中編「雨の国の太陽」

 次の日、セレンはカーテンの隙間から、差し込む陽光ようこうと小鳥の鳴き声で目が覚めた。


「うう~ん、何で明るいにゃ?力の影響は消えたはずなのに、どうして」

 セレンは、眠い目をこすりながらパジャマを着替える。

 インターホンの音とレアンの驚いたような声が聴こえる。



「セレン殿!セレン殿」


「きゃっ、レアンさんっ。まっ、待ってにゃん!今、着替えてるにゃんよう」

 セレンは、尻尾を振り振りさせ、顔を真っ赤にして急いで着替える。



 セレンとレアンは、町の様子を見て回った

 町の人々はセレンの奇跡だとか、隣国の太陽の神の御加護かと言う者もいた。

 皆、喜んで晴れを有効に使っている。



「おかしいにゃ、あたしの力の効力は早朝で切れるはずにゃんよ?」


「それではなぜ」

 二人は考えを巡らしながら町を見て回ってみた。



 レアンがふと、木の下にうずくまる人がいるのを見つけた。

「あの人、体調が良くないのでしょうか?行って見ましょう。セレン殿」

 セレンとレアンが近寄ってうずくまる人に声を掛ける。



「どうしたんですにゃ?お腹痛いの」


「お辛いなら、救急車を呼びましょうか?」



「うん?君たちは、私が見えるのか」

 

 金髪碧眼きんぱつへきがんで白いローブを纏った男性は顔を上げると、セレンとレアンを驚いた様子で見上げた。

 

 二人は思わず顔を見合わせてから、不思議そうに男性を見ている。



「えっ、見えるって……お兄さん、人じゃないんですかにゃ。あたしはこの町の猫巫女セレンと言いますにゃん」


「僕はこの町の町長の息子レアンです」



「――猫巫女セレンと町長の息子レアンか……君たちは、霊感が強いのかもしれんな。私は、晴れの国“サンウォルド”の神テラ。この国の雨の女神アニスに逢いに来た」



 何と、男性は晴れの国の神だった。

 セレンとレアンは、目を丸くする。



「効力が切れても、ずっと、晴れていたのは神様の御力だったにゃんね」

「そうだ、セレン、レアン。私をアニスの所に連れて行ってくれないか?お願いだ。君達しか頼める者がいないんだ」


 太陽の神テラは、二人に頭を下げて頼み込んだ。



「てっ、テラ様!頭を上げてくださいにゃ、あたし達、ばちが当たっちゃうにゃんよ」


「そうですよ。困った時はお互い様ですから」

 セレンとレアンは神の礼儀に恐縮ながらも、優しく太陽の神を受け入れた。


「ありがとう、二人とも」



「雨の女神様の社は、セレン殿も僕も良く知っていますから」


「そうか!それは助かる。案内を頼めるかな」


「お安い御用ですにゃ、あたしの能力でひとっ飛びしますにゃあ」



 セレンが両手を合わせて、パンパンと柏手かしわでを打つとセレンとレアン、テラの背中に光の翼が生えた。



 テラ神は、自身で飛ぶことが可能だったが、セレンの親切心を汲んであえて黙っていた。


「おお、凄いな。それではよろしく頼む」



 テラはにこりと微笑みを浮かべる。

 三人は、ふわりと空に浮かんで雨の女神の社へと飛んで行った。

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