第71話 遭遇
海水浴場で遊び疲れた俺達はその後、ドーシートに戻りすぐ宿屋でログアウトをしてその日を終えていた。
そして次の日、ログインをした俺は忍者であるミドリムシの情報を元に聖都の先にある<静かなる森>に行くことにした。
新しく始まるイベントまでは後4日ほど猶予がある。余裕があると考え獣人の村を探すことにした。
「まずは聖都に戻りますかね。そこから新しいエリアの静かなる森にレッツゴーだ」
「久しぶりの森探索なのです!どんなモンスターが出るのかワクワクなのです!」
(このちみっ子は戦闘狂なのじゃ…でもそろそろ進化出来そうな予感がするのじゃ!)
「そういや2人ともレベルが30になりそうなんだよな。それにスキルも新しいのを手に入れられるけど決めとくか?」
「んー、私は更に強くなった時に決めたいのです!今は満足してるのです!」
(まぁ妾もどんな風に進化できるのかわからないのじゃ。だから進化した時に決める為に取っておくのじゃ)
キュリアのレベルは25、姫のレベルは27と進化可能となるレベル30まではあと少しとなっていた。
2人の進化先については何もわからずどうなるか俺は気になっていた。
「それなら静かなる森で進化出来たらいいな。んじゃポータル使って聖都に行くぞ」
「はいなのです!」(のじゃ!)
聖都に戻った俺達はどこにも寄らずに静かなる森を目指して聖都の外に出ていく。
街道を暫く歩いていると森が見えてきた。
「あそこが静かなる森か。どんなモンスターが出てくるか調べて無いからゆっくりと進んで行こうな。それに…ミドリムシさんが言ってたPKにも気をつけていかないとな…」
「マスターには気配察知に看破があるからなんとかなるのです!森の中のマスターは死神に変身するから大丈夫なのです!」
(襲ってくる輩の首を1つ残らず狩るのじゃ!装備が黒じゃないのが残念なのじゃ…)
「君達は俺のことを何だと思ってるのか今度じっくりと聞かないといけないみたいだな…俺は死神なんかじゃないしな!普通に弓を使う少年なんだよ!」
「…………さぁ先に進むのです」
(寝言は寝てから言うのじゃ…)
「酷くね?!君達最近俺に冷たくないか?!ねぇ!!」
キュリアと姫は俺の事を無視して静かなる森へと入っていった。
<静かなる森>
この森で現れたモンスターは、両手に斧を持っているヘルオーク、翼が骨のスカルオウル、赤毛で長剣を装備しているソウルコボルト。
更にゴブリンの上位種であるナイト、ガード、ウィッチ、シーフのゴブリン達が現れた。
モンスターの平均レベルは35と俺達より高いレベルとなっていたが森の中での俺達の敵ではなかった。
(マスター…ゴブリンがそちらに移動したのです)
(まるで追い込み漁なのじゃ…)
「ゴブリンさん達いらっしゃーい!貴様らの首を頂くぜぇぇぇ!!!
【短刀術】アーツ
蒼天裂斬 消費MP40
刃に氷を纏わせ素早い連撃で相手を切り刻む。
状態異常:凍結(確率:少)
【短刀術】アーツ
紫鬼光扇 消費MP50
短刀を振ると雷光で追撃可能。最大5連撃。
状態異常:麻痺(確率:少)
俺は木の上に潜んでおり、キュリアと姫がゴブリン達を攻撃していたのだが距離を取ろうとゴブリン達が下がったところに2振りの短刀、雷召雪狐を手に持ち、短刀術のアーツを繰り出しゴブリンの首を次々にはねていく。
さらに木の上に潜んで居たスカルオウルも素早く霊水弓スイハに持ち替え脳天を貫く。
「ふはははは!!森の王に勝てると思うな!!雑魚共の首を貰ってやろうぞ!!ひゃーははははははは!!!」
「マスターが遂に壊れたのです!!どうにかするのです、駄猫!」
(あんな主を元に戻すなど無理な話なのじゃ!近づいたら妾の首が無くなるのじゃ!)
