18話 デート③

デート続行というわけで俺たちは今から夕飯を食べに行く。行先は駅からちょっと離れた海沿いのレストラン。


「ここ来たことある?」


「俺はないなぁ。そもそもここら辺に一度も来たことがないから」


「あぁ~、私は水族館には来たことがあるけどこのお店には来たことないや」


「あの水族館来たことあったんだ」


「子供のころに1回ね。家族に連れて行ってもらったの」


「へー」


そんな風に雑談しながらレストランに到着。中に入るとかなりの盛況っぷりだったがたまたまテーブル席が1つ開いたということで店員に案内される。


「おしゃれなお店だね」


「そうだね~、雫は何頼む?」


「ジェノバパスタ」


「了解、じゃあ俺はマルゲリータにしようかな」


「いいね。じゃあさっそく頼んじゃおっか」


メニュー表を開き、注文を決める。俺はマルゲリータピザとデザートにソフトクリーム、雫はジェノバパスタとチョコアイスを頼んだ。


「楽しみだね」


「そうだね」


その後も雑談が弾んでいると料理が運ばれてきて、俺のマルゲリータと彼女のパスタが机に並べられた。


「デザートは食べたいタイミングで声をかけてください」


「わかりました」


「それではごゆっくり」


店員がそう案内する。机に並べられたおいしそうな料理たち。俺たちの腹は限界だった。急いで運ばれて来た料理の写真を撮るや否やすぐに...


「じゃあ早速...」


「「いただきまーす」」


食べると口の中に広がるトマトソースとチーズの塩味がマッチしてとてもおいしい。


「これめっちゃうまい」


「私のもおいしい」


彼女のパスタの感想も同じらしくほぼ無言で夕ご飯べる。そしてすぐにおなか一杯になった。


「じゃあデザート頼むよ」


「はーい」


店員に声をかけ、デザートを頼むとすぐに届いた。俺のはソフトクリームに黒蜜がかかっている絶対うまいやつだ。


「これ一口いる?」


「いいの?じゃあ私のも一口あげる」


デザートを交換したりしながら夜も更けていく。すでに時刻は7時を回っていた。





「おなかいっぱいだ~」


「俺も~」


デザートを食べ終えた俺たちは絶賛食休み中だ。楽な姿勢になりながらお互いスマホをいじっている。


「何してるの?」


「綾人に今日のこと自慢してる」


「綾人はなんて言ってるの?」


「いいなーって」


「ふーん、私も友達に自慢しよ~」


お互いに友達に今日あったことを自慢している。ちなみに俺が雫にあーんしてもらったことを伝えたら綾人は俺も彼女ほしいと嘆いていた。あいつの性格と見た目だったらすぐに彼女を作れるだろうに...


「そろそろお店出る?」


「そうしよっか。じゃあ俺支払い済ませとくから」


「ちゃんと後で私が頼んだ金額教えてね」


「はーい」


先に彼女を店の外に出させて俺は支払いを済ませる。レジを担当した店員に「彼女さんですか?」と聞かれたから「はい」と答えておいた。


「お会計終わったよ~」


「ありがとう、いくら?」


「秘密」


「ねえ~」


割り勘なんてさせない、俺が全額払う。最近勝ちすぎて賞金が余りまくってるんだよね。だから俺が自主的に払う。決して彼女の困惑している顔が見たいからというわけじゃあないからね。ホントダヨ。


「もう、払わないと私的になんか申し訳なくなるんだけど」


「まあまあ別にいいでしょ」


「よくない~」


若干むすっとした顔を見ながらレストランを後にする。今度またここに来よう。





「まだ復旧してないの?」


「してないっぽいね」


「じゃあ食後の散歩でもしますか」


「いいね」


レストランを後にし、スマホで今の復旧状況を見たところまだ上下線ともに止まってまっているらしく俺たちはまた暇になった。


というわけで今から食後の散歩と銘打って海沿いを散策しようということになった。


「汐風が気持ちいね」


「涼しい~」


海から吹く風を感じながら2人で暗くなった海岸を散歩する。ちなみに散歩している海岸は夏になるとめちゃくちゃ人が来る有名なビーチスポットだ。


「夏にまたここに来たいね」


「いいね。また来る?」


「来ようか」


2人でそんな約束をしながら散歩を続ける。さっきよりも会話量が少ない。でも気まずいってわけじゃない。お互いに話すことはなってさらに今日の疲れが出てきたところだ。逆に無理に会話したほうが気まずくなるだろう。


俺も今日一日ずっと動きっぱだったからこの静寂がちょうどいい。そんな風に思っていると雫が口を開けた。


「湊ってよく大会の時とかにヒールムーブしてるじゃん」


「そうだね」


「あれってやってて楽しい?」


「楽しいよ」


「ほんとに?」


「ほんと」


「そっか」


「どうしてそんなこと聞いたの?」


「みんなが湊の悪口を言うのが嫌だから」


「俺は別に気にしてないよ」


「私が気にするの!」


どうやら俺が悪役になっているせいで世間が悪口を言うという状況がいやらしい。まあ言いたいことはわかる。


「悪役って理解してくれてる人間もいるし雫は別に気にしなくてもいいよ」


「うーん、でも...」


「それに俺は本物の悪じゃないからね」


「そういうものなの?」


「あれだよ。悪役レスラーみたいな感じ」


「そっか」


「だからいつかプライベートの善行がネットに拡散されるよ。そしたら俺の評価も変わる。俺が悪なのは戦いの中だけだからね」


「じゃあ私がプライベートの善行ってやつを広めるわ」


「それは恥ずかしいからやめて」


それに悪役のほうがたくさんの人とガチで戦えるからね。だから俺は悪役ムーブ。

まあそれを理解してくれている人たちが俺の周りには結構いるから俺は恵まれているよ...





海辺での散策をしていると気づけば夜も8時を過ぎていた。


「そろそろ電車動いてるかな」


「調べてみる」


調べるとすでに電車は通常運行になっていて混雑も緩和されているのとのことだった。


「電車動いてるってよ」


「そっか、じゃあ帰ろっか」


2人で手をつないで寮に帰る。帰宅後、当然というか必然というか、今日あったことをクラスメイトに質問攻めされた。


そして寮に戻ってしばらくした時、雫から洗濯機にもみくちゃにされているペン助の動画が送られてきた。


15分ぐらいずっと笑ってた。

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