第70話 夏コレクション
午後3時過ぎに再びログインした俺、メールボックスには5件程通知が来ていた。
中にはアゲハからのメールもあり俺は嫌な予感を感じていたがとりあえずは確認をしてみた。
『今ドーシートなのよね?水中行動したいから水着が必要なのよね?最高なのが出来上がったから持っていくわね〜♪これをみたら連絡まってまーす♡』
「よし、とりあえず他のメールを確認すっぞ。これはやばい匂いがプンプンしてやがる」
「あのアゲハさんですからね…どんな水着が来るのか凄く怖いのです…」
(2人はいいのじゃ!妾なんかきっと忘れられてるのじゃ!!ふんだ!)
残りの4件のうち1件は運営からのメールであった。
他の3件はユーキングとサクヤ、そして忍者のミドリムシからメールが届いていた。
「ユーキングとサクヤはまだわかるけど…ミドリムシ…あの忍者さんが俺にメールを送ってくるなんてなにがあった?」
「とりあえず見てみるのです」(のじゃ!)
まずはユーキングからのメールを確認してみる。
『運営からのイベント内容メールちゃんと見たか?しっかりと確認しておけよ!多分サクヤちゃんからも同じ様にメールが来ると思うから先に唾をつけておくわ。このイベント、俺達と協力しよーぜ!ラード達もお前と一緒にしたいみたいだから考えておいてくれ!よろしく!』
「運営からのメールはイベントの詳細が書いてあんのか。てか協力?どんなイベントかまだ知らないから返事は保留でっと…んでサクヤは?」
『おにぃ!私との約束!今回のイベントは私と一緒にしてもらうからね!聖都に行くから待っててよ!ユーキさんと一緒にイベントなんかしたら…地獄が待ってるぞ(๑•ω•๑)♡』
「サクヤお姉様…文章のみでこの圧力…凄いのです…」
(なんか見えては行けない黒い靄がある気がするのじゃ!呪いのメールなのじゃ!!)
「おぅふ…そういや今度一緒にFLOをしようって言ってたのすっかり忘れてたわ…今回のイベントをユーキングと一緒にしたら確実に俺のリアル命がヤバい可能性特大やな。よし、ユーキングすまん!今回はサクヤに殺されたくないからお前を見捨てる!」
俺はサクヤに了解とだけ返事を送った。
そしてミドリムシのメールを確認をしてみると
『狐さんにいい情報と悪い情報があるでござる。まずはいい情報から話すでござる。獣人だけの村は聖都の先にある森<静かなる森>の中にある石碑を調べると良いでござる。そして悪い情報でござるが…PKには気をつけるでござる!狐さんを狙って行動してる輩がいるでござる…』
「なんで狙われてんの?!俺何もしてなくね?」
「マスターは色々とやってるから何も言えないのです…」
(仕方ないのじゃ…)
「仕方ない事ないよね…まぁPKについてはどうしようもないから気をつけるしかないな。それより忍者さんの情報が本当なら獣人の村の位置が分かりそうだな」
「海の中には行かないのです?」
「アゲハさんの危険な装備を身につけたいか?」
俺は真面目な顔をしてキュリアに問うと
「獣人の村に行きましょう!私は獣人の村に行くことに賛成ですの!」
「私は反対よ!せっかく海に来たのに泳がないでどうするの!」
キュリアが俺の意見に賛成をすると何故かアゲハが居て反対意見を申し出た。
「なんでアゲハさんがここに居るの?!てか不法侵入だよ!」
「ちゃんと宿の女将さんには伝えて部屋に入れてもらったのよ?そんなことより〜ちゃーんと持ってきたわよ〜!はい、これをプレゼント♪︎」
宿屋に置いてあるテーブルの上にアゲハは持ってきた水着を置いた。
「まーずは…キュリアちゃん!キュリアちゃんはこれだぁぁぁ!!!」
アゲハがキュリアに渡した水着は、ビキニタイプなのだがパレオで隠せるようになっていた。色は白と水色の2色が使われており花の模様まで付いていた。
「可愛いのですぅ〜すごく可愛いのですぅぅぅ!!」
「本当ならキュリアちゃんの体型ならスク水がいいと思ったんだけど…流石に渡す勇気は無かったわ」
「それを渡してたら確実に俺はユーキングに報告する所でしたよ…」
「そして…シウくんはこれよ!」
俺に渡してきた水着は黒と橙色を使われている普通の男性用の海パンだった。
上着としてグレーのパーカーのセットだった。
「めっちゃ普通!リアルでもこんな感じの水着持ってるし!えっ?なに?部屋に侵入した?引くわぁ…」
「入るわけないよね?!シウくんのリアルなんて私知らないからね?!勝手に想像して引くの止めてくれないかな?お姉さん悲しいよ?!」
俺がアゲハから渡された海パンを見ていると姫が静かに声を出した。
(妾のはどーせないのじゃ…2人だけの世界なのじゃ…)
「あー…アゲハさん?姫の…は無いですよね?」
「ん?姫ちゃん?持ってきてるわよ?流石に水着じゃないけど少しはオシャレしたいよね〜。姫ちゃんはこれだよ!」
姫の首元に俺のイメージカラーである白磁色を使ったスカーフを巻き付けてあげたアゲハ。
そして頭には耳を出せるように加工してある麦わら帽子をつけてあげたのだ。
「本当なら洋服でも着せて上げたかったけど…まるでお洒落してる犬みたいになるからやめたのよね…犬じゃなくて猫だしね。これで夏バージョンの姫ちゃんの完成よ!」
(妾にもあったのじゃ!主と同じ色の装備なのじゃ!嬉しいのじゃぁぁぁ!!)
