11話 桜杯 第2回戦

「つまんねえな~」


としか言いようがない現状が広がっている。というのも俺は現代の一般的な魔法戦が嫌いだ。理由は当然つまらないからである。

ただひたすらに魔法を放ち、防御するだけの試合なんてなんも面白くもない。まあ攻撃魔法をほとんど使えない俺がそんなこと言っちゃうと負け惜しみみたいに聞こえちゃうんだけどね。とはいってもさ…



「最上は魔法剣士を名乗っているんだから近接仕掛けろよ」



一応剣士を名乗っているんなら近接戦闘でやってほしいなって思うのが俺の正直なところ。おっ、そう言ってたら近接戦始まったじゃん。


「はぁっ!」


最上は光魔法で体を強化して攻撃を仕掛ける。さらに剣に風魔法を乗せて切れ味を強化し、綾人のシールドを割る。とはいってもさすが俺といつも模擬戦しているだけあってシールドを割られても冷静に剣をかわす。さらに持っている魔法の杖で反撃と来た。多分魔法の杖の使い方を間違えていると思うが戦い方に間違いはないので問題ない。


とはいっても所詮は杖なので基本的に攻撃は棒術を使った打撃だけ。やっぱり近接するなら打撃よりも斬撃のほうが強いから今のところ綾人が不利な状況だ。


ならどうするか?

答えは当然、武器を『変える』



土魔法を使い棒の先端に黒曜石をつける。テッテレー、棒が槍に進化したよ!


とまあ冗談はさておき、綾人は土魔法で黒曜石を生成し、魔法の杖に合成する。普通に考えて『無から有は生まれない』という絶対条件がひっくり返っているが魔法だからしょうがない。かの有名な魔法使いも魔法はすべてを超越するって言っていたぐらいだし、まあ気にしちゃだめだ。



「死ねぇ!」


「くそっ」



はいはい、そんな汚い言葉を使っちゃだめだよ。普段は優男みたいな顔して戦い始めたら普通に汚い言葉使うし、何ならバーサーカーみたいな顔して槍を振り回すタイプの人間なんだよね。こんなのだから巷で月島綾人様に罵ってもらう会みたいなのが発足されちゃうんだよ。この話聞いたとき綾人すんごい顔してたな。やっべ、思い出し笑いしちゃう。



ザクッ



という音とともに最上が倒れる。腹部からは血が滴り、地面には血が広がっている。どうやら俺が変なことを考えている間に彼は試合に勝ったようだ。


「お疲れ~、1回戦突破おめでと」


試合から帰ってきた綾人とハイタッチする。


「いやー、強かったよ」


「へー、みんな強くなってるんだね」


「全員お前を倒すために頑張ってるんだよ」


「そりゃあうれしい」


俺を倒すためにみんなが強くなっているらしい。いいねぇ、やっぱり戦うなら強い奴と戦いたいよね。


「それよりも次の試合、お前出るんだろ?」


「おう。勝ってくる」


「がんばれよー」


綾人の次は俺の出番。この大会はトーナメント形式だからこれで負けたら次はなくなる。そうなると戦う回数が減ってしまう。俺は今は優勝したいという思いよりもたくさん戦いたいという思いのほうが強いのだ。だから次の試合は絶対に勝つ。背中に綾人の応援を受けながらブーイングまみれのステージに俺は足を運ぶ。





(月島目線)


「月島さん、メディカル室へ急いでください」


「わかりました」


1回戦を無事に勝ち俺はスタッフの案内に従い、メディカル室へ行く。すでにメディカル室にはさっき俺が勝った相手、最上麗がいた。


「お疲れ」


「完敗です。強かったです」


メディカル室で傷を治し終えたばかりの最上と雑談を交わす。さっき俺がつけた傷もきれいさっぱりなくなっていた。


「どっちで直してもらったの?」


「シェイプシフターで直しました」


試合を終えた選手が傷を治す方法は主に2つあり1つは彼女が行ったシェイプシフターを使い傷を治すものだ。シェイプシフターとは設定した人体の情報を使い欠損した肉片や体液を修復するというものだ。利点は人体の欠損を楽に治せること、欠点は魔素による影響で起きる人体の損傷は治せないことだ。


「じゃあもう大丈夫か」


「痛かったですけどね」


「悪かったな」


俺も治療を受けながら彼女といろいろ話す。


「そろそろあなたのお友達の出番だけど」


「まあ見なくても大丈夫でしょ」


「勝負はわかりきっていると?」


「世界で一番あいつと戦ってきてたからね。悔しいけど今の俺じゃあ勝てない」


「勝つ気でいるの?」


「いずれね」


俺の最終目標、『間宮湊に勝つ』。おそらくこの大会出場者の全員が思っていることだろう。だが誰にも先を譲る気はない。



勝つのは俺だ




(間宮湊)

俺の初戦の相手は日本最強の弟子、浅野和真。今大会初挑戦の新人だ。かつて、日本一だった冒険者の一番弟子で、幼少期からいろんなメディアに出ていた。俺も何回かテレビで見たことがある。


「お前、最強を名乗っているんだってな」


「勝手にみんなが言っているだけだよ。というか君の師匠は最強じゃないの?」


「ああ、俺の師匠は最強だ。そしてお前を倒して師匠が最強だってことを証明してやる」


最強と呼ばれている彼の師匠と最強と呼ばれている俺、実際どっちが強いかといわれてもわからないと答えるのが正解だ。


理由はたくさんある。まず1つ目は彼の師匠と俺は戦ったことがないからというもの。そもそも俺が最強と呼ばれるようになった去年にすでに彼の師匠は現役を引退している。お互いが最盛期の状態で戦えないため白黒決着をつけることができないのだ。


なら最盛期の彼と比べるとどうなるのか?という疑問が浮かぶと思うのだが、それを比較してもどちらかが強いとは断言できない。そもそも戦っている相手が違うのだ。

俺は基本的に対人間の戦闘を得意としているのに対し、彼の師匠は対モンスターの先頭を得意としている。お互いが立っている土俵が違うのだ。


まあそもそもの話、彼の師匠が最強と言われる所以は『ダンジョン踏破の回数が日本一』だったり『世界最強のモンスターを世界で唯一単独撃破』だったりといろんな伝説があるからであって誰かに勝ったことがあるからとかではない。そもそも彼の師匠は大会に出た記録がほとんどない。これは彼の師匠の方針が原因だ。今でももし彼の師匠が大会に出ていたら無双していただろうと言われている。


そんなことを言っても今回戦うのは師匠ではなく弟子のほう。これでは赤子の手をひねるようなものだよ。(ゲス顔)というわけで戦闘開始と行きますか。




『最強の弟子vs最凶の最強、いま試合がスタートしました』

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