第7話 エリザベスにできること

私はスター流の医務室で働くことになったのですが、怪我を治してほしいという依頼が来ないのです。


スター様の話によりますと通常の犯罪などは警察や軍隊に任せ、彼らでも対処できない問題が起きたときにはじめてスター流が動くとのことで活躍する機会が少ないのです。加えて彼らは日々鍛えていますから心身共に強靭で、同レベルの相手とプロレスバトルでもしない限りは命にかかるほどの重症を負うことはまずありません。


そういうわけで私はずっと待機ばかりし続けていましたが、その間にも色々とスター流の変革を試みました。まず最初に取り組んだのは武器の一新です。


彼らは何時代のものなのかと思うほど古い武器を使用していましたので最新の装備を提案したのです。


保安官のロディには銃弾が尽きることのない拳銃を装備してもらい、過去の戦闘で失ってしまった愛馬(名前は奇しくもエリザベスというのだそうです。私と同じですね)の代わりにモンスターバイクをプレゼントしました。鉄の馬ということで難色を示していたロディさんもしばらくすると素晴らしいバイクテクニックを身につけ、以前の数倍ほどパワーアップして活躍しています。


美琴の友人のムースには能力の応用を提案しました。

彼女は拷問器具を生成する能力者ですが多人数では不利だったので、一度で無数の拷問器具を生み出せ、さらに体力の消耗も抑えるように特訓してもらったところ飛躍的に能力の精度が高まり、強大になりました。


彼女は美琴と比較して負い目を感じていたのですが、これで美琴様をフォローできると大喜びで、貴族と王族という関係上、最初は折り合いが悪かった私に対してもハグをするまで親しくなりました。


カイザーの『太陽の拳』は威力は絶大ですが体力の消耗と周囲への被害が大きいことから、ふたりで話し合って考えた結果、太陽光線としてエネルギーを打ち出せないかという結論に至りました。


拳の先から凝縮した太陽エネルギーを放つというこの発想は見事大成功でした。一直線に放つので無駄なく、しかも強力に相手のみを狙うことができます。それに従来の『太陽の拳』よりもずっと体力の消耗が少ないことも判明し、大変に喜ばれました。


不動はよほどの時にしか使用しないという愛剣を鍛え磨き上げました。彼は肉弾戦が主ですけれど非常時に武器を使うこともありますから秘密兵器としていつでも使用できるように用意させていたのです。


ヨハネスには彼と共同で開発したメカスーツを装着してもらうことにしました。

これまでの戦いで失ったメンバーの能力を元に開発されたスーツで身体の各部位から刃やら火炎放射器やらが発動する仕掛けとなっています。亡くなったメンバーに模した能力を使用することで彼らに報いたいという彼なりの心情の現れでした。


私が来たことで、スター流は大幅なパワーアップをしたと自負しています。

これで、どんな脅威がきても大丈夫でしょう。


もし負傷したとしても私が触れたらあっという間に元通りです。


私はまだまだヒーローとしては駆け出しの未熟者ですけれど、大切な仲間と一緒に少しずつ歩みながら成長していきたいと願っています。


おしまい。

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深窓の令嬢、治癒能力者になる。 モンブラン博士 @maronn777

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