姫は喜び、尻尾を振り回しながらくるくる回転し始めた。
しかし、俺は気になることをアゲハに聞いた。
「俺たちの水着はわかるんですけど…姫の装備で海の中に入れるんです?」
「もちろんよ!3人の装備にはしっかりと水中行動に状態異常耐性中と酸素供給の中が付いてるのよ!私...すっっっごく頑張ったんだからね!」
「なんか気合入れすぎだろよ…しかも数値が悪魔シリーズより高いじゃねーかよ…どんだけ高性能だよ」
呆れて鑑定をしていた時、フレ登録を済ませていた魚人のきなこからコールが来た。
『狐さん狐さん、今現在茹でられそうになっているきなこでありやす。ヘルプを要求するのでありんすでござりまする』
「どんな状況なの?!てかよくその状況でコールしてきたね?!」
『それはさておき…大事な事を伝えるのを忘れてたからコールしたのでありますです。水中用の装備は必要なかったでありんすよ。私のスキルで海の中でも行動できるのがあったから気にせずに普段通りの装備でOKでやんした!てへぺろなのですぞ〜』
「そこ...忘れちゃダメな所だろよ!」
『すまんでやーんす。しかしスキルで水中を動けるようになっても慣れないと思うので助っ人を呼ぼうと思ってるのですよ。なので一旦海に戻って呼んでくるでので少し時間がかかるのでありやがるヨ!だから今回のイベントが終わってから海中探索をするって方向はどうかなと思いやがるのですが』
「それならイベントの後でお願いします。戻ってきたら連絡ください、そうしたらドーシートに戻ってきますから」
魚人のきなことイベント後に海中探索の約束をしてコールを切るとアゲハの方を向いて声をかけた。
「この装備は返品でお願いしやーす!必要なくなりましたー!」
「えぇ?!ダメよ?!撮影するまで帰らないからね?!それにみて!キュリアちゃんと姫ちゃんはもう装備済みなのよ!だからシウくんも着替えて泳ぎに行くわよー!」
その後、3人と1匹はドーシート海水浴場で遊んだのだ。
最初、俺は嫌がっていたのだがなんだかんだ言いながら海を満喫していた。
もちろんアゲハからSSを撮らせて欲しいと言われたので仕方なくキュリアと姫のスリーショットだけを撮らせてあげていた。
その頃、大盛りところてんでは…
シウとのコールを切ったきなこは不思議な場所からコックであるサクライに話しかけた。
「サクライさんや…本気で茹でようとするのはやめませぬか?」
「何回もコップや皿を割るお前が悪い。指の間に水掻きついてるのに無理して持とうとするお前が悪い」
魚人であるきなこの体は、顔は普通の人の顔なのだが、肌の表面には鱗がついており色も肌色ではなく青色をしていた。
手と足の指の間には水掻きがあり、背中には背鰭までしっかりと着いているのだ。
魚人の特徴は鱗がある為、初期のVITがかなり高いのだ。その代わり、人が装備出来るような鎧などが装備できず、きなこの防具はブーメランタイプの海パンのみだった。
細かな指の動きが出来ずにきなこは大盛りところてんのコップ等を散々割っていたのだ。
「きなこよ、水中ではお前は強いかも知れん。でも陸ではくそ弱くなってるんだから店の手伝いをしようとするな!ろくに掴めない指をしやがって!店の手伝いをしたいなら魚とかを調達してこいや!!」
大きな寸胴に入っていたきなこは深く頷くと
「新鮮な魚介類の方がいいのでありんすね…魚意!腐るほど持ってきてあげるでざんす!」
そう言うときなこは寸胴から飛び出し、店の裏から海に飛び込み猛スピードで泳ぎだし直ぐに見えなくなった。
「腐るほどはいらねーよ!そんなに客こねーんだよ!!!嫌がらせかぁぁぁぁ!!!」
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