14話 3位決定戦と決勝

試合スタートから幾分か経った。綾人はちょっと厳しそうな感じ、でも耐えている。


「負けそうっすね」


「どうだろうね」


浅間くんとステージ脇で観戦している。ちなみに浅間君とは今さっき仲良くなった。もうイソスタ交換もしてる。


「でも結構押されてますよ」


「あのぐらいならちょっとの工夫でどうにかなるよ」


「そういうもんなんですか?」


「そういうものだよ」


魔法の撃ち合いでは綾人は不利だが、まだ何とか食らいついている。というかなんで魔法戦で食らいつけていけるのか普通に疑問。


「近接戦闘をしかけられないときついよな」


「そうっすね。五月雨さんも近づけさせないように動いてますもん」


「近づけたら勝てるんだけどなぁ」


「そんなに強いんすか?」


「俺とよく模擬戦してからね」


近接を仕掛けるには相手の隙を突くか、多少の被弾を許して突撃するか、どちらにせよかなり厳しい。


「間宮さんならどうやって戦いますか?」


「真面目な戦い方?」


「真面目な方で」


「うーん、シールド張って突っ込むぐらいしかないかなぁ。あとは魔法戦でひたすらすり潰すとか?」


「それできるのあなただけですよ」


「そうだね。」


「でもそれしかないかぁ」


「他にもあるよ」


「え?例えばどんなのですか?」


「今にわかる」


おそらく俺が今思っていることを綾人はやろうとしている。おそらくこれが最善案で最適解だろう。


「さぁ、来るぞ」


直後に彼の瞬間消費魔力が上がった。


『光の槍』


そう唱えると1本の光の槍が五月雨に向かって飛んでいく。


「攻撃が崩れた。負けるなこりゃあ」


魔力を攻撃から防御に集中させたせいで五月雨の攻撃が崩れていく。そしてその隙を綾人が見逃すはずがない。


「魔法の瞬間火力を上げて防御を崩した⁉」


「Exactly、まあ言うだけなら簡単だけど実際やるのは結構難しいよ」


「いわれなくてもわかりますよ。そもそもなんであの攻撃を魔力を抑えた状態で対処なんでほぼ不可能っすよ」


「でも現にあいつはそれをやり遂げた。さあ今度は綾人の土俵だぞ」


近接戦闘なら綾人のほうに分がある。なんせ俺とよく戦ってるからな。否が応でも強くなるさ。ただそれは相手も同じ去年の8回、彼女はすべて近接戦で負けてきた。


最初のうちは彼女もいかに近接戦に持ち込ませないかという方向で対処しようとしていたがそれが不可能だとわかるうちにだんだんといかに俺に近接戦で戦えるかという方向に変化していった。


「おもろいよね。魔導士が近接戦って」


「誰のせいですか」


「あーあ、聞こえなーい」


近接戦闘で俺が暴れたせいで、この世代で大会に勝つには近接戦闘をある程度できるようにならないといけなくなった。そのせいでこの世代の全員がインファイトを会得している。


「でも綾人はこの世代で2番目に強いよ」


「ちなみに1番強いのは…」


「俺☆」


「ですよね~」


近接で押されている五月雨にようやく傷ができた。このまま押し切れば勝てるだろう。近接戦闘にミドルレンジ用の魔法を組み合わせた彼だけの戦闘スタイル、俺でもよく苦戦する戦い方だ。


「どこ行くんですか?」


「次の試合の準備」


「まだ今の試合終わってないですよ」


「もうすぐ終わるだろ。どうせ綾人が勝つ」


「信頼してるんですね」


「あぁ」


ステージを後にして控室に戻る。さてと次の試合はどうやって戦おうかなんて考えながら予備の刀を取った。





「お疲れさん。あと3位おめでとう」


やはり綾人はさっきの試合で勝った。やっぱ強いよね。そして今度は俺の番だ。

決勝戦、俺vs白石勇人。白石勇人の戦い方はおそらく剣士タイプだろう。


「どうも、それより次はお前の番だろ?次はどうやって戦うんだ?」


「刀で正々堂々と」


「意外だな。魔法でボコボコにすると思ってた」


「やだなぁ。せっかくの剣士だぞ。刀でやりたいに決まってるじゃん」


「これで負けたら一生笑うわ」


「負けねえって」


「はいはい、わかってるよ。頑張って来いよ」


「ほーい。頑張るわ」


刀を使った近接戦は俺が一番好きな戦い方だ。なぜなら一番それがひりつく戦い方だからだ。剣と剣を交え、火花が散り首筋がひやりとする。


「楽しみだね」


ぜひとも俺が満足できるような試合がしたい。少なくとも綾人を倒したんだ。逆にこれで満足できなかったらもうおしまいだ。


ステージにはすでに白石勇人がいる。ちょっと待って、なんかオーラが見えるんだけど。闘志?というよりもどちらかというと殺意みたいな感じ。いいね、面白くなってきた。俺を殺す気で戦いに臨んでいるってわけだ。さぁ、俺も戦うぞ!



『新年度最初の大会、桜杯。試合はあと一つ、決勝戦のみです。新年度の最初に栄冠を掴むのは誰なのか。さあ、ついに決勝戦。今スタートしました!』


『先手を取ったのは間宮選手です。』


『攻撃的な彼らしい戦い方ですね。』


『一方白石選手は初手では攻撃せず防御に徹するといった感じです』


『この試合が2人の初対戦ですからね。彼なりに分析しているのでしょう』


『なるほど、ありがとうございます。あたらめて桜杯の実況は私、土屋ミライ。解説は最年少でA級冒険者の不知火さんにお越しいただいてます。不知火さんよろしくお願いします』


『よろしくお願いします。』


『さて不知火さん、序盤から間宮選手が飛ばしていますがこれは大丈夫なのでしょうか?』


『どうでしょう。体力消耗を度外視した短期決戦で片を付けるのか、はたまた他に作戦があるのか。まあおそらく間宮選手からしたら想定通りの展開でしょうね。白石選手も初手はあえて譲ったのだと思います』


『はい。白石選手を徹底的に攻撃してきていますね』


『個人的に間宮選手が最も優れている点は攻撃と攻撃の間のタイムロスがほぼないことだと思っています。すべての攻撃が次の攻撃の布石になり、また次の攻撃もそのと次の攻撃の布石になる。瞬間的な火力を抑えて、連撃を重視した戦い方です。そしていくらか連撃をした後に大きな一撃。対戦する選手はさぞかしやりずらいでしょうね』


『さらに、今大会では使っていませんが間宮選手には魔法で攻撃するというという選択肢もあります。彼がいつそのカードを切るのか。ここも注目です』


『いやー、間宮選手はこの試合で魔法を使う気はないんじゃないかな』


『と、言いますと?』


『彼の試合を見てみると彼には主に2種類の戦闘スタイルがあります。戦闘スタイルといってもインファイト、ミドルレンジなどといったものではなくどう思いながら戦っているかという点です。

間宮選手が考えていることの1つは、「面白い戦い方をしたい」です。今大会では五月雨選手と戦った感じですね。あの試合では彼は相手を窒息させて勝つという作戦で挑みました。その作戦自体は失敗したのですがあの試合の作戦は彼の面白い戦い方そのものだと思います。

そしてもう一つは、「全力で相手を叩き潰す」です。相手の最も得意とする戦い方で勝つ。具体的に言うと浅間選手と戦った時がそうですね。そして今回は2つ目の「全力で相手を叩き潰す」という考えで戦っていると俺は考えてます』


『なるほど。それではこの試合で彼が魔法を使うことはないと?』


『俺はそう睨んでます』

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