第6話 邪馬台国ですよ

「さて、第6回は邪馬台国やまたいこくについてです。前回の最後に言った通り、邪馬台国は、分からないことだらけなので、あまり深く探ろうとしなくて結構ですよ。無駄な時間になると思いますので」



「分からないことが多いって、どういうことだ?」



「此の時代、日本で文字が普及しておらず。中国が書き残した史書からでしか日本の実態が分からないのです。……と言う訳で、中国の史書から日本を見てみましょうか」



 ふーぎは一呼吸置き。

 言葉を続ける。



「まず、中国で初めて日本について書かれたのが、「漢書」地理志ですね。紀元前1世紀の倭国(弥生時代の日本)は100近くの国に分裂していると書かれていました。そして、次に倭国が登場するのが、紀元前1世紀頃に書かれた「後漢書」東夷伝です。後漢の創設者、光武帝こうぶてい、又の名をラノベ主人公に対して、倭の奴国なのくにの王が、俺を倭国の統治者と認めてくれまへんか、って、使いを送り。光武帝は、ええで、って言って。漢委奴国王と彫った金印を渡しました」



「そんな軽いノリで良いの! つうか、ラノベ主人公ってなに!」



「文字通り、ラノベ主人公ですよ。光武帝は、百万の軍勢に三千の軍で突撃して勝利を収めたり。小さい頃から好意を抱いていたツンデレ幼なじみと結婚し。政略結婚とは言え、姉御肌の理知的な女性を娶り。二人の美女と共に国難を乗り越え。漢王朝を復古させ。後漢を創建すると言った。なに、このラノベ主人公みたいな存在です」



「なに、そのラブコメ人間」



「ちょっと話がずれたので戻しますね。「後漢書」東夷伝の後に、倭国の名が出てくるのが、魏志倭人伝です。で、この内容が色々と物議を醸し出します」



「文献が残ってるのに、なんで物議が起こんだよ」



「魏志倭人伝には、倭国の邪馬台国やまたいこくが纏まらないため。女性である、卑弥呼ひみこを王にすることで国を纏めた。と書かれているのですが……」



「書かれてるが、どうしたんだ」



「この邪馬台国の実態がよく分からないのです。後の時代に書かれる、日本書紀、古事記に邪馬台国の事はおろか、卑弥呼についての記載なく。邪馬台国の存在は、魏志倭人伝からでしか確認できない内容になっています」



「えっ、そうなの?」



「弥生時代が終わりに向かうと。ヤマト政権と呼ばれる天皇を中心とした政権が生まれますが、邪馬台国がこのヤマト政権なのか。それともヤマト政権と対立していた国家なのかが全く分からないのですよねぇ」



「その、なんだ。日本書紀とやらで、何か分かることはないのか? 魏志倭人伝の内容が書かれている部分とかさ」



「日本書紀の神功皇后(じんぐうこうごう)の説明欄に魏志倭人伝の内容が触れられています」



「皇后ってことは、答えは出てるじゃねぇか。要するに、中国では卑弥呼って言われてたが、日本では神功皇后って名だったんだろう」



「そうだったら、分かりやすいのですけどねぇ。……年代が合わなかったり、卑弥呼は夫を持たないと書かれており。夫を持つ神功皇后と合致しない部分が一杯出てくるのですよ」



「えっ、なら、どうして日本書紀の神功皇后の欄に魏志倭人伝の内容が書かれてるんだよ」



「日本書紀を書く際に、魏志倭人伝も参考にした結果。……卑弥呼とかしらへんな。誰やコイツ。せや、存在するかも分からんけど、色々と逸話がある神功皇后の紹介文に突っ込んだろう。こんな感じで組み入れたのでしょうね」



「そんな雑い感じで、日本書紀が造られてんの!」



「どの国の史書もそういうものですよ。国家の正当性や神格化を目論んで史書が造られますからね」



「まぁ、そういうものだろうけどさ」



「さて、最後の締めとして、卑弥呼の時代に於ける中国について説明しますか。此の時代の中国は後漢が衰退して三国時代に入ってます。覚えなくて良いですが、魏、蜀、呉と呼ばれる国がありまして。魏は、前王朝から玉座を譲り受けたと主張し。蜀は、前王朝を立て直すんだと主張し。呉は……特に正当性もないけどノリで王を名乗りました」



「呉、それで良いの!」



「三国の中で、魏という国が最も勢いがあったため、卑弥呼は魏に使いを送ったと言うわけです。……こんな感じで、今回は終わりにしましょうか。さて、次は、わけわかめの古墳時代です。先生だけでなく、学者すらもよく分からない時代ですから。流す程度で結構ですよ。それじゃあ、またねぇ」

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