28話 スカウトと合流

「驚いたかな?」


「そりゃあ驚きますよ」


なんせマフィアのボスが大統領なんだから驚くに決まっている。普通にスキャンダルだろ。でもかっこいいな。国のトップが実は裏社会で暗躍しているって男の子が大好きなやつじゃん。それはそうと...


「質問しても大丈夫ですか?」


「かまわないよ」


「それじゃあ、どうして大統領がマフィアのボスをやってるんです?」


疑問だよね。なんで大統領がマフィアのボスなんかやってるのか普通に気になる。


「理由は1つ、これから起こりうるであろう問題を対処するのにこれが一番最適だからだ」


「その問題というのは?」


「魔法を使った大規模なテロ活動」


「........そんなことが本当に起こると?」


「少なくとも私はそう睨んでいる」


理解はできる。魔法が発達した現代において重火器などの現代武器より魔法のほうが殺傷能力が高く、なおかつ誰でも使える。テロに使うには最適だ。

だけど


「飛躍しすぎじゃありませんか?魔法を使ったテロ活動なんて聞いたことがない」


「そうか?最近だとどっかの国の麻薬カルテルが抗争に魔法を使い始めたという報告を受けている」


「そもそも魔法の軍事転用は暗黙の了解で禁じられていたはずです」


「そうだ。だが実際に魔法を軍事転用してはいけないという法は存在しない」


「だとしても...」


「だとしてもだ。GFPの算出にはすでに国内の冒険者の総数が使われている」


......それを俺に言われてどうしろと?

俺にできることないよ?

そりゃあ一応華族だからこのことを親に話したりすればある程度できるかもしれないけどさ。それにしたって直接俺に言わなくてもええやん。


「......このことを俺に伝えたのはこの話を日本に持って帰ってほしいからですか?」


「いや、違う。この話を君に話したのは君をスカウトするためだ」


あ~話が若干読めてきた気がする。


「つまりこのマフィアは実質魔法を使ったテロに対応するために対テロ部隊で俺はそこにスカウトされた、と」


「その通り、話が早くて助かるよ」


対テロ部隊へのスカウト、いい響きだなって思ってる場合じゃない。いきなり人生の重要な分岐に立たされているわけだ。どのくらい重要かっていうと降水確率65%の時に傘を持っていくかどうかぐらい。


「...ちょっと考えさせてください」


「かまわないよ」


ひとまずこの話は今決めれることじゃないから持ち帰らせてもらおう。ここで「いいっすよ~」みたいなノリで決めれることじゃない。


「それで本題なんですけど...」


「本題?」


「そのマフィアの名簿に書かれている俺の名前を消してほしくてですね」


「マフィアの名簿?そんなもの存在しないぞ?」


「は?」


「....すまない。君をここに連れてくるために嘘をついた。」


「.....ちなみに最初に俺たちが出会ったのも...」


「あぁ、君を連れてくるための芝居だ」


...もうヤダこの国。早く日本に帰りたい。





「そんなに拗ねないでくれ」


「別に拗ねてはないけどさ、嘘をつくのは違うじゃん」


「悪かったって。こうもしないとお前はここについてこなかっただろ?」


「それはそうなんだけど」


と愚痴を言いながら車で戻っている。あの後、対テロ部隊に入ったらのあれこれを教えてもらってお開きになった。対テロ部隊なだけあって給料も高かった。ぶっちゃけ給料に釣られかけたのは秘密だ。


「それはそうと今のところはどうなんだ?対テロ部隊に入るのかどうか」


「6:4で入らないほうが強い」


「どうして?」


「あんな話を聞かされちゃあイタリアの部隊に入るより自分の国の部隊に入るべきでは?って思っちゃってる」


「ちなみに俺は出身はイギリスだぞ」


「ヨーロッパ圏内じゃん。ヨーロッパの国同士こういった部隊を作って共有できるようになってるって話聞いたよ。確かにそれなら自分たちが住んでいる国も守れるしいいじゃん」


「まああまり深く考えるな。お前が思ったことをやればいい。それを俺たちは否定しないし応援するよ。まあ個人的なことを言うと俺はお前と一緒に戦いたい」


「考えとく」


そうこうしている内に宿に着いた。今日はいろいろありすぎた気がする。スタンピードの後方支援に対テロ部隊のスカウト。充実した毎日を送りたいとは思うけどさすがにこれは充実しすぎている。


そんな風に思っていたら目の前に見慣れた人影がいる。


「久しぶり~、元気してた?」


「会いに来たよ!」


綾人と雫がいる。いや、なんで?

今日金曜日よ?


「お前ら学校は?」


「サボった」


「嘘だろ...」


「嘘じゃないよ。今日の朝にプライベートジェットでこっちに来た」


「意味わからない。明日くるんでもよかったじゃん」


「いやーだって観光したいし」


「湊にイタリア市内に連れて行ってもらうって思っててさ」


「いや無理だよ?」


「「え?」」


「俺が知っているイタリアはダンジョンの治療院とマフィアを騙る対テロ部隊だけだよ」


「ちょっと待てお前イタリアでどんな生活を送ってんだよ」


「うーん、まあいろいろあってね」


「そうなると湊に連れて行ってもらうのは無理かぁ」


「期待したんだけどなぁ」


「勝手に期待すんな。俺が聞かされているのは日曜日の前哨戦を見に行くから土曜日に来るってことだけだったんだぞ」


「まあそれもそうか。じゃあ明日は3人で観光しに行こう」


「賛成~」


「えっ?明日普通に試合のための調整をやろうとしていたんだけど」


「罰にそんなことしなくても前哨戦ぐらいなら買っちゃうんでしょ?」


「それもそっか」


というわけで日本から合流した2人と一緒に観光をしに行くことになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る