第11話 奈良時代に入りますよぉ

「さぁて、今回から奈良時代に入っていきますよ。壬申の乱の後。大宝律令(たいほうりつりょう)を導入し。なんやかんやあって律令国家へとなっていきます」



「なんやかんやあって、って何あったんだよ」



「なんやかんやとは……なんやがあったんです」



「そのなんやかんやを聞いてんだけど。ちょ、説明しきったみたいな顔止めて。なんか腹立つ」



「説明したら少し長くなります(面倒くさいです)が、語りましょうか」



「副音声きこえてるよ!」




「前回、前々回? 大化の改新により、公地公民制へと移行したと言いましたが、直ぐに公地公民制に移行できたわけではありませんでした。地方に行くほど法令に対する意識が低く。公地公民制? なにいってんだおめぇ? みたいな状態でした」



「まぁ、そうだろうな。いきなり国のモノになるって言われてもピンとこねぇよな」




「法令を周知させるため。中央は地方に国司(こくし)を派遣します。国司は赴任した地の住民に法令を周知させ。これから公地公民制になるので、そこんとこ(*´∀`*)ノってな感じで伝えます」



「あら可愛い絵文字。いや、そうじゃねぇよ。……中央から国司が送られるのは分かったが、地方に元々住んでいた。豪族(地方の有力者)とかは反発しなかったのか。いきなり民も土地も奪われ。更に、中央から来た奴が、我が物顔をするんだろう」



「そういった反発を防ぐために。豪族には郡司(ぐんし)と呼ばれる。国司を補佐する高い役職を授け。また、世襲を認めることで其の地位の保証もしました」



「成る程ねぇ。ところで、国司を補佐するって、何するんだ?」



「地方運営に関わること全てですね。……地方に於いては豪族の方が詳しいため。戸籍の作成を手伝ったり。嫌われる税の徴収を行ったりして。実務面で国司を支えましたね。国司の仕事は事務仕事がメインでしたので。事務の国司、実務の郡司と言った感じに上手いことしていました。言うならば、映画版ジャイ○ンとの○太のような良好な関係でした」



「まぁ、とりあえず。上手くいってたんだな」



「国司の尽力もあって。法令が地方でも認知され始めます。これにより律令導入の基板が出来上がりました」



「なぁ、そもそも律令って何なんだ?」



「律とは刑法、令とは行政法です。……律令を導入するには官僚組織が必要不可欠です。その為、唐の官僚組織を日本風にアレンジした二官八省を造り上げ。また、国司に戸籍を造らせ。税を徴収する準備を始めます」



「ほうほう」



「戸籍に登録された6才以上の者には、口分田(くぶんでん)という土地が与えられ。田を耕作する義務を負い。育った稲の3%は税として納める義務を負いました。これを祖(そ)と言います」




「収穫の3%なら良心的だな」



「…………」



「なに、その意味深な笑みは。怖いんだけど」



「此の時代、農耕技術はまだ未達で。与えられた口分田の収穫だけでは食べてはいけない状況でした。普通に食事したら十ヶ月ほどで枯渇します。そんな食料が足りない状態で更に3%も持って行かれるのです。また、地方の雑務を押しつけられる雑徭(ぞうよう)と呼ばれる労役も強制されます」



「マジかよ。腹減って動けねぇのに労役まであるのかよ」



「また、追い打ちを掛けるように、調と呼ばれる。地方の特産物を納める税と。庸と呼ばれる。労役を免除するため布を納める税も存在します。そして、この二つ調と庸は、中央政府まで自らの足で運ぶ必要がありました」



「はぁ? 中央が取りに来いや」



「そんなこんなで、殆どの民がその日暮らしの生活に追いやられました。ああ、あと、民が過労死や餓死。ゴホン、天寿を全うすると、口分田は国が回収し。次なる犠牲者、ゴホン、未来ある6才以上の子供に託されます。……口分田を与え、回収する仕組みを班田収授の法(はんでんしゅうじゅのほう)と言います」



「未来が見えないんだけど。口分田が与えられた子供の明日が見えないんだけど」



「これらの税が定まった結果、逃亡する者が続出し。……戸籍に登録とか、えっ、なに死にたいの? みたいな状況へと陥っていきます」



「最悪の方面に向かってるじゃねぇか!」



「そんな中、起死回生の策を打ちます。土地を開墾したら、三世代に渡って私有を認めるよ。やったね。というサービス政策を打ち出しました。これを三世一身法(さんぜいっしんのほう)と言います」



「これで多少は増しに……ならねぇよな。孫の代が終わると回収される土地を耕す理由が見当たらねぇ」



「良い着眼点ですね。その通りですよ。誰も耕さないため。これでは駄目だと思った貴族達は。墾田永年私財(こんでんえいねんしざい)の法を出します。これは、耕した土地は君のモノだよ(但し、国の管理する用水を使ったら駄目だよ。えっ、用水使わないと開墾できないって? それはそうだよ。だって、この制度、お金と人材が有り余ってる貴族達の政策なんだから)と言う。天の恵みとも取れる政策でした」



「副音声でとんでもねぇこと言ってるぞ! えっ、なに農民は無理なの?」



「無理ですね。その日暮らしの状況に追い詰められ。時間も体力もないのに。水路を切り拓き。開墾するだなんて。とても民には出来ません。その為、この政策で恩恵を受けたのは、貴族を始めとした豪族や寺社だけでした。……こうして、富める者は更に富み。貧する者は更に貧する状況へと陥っていきます。税を払えないモノは逃亡して、貴族や豪族の奴隷となり田を耕すことになり。……公地公民制? なにそれ、美味しいの? と言う状態に陥ります。めでたし、めでたし」



「めでたくない、めでたくない! 百年も経たずに公地公民制崩壊してんじゃねぇか! 結局は、人も土地も貴族や寺社のモノになってんじゃねぇか!」



「色々と問題のある律令制度ですが。律令の導入によって、中央集権化と国家の体制が整いました。後は、崩れるだけです」



「崩れちゃ不味いだろうが!」



「大丈夫です。唐でも律令制はマジ無理ゲーってなって。崩れましたから」



「マジかよ!」



「さて、今回は此処までにしましょうか。次回は奈良の文化についてですよ。それでは、まったねぇ」

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