3話代償

 スキル【血の代価】を使った事により手に入った、いつもの見慣れていた容器に入ったダ◯ショウの味塩胡椒。血が対価とはいえ異世界で手に入れる事が出来るとは…。スキルって素晴らしいな。


 そんな事を思いながらダ◯ショウの味塩胡椒をこの手に取った俺は、何それって感じでこちらの様子を見ているアイシスへとコレの素晴らしさを説明する事に。


「これこれ、コレだよコレ!これがダ◯ショウの味塩胡椒だ!」


「ええ…と、凄いのソレ? レインのテンションの高さから大体は想像出来るけど…」


「万能調味料と言っても過言ではない!塩と胡椒がなんとっ!!両方入っているんだぜ」


「!!?」


 ふふふ…流石にアイシスが驚いているな。


「こ、高級な調味料が2つも入っているなんて…」


 驚愕な表情で俺が手にしてる物をガン見してらっしゃるもの。


「ま、待って…ソレには問題がある筈よ…」


「問題?」


「そう、問題は味と品質よ!たまに、ほんのたま〜に…とても安い塩や胡椒が手に入る事もあるのだけれど味も品質も最低なのよ!」


 アイシスはノリがいいな。


「ふっふっふっ…その辺に抜かりがあるとでも…ダ◯ショウだぞっ?」


「っ!? へぇ~ えらく自信があるじゃない。私の舌はちょっとやそっとじゃ唸らせられないわよ?」


 オーク肉を平気でそのまま食べてたじゃんとは紳士の俺は突っ込まない。


「なぁ…アイシス。何故…商品名に味が付いてると思う?」


「ま、まさか…その名の通り…味も品質も…」


「そのまさかだ!味に自信がある為だ!勿論品質もな!」


「そんな…」


「―と、まあ、おふざけはこれ位にしておこう。話を盛り上げてくれてありがとうな」


「ううん。楽しかったよ?」


「それじゃあ、コレを使って料理したいと思う!」


「レインは料理出来るの?」


「お茶の子さいさいだな」


 趣味が多才だったから何でもござれだ。


「その意味は理解出来ないけどレインが料理が得意なのは分かった」


 さあ、調理しようか!と思い台所に立つ。そしてアイシスに用意してもらったオーク肉を見て思ってしまった。味付けしたオーク肉のステーキだけでいいのかと。オーク肉って豚の肉に近いんじゃないかと。ならばトンカツを作るべきではないかと。


「アイシス」


「どうしたの?」


「油やパン粉、卵なんかってある?」


「…ないわね」


「だよな。


 後になって思うがコレは間違いだったなと思う。まあ、この時の俺は当然その事に気付く訳がなく、軽い気持ちで指先に傷をつけ、欲しいと思った物を思い描きながらスキルを発動させた。


「【血の代価】」


 胡椒の時と同じ様に垂らした血で魔法陣が描かれ光を放ちだした。その時前回とは違ったのは体から一気に大量に何かが失われた事。


「―ぐっ!?」


「レイン?」


 光が収まった時には目的の品々があったものの、俺は急に体が気怠くなり意識が遠くなる。フラフラになって倒れようとした俺をアイシスが抱き止めてくれた。


「レイン、しっかり!」


 心配そうなアイシスの声が聞こえる…。それとは別に直接何かが頭の中に響く…


【…欲しい】


 …欲しい?


【…呑みたい】


 …何を?


【…血】


 …血?


【血】


 …血が欲しい


 ボヤけた視界の端にアイシスの首筋が見える。綺麗な肌だ…。貪り尽くしたくなる。俺はアイシスの首筋に唇を落とし…


“ちゅっ…”


「んっ…ちょっとっ!?」


 俺を押し返して距離を取ろうとする。アイシス。咄嗟に強く抱き寄せ決して逃さない。


「れれれれレイン!?」


 そして…甘噛…はむはむ…


「んんっ!? あっ…レイン!?くすぐったい…」


 いつの間にか生えていた牙がアイシスの柔肌に”カプッ…“と、突き刺さり…


“ちゅぅぅぅぅぅ〜”


「あっ…体の力が…んっ…抜けっ…あん…」


“ちゅうぅぅ、ちゅうちゅう…”


「こ、こんなのっ…んぅっ…おかしく…なっちゃう…やぁっ…あぅっ…」


“ちゅうちゅう…ちゅぅぅう…”


「あんっ…だめ…レイ…ン…んあっ…やめっ…あっ…あっあっ…わた…し…もう…んっ

…あっあっ…んんあぁぁ―――」



 


***


「…こ、これは一体?」


 気が付いた時、辺りを見渡すと目の前にグッタリとして床に倒れているアイシスの姿が。


「アイシス!?」


 アイシスの溶体を確認するとどうやら眠っているみたいでおかしな所は見当たらなかった。ただ一点を除いて…。その一点とは首筋に何かに噛まれた様な跡と、そこから流れ出た様な少量の血の跡があるのだ。


 それを見て朧げながら思い出す。俺がアイシスの血を啜った時の事を…。


「うん…謝ろう。土下座して謝ろう。許して貰えるかは分からないが…とにかく謝ろう」



***


「…私…もうお嫁にいけない…」


「誠に申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁぁー!!!」


 アイシスが目を覚ますと同時に見事なジャンピング土下座と謝罪を決め込む俺。


「うぅぅ…しかも…あんな…あんな…はしたない声…私じゃない…もん…」


 喘ぎ声みたいで非常に良かったですよ?耳が孕みそうでした!もん―って言い方とっても可愛い!とか冗談でも言えないな。軽く殺される自信がある。


「お、お詫びとしてはなんですが美味しいお料理を心を込めて作らせて頂きますのでどうか寛大な処置を…」


「…甘いものも付けて?レインが手に入れたもののどれからかは分からないけど甘い香りがした気がしたから」


 嗅覚鋭いなっ!?開封してないはずだがっ!?流石女性…甘いものには目がないか?


「だが断るっ!」


 まあ、一度は言ってみたかったセリフだし定番だよな。


「…そう。それなら…レインを殺して私も死ぬわ!アーシェ様にはあの世でお詫びを…」


「じょ、冗談だから!?冗談だからな?これは異世界ジョークだから!?だからその剣は元の場所に戻そうなっ? なっ? 是非にとも喜んで作らせて貰うから!」




「―で、何作るの?」


「ああ。オーク肉のトンカツにオーク肉のステーキ、デザートにホットケーキを作るよ」


「ステーキだけは分かるけど…他は聞いたこともない料理ね。本当にレインがこことは違う所から来たのだと思うわ」


 アイシスから聞いた話ではこの世界は大体食材をそのまま焼くか煮るか位みたいなんだよな。


「取り敢えず鍋を二つ用意して油を入れ、【魔導コンロ】にセット!スイッチオーン!」


「スイッチオーンって…レインは魔力操作出来ないから実質スイッチつけるのは私だけどね?」


「細かい事は気にしないでくれ」


 流石は異世界だと思ったのがこの【魔導コンロ】。見た目は地球の家庭でよく見るガスコンロに似ていて、それを少し簡易化した感じの作りになっている。魔力を注いだら火が付くって仕組みの道具だ。こういった感じの道具を魔道具というらしい。流石異世界。【さすいせ】だな!


「さぁ!アイシスに舌鼓を打たせようか!」


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