8話 買い出しと許嫁

翌日、日曜日ということで特にやることがない。勉強?いや~、やる気が起きないんでやらなくていいや。というわけで今日一日は趣味に時間を費やそうと思う。え?俺の趣味は戦闘ですが何か?


というわけでやってきました、戦闘訓練所。ここは学校内にある他生徒と切磋琢磨しながら戦闘するために存在する施設だ。ちなみに戦闘訓練所のほかに学校には決闘場がある。まるで異世界ラノベの魔法学校みたいだね。


そんなわけで戦闘訓練所に行き対戦相手が来るのを待つわけだが全然来ない。理由は明確だ。10か月前まではまだ戦ってくれる人はいたわけだが、8か月前あたりからもう俺の相手をしてくれる人はほとんどいなくなった。まあ理由?もちろん俺が強すぎるからだよ。


「はぁ~、誰もいない」


まあ、この有様である。一応先生とかが相手をしてくれるときもあるがごくまれだ。というか戦いを挑まれることのほうが稀である。でも時々いるんだよ?俺に決闘を申し込んでくれる人が……


「間宮か……」


「おい、誰か間宮と戦ってやれよ」


「いやだよ、俺あいつに負けたし」


ごめん、嘘ついた。やっぱ誰もいない。唯一俺とよく戦う月島綾人は今日は出かけているらしい。俺もあいつについていけばよかったな。なんて考えながらベンチでくつろいでいると誰かが俺に声をかけてきた。


「暇ですか?」


見上げるとそこには先日俺がボコした安藤サクラがいた。


「暇だけど何?戦う?」


「いや、戦わないですけど…」


「なーんだ。ならいいや」


どうやら彼女は俺とは戦いたくないらしい。


「それはそうと生徒会の仕事があるので手伝ってください」


「…今日って仕事あったっけ?」


「買い出しです。一緒に来てくれる庶務の方が風で休んでしまいまして」


「それで俺が一緒に行く感じ?」


「暇なら手伝ってほしいです」


「オーケー、じゃあ行こうか」



朗報、予定ができる。というわけで本日の予定は後輩との買い出しになった。買い出しといってもボールペンなどの生徒会で使うものを学校の金で買う予定だ。まあある程度個人的に使うものも購入が許されているけどね。ちなみに過去にはLLサイズのぬいぐるみを買った人がいたらしい。さすがに怒られたとかなんとか…


「昨日のニュース見ましたよ」


「なんて言ってた?」


「華族の権力を使い冒険者免許を不正に獲得した屑と呼ばれていましたよ」


「うける」


「でも真実を話している人もいましたよ」


「へー」


「スタンピードを解決した功績があるから冒険者免許を獲得できた。決して不正などで冒険者免許獲得しているわけではないと言っていました」


「そーなんだ」


「あなたが救った冒険者ですよ」


「ふーん」


「なんか思うとことかないんですか?」


「別に。でもあの冒険者たちがそれを言ったのは意外だし、それを報道したところがあるって事実にも驚いてるよ」


「どんだけ嫌われてるんですか」


「悪役ムーブをすると嫌われるからね」


「少なくとも私と戦った時は本物の悪に見えましたよ」



そんなこんなで会話をしているうちにショッピングモールに着いた。ここは学校の買い出しや休日の遊び場所に一番便利なのだ。俺もよく行く。


「じゃあ買い出ししますか」


「おう」


休日の買い出しが始まった。





【悲報】安藤サクラさん、1人で買い物に行かせられない


ことの発端は1時間前、文房具を買っている時だった。彼女が選んだボールペンは某日曜朝8時に放送される魔法少女のコラボ商品だった。普段は他人の趣味にあれこれ言う人間ではないが仕事で使うのは別だ。すぐに辞めさせた。


その後もことあるごとに某日曜の魔法少女のフィギアだったり、某仮面ライダーの変身ベルトを買おうとしたりといろいろ大変なことになった。いやほんとにあの時俺に声をかけてくれて助かった。このままだと生徒会が子供が喜ぶ遊園地のようになるところだったので良かった。


「先輩は厳しすぎます。私はただ魔法少女の柄のボールペンを買おうとしただけじゃないですか」


「自分で答え言ってるじゃねえか」


「でも仕事のモチベを上げられるなら別によくないじゃないですか」


「それは理解できるが変身ベルトとフィギアは言い訳できないだろ」


「変身ベルトは普段から付けてモチベを上げます。フィギアに関しても目の届く場所において目の保養にします」


「さすがにやめてくれ」


こいつ自分は何も変なことはしてませんみたいな面して普通にやってることがやばい。


「じゃあ次にゲーム機を買いに行きましょうか」


「今日買うべきものはもうないぞ」


自分が欲しいと思ったものをなんでも買おうとする。昨日のスタンピードよりも疲れたような気がした。





無事(?)に買い出しを終え俺たちは帰路についている。時刻は午後4時半、まだ日は上っているがすでに傾いている。


「今日は助かりました」


「おお、今度も俺を呼べ」


今日の買い出しを経験して理解した。こいつを野放しにしちゃだめだと。普段からボケーっとしている委員長にでも任せようものなら、なんかやばい化学反応が起きてしまう気がする。


「はい。でもいいんですか?」


「ああ、普段から結構暇だからな」


「そうじゃなくて。先輩って彼女いますよね?こんなに気軽に女子と出かけて大丈夫なんですか?」


「ちょっと待て。その話どこで聞いた?」


なんでか知らないけど俺に彼女がいることになってる。いつ漏れたんだろう。というか厳密にいうとちょっと違うんだけど。俺には許嫁がいるけど彼女はじゃないから。許嫁はいるけど普段から会ってるわけではないし、何ならここ1か月一度も会話してない。



....これ逆にやばいんじゃね?1か月も許嫁のことほったらかしにして大丈夫なわけがない。


「保健室の久我さんが言ってましたよ」


しっかりと俺の許嫁でした。え、なんで?ばれたら面倒だから高校生の間は秘密にしようって言ってたじゃん。


俺の許嫁こと久我雫。学校で1,2位を争う美少女で聖魔法を学ぶために普段は保健室で怪我を治療をしている。

唯一の欠点はいたずらっ子なところだろうか。

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