27話 治療と会合

救命救急用のカバンを持ってすぐに治療院からダンジョンへ向かう。幸いというべきか治療院からダンジョンは走って10秒もかからないためすぐにつく。だが着いた先はかなりの地獄になっていた。


「グッロ」


「ぼさっとするな。お前ら研修生は俺たちのサポート、俺たちはトリアージの順に治療を始めるぞ」


「了解です」


先輩について行き赤色の札を首下げている人から順に治療を始まる。最初の患者は腹が抉れ、内臓は剝き出し、全身が複雑骨折になっている重体だった。おそらくオークのようなモンスターに吹っ飛ばされた後にコボルトたちに食われていたところを救出されたのだろう。


「ミナト!俺たちは血液型からDNAを解析してその後に抉れている内臓を治療する。お前は先に骨折している部位を治療しておけ」


「わかりました。止血の同時並行で行います」


「頼んだ」


どれだけ患者がグロくても俺のやることは同じだ。患者に麻酔をかけた後、すぐに止血を始める。


「血が止まらん」


だがどれだけ止血をしようとしても如何せん出血箇所が多すぎて血が止められない。


「こっちに研修生1人お願いします」


「無理だ。研修生はすべて止血要員に回っている。すまないが1人でやってくれ」


「チッ、了解」


人が足りないのはわかっているが止血のほかにも骨折の回復も残っている。こうなった以上やることは2つ。

1つ目は回復魔法の出力を上げること。これに関してはデメリットも存在する。急激な人体の再生や回復は拒絶反応、いわゆるアナフィラキシーショックのような状態になる可能性がある。だから気を付けながら出力をちょっとずつ上げていく。

そしてもう1つは止血と同時に骨折の修復を同時進行で行うというものだ。これも個人的にはやりたくない。ただでさえ複雑な回復魔法を同時併用なんて失敗する可能性が高い。だけどやるしかない。幸い回復魔法は失敗したとしても人体に悪影響はない。ただ回復部位の再生がストップするだけ。


「がんばれ自分」


自分を鼓舞して左手にも魔方陣を発動した。





止血がほぼ終わり、残すは骨折部の出血だけ。さっきから1分半は経っただろうか、気が付くと後ろにはDNAを解析し終えた先輩たちが立っていた。


「状況は?」


「止血はほぼ完了しています。両足、腰、左腕の骨折はすでに修復済み、残りは右腕と肋骨部分はまだ終わっていません」


「了解だ」


「肋骨は抉れている内臓部にも干渉していたので止血以外は手を付けていません。心臓は動いているのでひとまず生きています」


「わかった。ミナトはそのまま右腕の修復を済ませてくれ。これが終わったらほかの患者の止血と骨折の修復を行え」


「了解です」


「それじゃあみんな、こいつを助けるぞ」


そのまますぐに患者の治療を始める先輩たち。DNAから読み取った情報を利用し

本人の体が拒絶しない細胞を生成、そして結合。素人では理解すらもできない。しかもそれプラス、消毒の魔法などの魔法を同時併用しているのだから驚きだ。


「俺がこれをできるようになるのは何年後かな」


なんて思いながら左手の治療を終わらせる。


「それじゃあ先に止血しに行きます」


「おう、任せた」


といい先輩たちから離れる。





あれからほかの治療院からも応援が駆けつけてきてくれたおかげでひとまずは危機は去ったって状況になった。イヤー疲れた。初日からこんなに働くとは思わなかったよ。


「お疲れさん、大丈夫か?」


「疲れました」


と先輩たちが声をかけてくれる。それはそうと時刻はもう午後の4時。本来ならばすでに研修が終わっている時間だ。


「こんな時間まで残して悪かったな」


「大丈夫ですよ。でも今日はこれから用事があるんで失礼します」


「そうか。明日ボーナス渡すから必ず来いよ」


「わかりました~」


どうやらボーナスが出るのは本当だったらしい。





それはそうとこれから俺はマフィアのボスと話をしなければいならない。まあちょっとは緊張するけどそれよりもワクワクのほうがでかい。マフィアのボスって普通は人生で一度も会わないとかるからこういう状況をむしろ楽しんでる。


「遅かったな」


「仕事が忙しくてね」


「わかってる。スタンピードの後方支援だろ?」


「知ってんですか」


....もしかして俺、監視されてる?なんて思いながら車の中に入る。車の中にはごっついSPが2人乗っていた。


「で?これからどこ行くの?」


「ボスのところに行くんだろ。忘れたのか?」


「違う違う。そのボスがどこにいるかって話」


「残念だがトップシークレットなもんで」


「へー」


通りで窓から外が見えないわけだ。フロントガラスと後部座席の間にも仕切りがついていて車の中から外が一切見えない状況だ。


「...もし拉致なんてしようものなら皆殺しにするから」


「できるもんならって言いたいところだがお前なら普通にできちゃうんだろうな。でも安心してくれ。お前に1つも危害を加えないと約束しよう」


「それはよかった」


「それよりもお前の経歴見てびっくりしたよ」


「別に隠してたわけじゃないし俺にとっちゃ経歴なんてぶっちゃけどうでもいい」


「ふーん」


そうこうしているうちに車が停車した。


「ついたぞ。降りて構わない」


車を降りると場所はどっかの地下駐車場だった。


「ここで話し合いするの?」


「いや、少し歩く」


そのまま地下駐車場に備わっているエレベーターに乗る。当然、エレベーターには窓は一切ない。ここまでくると逆にここはどこか気になってきた。


「降りるぞ」


そうこうしているうちにエレベーターの扉が開いた。乗ってからちょうど1分ぐらいたったからおそらくはここは高層ビルかなんかだろう。エレベーターの扉が開いた先にはごく一般的なオフィスビルだった。



「ちょっと待ってろ」


と扉の前で止められる。これはもしやと思ったら予想通りボディーチェックが入る。とはいっても持ってる武器なんてないから普通にOKをもらって終わった。


「それじゃあ中に入ってくれ」


と言われ扉を開けると中には初老の男性が椅子に座って待っていた。


あれ?どこかで見たことがあるような気がする。なんて思ったら初老の男性が口を開けた。


「初めましてだな。私は現イタリア大統領のアルバーノだ」


あぁ~、どおりで見たことがあるなって思ったんだ。


......ちょっと待てよ?イタリアの大統領がマフィアのボス?









ガチで⁉


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