第4話 中国文明についてですよ

「はい、では、4回目の講義を始めますね。今回は皆様に馴染みがある中国文明についてお話ししますよ」



「おお、中国文明か」



「ざくっと説明すると、紀元前1600年頃に殷という国が出来ました。殷は亀の甲羅や骨を焼き。その割れ方で占いの吉凶を判断し。甲骨文字を用いて。割れた骨に占いの記録を刻みました」



「へぇ、占い国家だったんだな」



「いや、そういうわけでもないですよ。占いに使う甲羅や骨には、あらかじめ細工がされており、焼く前から吉が出ると分かってましたからね」



「おいおい、出来レースじゃねぇか」



「いつの時代もそう言うモノですよ。この結果が神の導きである。或いは祖先の導きと言えば、烏合の衆も規律を持った手段に早変わりしますからね」



「…………」



「殷はこうして神託を盾にして、周辺民族を蹂躙し。時には、戦勝として引き連れた捕虜を、生け贄として殺し。神や祖先に捧げました」



「おいおい。随分と物騒な話じゃねぇか」



「時代と共に価値観は違いますからね。この時代に取っては、此れが正気だったのでしょう。あまねく遺跡で、こういった捕虜の遺体が人身供養として治められていましたからね」



「…………」



「殷は紀元前11世紀にしゅうと呼ばれる国に倒されます。後の時代に、儒教を造る、孔子と呼ばれる。就活に失敗したマナー孔子、ゴホン、マナー講師が。周を過度に美化した所為で、成立当初は戦いもなく。すっごく平和な王朝と思われていますが。成立当初から最後まで、周王朝は戦いしかしてません」



「えっ、そうなの」



「はい。前王朝の殷と同じく、周辺民族を圧迫しまくってたのですけど。4代目の周王が遠征に出た際に、洪水に巻き込まれ。王も近衛軍も消えちゃって。没落が始まります。そうして、最後は周も力をなくし。春秋、戦国時代と言う。戦いしかしてねぇじゃんって言う時代を終えます」



「ずっと戦争ばっかだな」



「この戦いに明け暮れる時代に終止符を打ったのが、秦と言う国です。虎狼の国と呼ばれ。周王朝や其れに付随する貴族達にとっては、秦は蛮族の代名詞でしたが。法を整備し、他国の人材を積極的に迎えた結果。とんでもなく強くなってしまいました。キングダムを読めば大体は分かりますよ。あと補足するなら、秦の王様、始皇帝は、猜疑心の固まりの小心者で、妄執と暴虐に囚われた素晴らしい仁君と史実では言われていますね」



「仁君の定義が壊れるなぁ」



「また、始皇帝は兵馬俑と呼ばれる墓を造っています。その墓には、オーパーツ並の技術が使われ。兵士や馬の焼き物が一体一体、本物と見間違うほど繊細に造られ。兵に備えられた一部の武器には、クロムメッキと呼ばれる錆びない技術が施されています。ああ、あと、始皇帝の側室達も始皇帝の死後、強制的に殺され。共に埋められていますね。純愛ってやつですね」



「えげつねぇんだけど。そんな純愛聞いたことねぇんだけど」



「秦王朝は、北から異民族の侵攻を警戒しており。万里の長城を造るため、人民を働かせ続けた結果。始皇帝の死後に民衆の怒りが爆発して。なんやかんやあって、秦王朝は滅び。漢王朝が造られます」



「漢王朝って、どんな王朝なんだ」



「漢王朝の創始者は劉邦りゅうほうっていう人物で、ぶっちゃけ出自がよく分からない人物です。劉邦の邦はおじさんって言う意味で。劉家の人ぐらいしか分かってません。ですが、カリスマ性は本物で数多の英傑を自分の元に置き。漢王朝を造りました。その際、士官しにきたマナー講師、儒学者が、古来の聖王はうんたらかんたらと偉そうに講釈を垂れ。うっとおしかったので、儒学者の冠を奪い。そこに尿を入れて大爆笑しましたね」



「大概じゃねぇか! 次の王様も」


「ですが、周囲に諫められ。儒学を受け入れ始めます。と言うのも、劉邦の元に集った人々は素行の悪いDQN達であり、宴会の席や権威を授ける席でも暴れ回り。収拾が付きませんでした。そんな折、とある儒学者が、儒学の礼を用いた式典を開けば。王の威厳が備わりますよと言われ。実際に行うと、DQN達が大人しくなり。厳かな雰囲気のまま、権威の付与が行われ。礼によって、王の風格を得られることを知った劉邦は儒学の認識を改めます」



「ほう、おもしれぇ話だな」



「まぁ、そんな感じで劉邦は大陸を纏める王になったのですけど。北から向かってくる異民族がうっとおしかったので。異民族如き、よゆうっしょってな感じで数だけ揃えて攻め込むと、逆に敗走しかけて。異民族に贈り物するから赦して貰うように懇願します」



「ダメダメじゃねぇか」



「劉邦の死後も、異民族に貢ぎ物を送っていましたが。7代目の漢王、武帝の時代に変化が訪れます。………なぜ、贈り物をしても攻め込んでくる。礼も徳もねぇ異民族に、頭を下げ続けなきゃいけねぇの? そろそろしばくか。こう言った感じで武帝は本気で異民族に攻め込み始めます」



「今までの鬱憤を晴らすんだな」



「漢軍は兵は多いのですが。馬が不足しており機動力に負け。思うような戦果が挙がりませんでした。そんな中、シルクロードと呼ばれる西方の国々と繋がる道が見つかり。武帝は高価な絹や貴金属を売ることで、良質な馬を大量に買い込み。其の馬を用いて異民族を蹂躙しました」



「つまり、上手くいったんだな」



「表層的には異民族をしばきまくり。上手くいったように見えましたが、代償も大きく。湯水の如く、漢王朝の貯蓄を使い果たした結果。漢王朝の財政が一気に傾き。凋落を始めます。そして、緩やかに衰退していくのです。まぁ、これ以上語ったら長くなるので、中国文明は一旦、此処までにしましょうか」



 ふーぎは大きく息を吐いてから。

 画面に向けて手を振る。



「それでは、次回にお会いしましょう。次はギリシァ、ローマの文明ですね」



 ふーぎは頬に手を当てて。

 思いだしたかのように言う。



「ああ、そうでした。殷王朝の前には夏王朝という文明がありまして。其れを題材にした物語がありますよ。『これより時代を調停します 古代中国 夏王朝編』気が向いたら呼んで下さいねぇ。私の親友が活躍してますよ」



これより時代を調停します 古代中国 夏王朝編

https://kakuyomu.jp/works/16817330658569836057

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