森の中で生き生きしている俺の視界の端にあるマップに赤いマーカが4つ程あり俺達に近づいてきていた。
「キュリア、姫。なにかがこちらに近づいてきてるぞ!俺はまた木の上に戻る!2人は何処かに身を潜めておくんだ!」
「急に真面目な顔になったのです!とりあえず隠れておくのです!」
(二重人格なのかの…主は…)
キュリアと姫は近くにある木の陰に隠れ、俺は隠密を使い木の上に潜んだ。
その時、先程まで戦闘していた所に4人のプレイヤーが現れた。
「こっちに来たんだろ?もういねーじゃねーかよ!本当にこっちであってたのか?」
「気配察知ではここを示してたんだけど…もう移動したのか?」
「ちっ!使えねークソだな!少し有名になってきた狐を狩れると思ったのによ!自慢できると思ったのに!少しは役に立てや!雑魚が!」
「それにしてもなんでいきなり気配が消えたんだ?1つは消えたり現れたりしてたけど、他の2つはずっとマップに表示されてたのに…」
1人のプレイヤーが気配察知を使っていたと思われる眼鏡をかけた盗賊風の男を蹴り飛ばしていた。
キュリアと姫は気配遮断のスキルを持っていなかったが、実はPKが実装されたことによりアゲハから気配遮断スキルの付いたアクセサリーをそれぞれ貰っていたのだ。
隠れた時に装備をした為、PK達のマップから消えていたのだ。
(キュリア、姫、アイツら…レッドネームだ。PKのお出ましだ)
(しかもマスターを狙ってるのです…)
(どうするのじゃ?殺るのかえ?)
俺達が念話で話していると、
「あの狐を殺ったらテイムモンスター手に入れられねーか?持ってたら自慢出来るぜ?狐から横取りしましたーってな!!」
「まぁ別に要らなくね?チビと猫だし、役に立たねーよ」
「とりあえずあの生意気そうな狐をさっさと殺って持ってるアイテムを貰っていこうぜ」
「もう少しこの辺りを探してみるか?」
レッドネームプレイヤー達は俺を狙って着いてきていたのだ。
この4人は聖都に俺達が戻ってきた所を目撃しており、この森まで追いかけPKしようと企んでいたみたいだ。
(ほほぉ…お二人さん?どうしますかね?)
(もちろん…天誅なのです!)
(噛み砕いてやるのじゃ…不味そうな頭を砕いてやるのじゃ…)
(それなら…奇襲をかけてやろうじゃあーりませんか!)
((了解!))
「この先に居るかも知れねーから行くぞ!」
「はいy…」
眼鏡姿のプレイヤーを蹴り飛ばしていた男が返事をして歩きだそうとした時、その男の頭と体が分断され
「灰となれ…氷華炎舞!」
追撃で氷炎魔法の氷華炎舞を使われ光となり消し去られた。
「貫き丸の糧となりやがるのです!さぁ、貫き丸…血を啜るのです…滅終槍!」
赤い皮鎧を着ているプレイヤーの背後からキュリアは白兎Mk-Ⅲを振り上げ相手を跳ね上げ、空中で高速の5連突きをしトドメに強く踏み込み全力の1突きを喰らわす。
(一刺しで楽にしてあげるのじゃ。【魔爪】ブレイクブロー!)
姫は魔爪の数少ないアーツであるブレイクブローを使う。全MPの半分を使う代わりに特大ダメージを与えられるアーツである。
魔法使いと思われるローブ姿の男の腹に姫の爪が刺さり、姫の言う通り一刺しでプレイヤーは光となって消えていった。
「貴様ら!何処から現れやがった!不意打ちとは卑怯だろが!」
「PKしようとしてたやつに言われたかねーな。とりあえず時間の無駄だから…消えてくんない?【影魔法】影縫い」
相手の動きを影縫いで止め、キュリアが槍で胸を刺し、姫が魔爪で腹を裂き、俺は雷召雪狐の一振を右手で逆手に持ち構える。
「俺を殺して自慢出来なかったな、ご愁傷さま!」
レッドネームプレイヤーの首めがけ振りかぶり、首を狩った。
「ふぅ…なんとかなりましたな」
「楽勝だったのです!穿き丸も血を吸えて喜んでるのです…うふふ」
(妾の相手は柔らかったのじゃ…MPの無駄使いしたのじゃ…勿体なかったのじゃ…)
「まぁいい経験になったな!こんな感じで襲われるってのがわかったから良かった良かった。面倒事も終わったことだしミドリムシさんが教えてくれた石碑を探してみよー!」
「おー!」(のじゃ!!)
俺達は石碑を探しに再び森の中を走り出した。
「首が…首が一撃で吹っ飛んで行ったでござるぅぅぅ…ありえないでござるよぉ…」
「ねぇねぇミドちゃん、狐様って…弓使いだよね?なのに全く使ってなかったよね?なんで?!」
「オイラが聞きたいでござるよ!それより蒼紫殿…あの4人だけじゃ無いみたいでござるよ?」
「さっきのPK達が教えたんだろうね、それじゃゴミ掃除と行きましょうか」
「そうでござるな、狐さんの邪魔はさせないでござるよ」
ミドリムシと蒼紫はシウを追いかけてきたPK達掃除を開始したのであった。
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