9話 噂と桜杯

俺の家は代々続いているってわけでもないが名家だ。いわゆる華族ってやつだ。明治初期に誕生し現代までダンジョンに関することの管理などを行っている。そして一応貴族のような立ち位置なので許嫁制度みたいなものも当然ある。まあ、簡単に言えば政略結婚だ。そして俺にも許嫁がいるのだが、一応ばらさないようにしていたつもりだ。理由は簡単で普通にばれたら面倒だからだ。でもばれた。

おそらくこれからいろいろ面倒なことになるだろう。



翌日


「お前彼女いるってマジ?」


ほらやっぱり面倒なことになったじゃん。あーあ、めんどくさいな。


「ノーコメント」


「それ答え言っているようなものだぞ」


普通に面倒くさいことになったので保健室に逃げよう。ついでになんでばらしたのか聞こう。うん、そうしよう。というわけで保健室にLet’s GO!





「で、なんでばらしたの?」


保健室についた俺は許嫁の久我雫に今までの出来事の顛末を聞いている。まあ聞いたところで面白そうだったからとかしか聞けないだろうが…



「いやー、だって面白そうじゃん?」


「ほらやっぱりそう言うと思た」


「それと最近私にかまってくれないじゃん」


「…それが原因?」


「うん」



どうやら俺は彼女のことをないがしろにしていたらしい。思い返してみれば、ここ最近は話すことすらもしていなかった。


「弁明させて?ここ最近忙しかったんよ」


「それがレディーをないがしろにした理由?」


「許してよ。今度デートでもなんでも連れて行くからさ」


「なら許す」


俺の許嫁でほぼ『彼女』みたいな彼女はかわいい。(のろけ)

小学生の頃にお互いに初めて出会い、そのままずっと仲良くしている。昔は許嫁なんて理解せずに仲良くしていたが年齢が増すにつれてお互いに意識し始めてそのままなし崩しに付き合うようになった。


「で、どこ行きたい?」


「水族館」


「りょーかい。じゃあ今週末行くか」


「今週末って大会じゃなかったっけ?」


「大会は土曜日だから日曜日に行こう」


「オッケー!」


「で、広まった噂はどうするの?」


「あ~、このままでいいんじゃない?私も告白され続けてうざかったし」


「なるほどね~。でもそうなると俺が死ぬかもしれない」


「嫉妬で?」


「うん」


「いやあんたメンタル最強じゃん。普段から燃えてるんだし別によくない?」


「それもそっか」


というわけで保健室の聖女ファンの皆様、図らずしもBSSみたいになってしまってごめんなさい。そしてこれからは学校内で堂々といちゃつきますのであらかじめご了承ください。


やっぱり俺も男子高校生なわけで彼女ほしいわけだし、彼女がいるなら堂々といちゃつきたいわけですよ。わかります?彼女がいるのに普段はイチャイチャできず、こっそりデートに行くぐらいしかできなかった悔しさが。

でも噂が広まっちゃったなら仕方がない。仕方がないからこれからは堂々とイチャイチャしようと思います。え?ほかの生徒の脳破壊はどうするのか?知らんそんなの。





「ということがあったわけですよ」


「なるほど。とりあえず今からお前を殺せばいいわけだな」


放課後、寮でクラスメイトと今日あったことを話していたら唐突に殺害宣言を受けた。草も生えん。


「お前に許嫁がいることは知っていたけど相手がまさかの保健室の聖女だったとは…」


「予想外だったな」


「でもまあなんとなくお似合いかも」


「でもこれ明日から学校荒れるよね」


「そりゃあ今まで彼氏の気配が全くなかった保健室の聖女が日本中から嫌われている奴と付き合ってるって知っちゃったらもうおしまいよ」


「湊~、これ大丈夫だの?」


「そうしたら俺に戦いを仕掛けるやつが増えるんだろ。なんも問題ないじゃん」


「うわ~、相変わらずの戦闘狂っぷりだね」


昨日は結局一度も戦えなかったからこれから戦えるとなると思うとちょっとうれしい。まあ結局ボコボコにするんですけどね。


「それよりも今年の桜杯の出場選手見た?」


「見たよ~。今年めっちゃ豪華だね」


それよりも今週末にある桜杯の話だ。昨日、運営から大会の出場選手の発表があって世間がにぎわっている。特に今年は1年生組が豪華なのだ。最年少でB級冒険者になった人だったり、とあるA級冒険者の一番弟子だったりと大会がはじめ待って以来の豊作らしい。何なら今年は俺に勝てるかもってことでメディアでは今年の1年生のことを『勇者世代』と呼んでいるらしい。ちなみに俺は魔王ってことになっている。


「まあ誰が来ようと全員ボコボコにしてやるよ」


「強いなぁ」


「それを言えるの日本で一人だけだよ」


なんにせよ今週末の大会が楽しみになってきた。ぜひとも俺を倒せる人間が現れることを願うばかりである。



622:イッチ

あとちょっとで大会だ~


623:名無し

イッチ久しぶり

624:名無し

生きてたんかワレェ


625:名無し

イッチいろいろやりすぎや


626:名無し

イッチが最近やらかしたこと

・新人戦の優勝者をボコボコにした

・特例で冒険者免許を試験せずに獲得(マスゴミの勘違い)

・実は久我家の長女と婚約関係


627:イッチ

なんでこっちにまで俺の恋愛事情がばれてんだよ


628:名無し

>627 草。それはそうとイッチは許さん


629:名無し

抜け駆けしやがって


630:名無し

われらの非モテ同盟を勝手に破りやがって


631:名無し

ワイ将、イッチが願ってくれたおかげで働き先が見つかり彼女ができた模様


632:名無し

>631 は?


633:名無し

>631 お前もしかして>124か?


634:124

せやで。イッチのおかげで人生輝いてるわ


635:イッチ

まさか本当に願いが叶うとは…おめでとう!これで俺たちは仲間だな


636:124

これからもよろしく頼むよ、イッチ君


637:名無し

なんかよくわからんところで同盟できてて草


638:名無し

草。それよりもイッチ、桜杯の出場選手見た?


639:イッチ

見たよ。なんか勇者世代とか言われてて笑ったわ


640:名無し

逆説的にイッチが魔王になってるのガチで笑える


641:名無し

魔王(ドスを使って滅多刺しにする怖い人)


642:名無し

まあ魔王って言われてもいいスペックしてるもんな

:

643:名無し

まあ頑張ってや、魔王さん

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