第72話 プリティでみんなのアイドル

 

 森の中にあると聞いていた石碑を探している俺達だが、どこを探しても見つけきれなかった。

 唯一見つけたのは静かなる森のセーフティゾーンだった。


「どこ探してもないのはなんでや…見落としでもあるのか?」

「でもセーフティゾーンは見つかったからいいのです。疲れたから一休み出来るのです!」

(歩き疲れたし、モンスターの現れる量も普段より多いのじゃ。主は喜びながら狩っていたのじゃがな…)


 セーフティゾーンに来るまで、アインスドット周辺のエリアで現れるモンスターの倍以上のモンスターと遭遇していた。

 キュリアと姫は普段通りの戦いをしていたのだが、俺はいつも通り木の上を移動し、首を狩るか魔弓術のアーツ、ブラストアローを使いモンスターの頭部を爆破させていた。


【魔弓術】アーツ

 ブラストアロー 消費MP50

 爆破する魔力の矢を高速で射る。

 ※レベル上昇により矢の数が変わる。


 弓術アーツのインパクトショットの上位版であるブラストアロー、まだ魔弓術のレベルが低いために1本の矢しか撃つことは出来ないが威力は申し分無かった。


「矢が当たった瞬間にオークの頭が消し飛ぶんだぜ?爽快じゃん?膝をついて前のめりに倒れながら光となっていくオークさん…美しかった…」

「サイコパスなのです…マスターがサイコパスになってしまったのですぅぅぅぅ!!!」

(声は出さずに口元だけ笑っていたからのぉ…あの顔は暗殺者も恐怖する笑いなのじゃ…普段の主は可愛い顔をしてるのにあの顔は…思い出しただけでも体毛が抜け落ちるのじゃ…)

「そんなこと無かったよね?!普通でしたよね?!ねぇ!!」


 俺の発言は見事にスルーされ、本題の石碑についてキュリアは話し出した。


「獣人だけの村と言われてるから私が居たら見つからないとかあるのですかね?」

(そんな事を言ったら妾も獣人ではないのじゃ。まだ見落としている場所があるかもなのじゃ)


 俺そっちのけでキュリアと姫だけで考え出していた。

 シウは暇つぶしにPKから巻き上げたアイテムの確認をはじめていた。

 レア度の低い武器に防具が数点と75万G、そして俺は1つ気になるアイテムを手にしていた。


(この石はなんじゃらほい、とりあえず鑑定してみっか)


 魔光石 レア度8

 特殊な魔力が込められている石。


(これって…師匠が教えてくれた転移石の素材の1つやんけ!まさかのこんな結果で手に入るとは…PKの皆さんあざーす!他にも見たことない素材とかあるな、アゲハさん達に贈与かな、これは。それに鉄のインゴットもあるから矢の素材もゲットん!石の矢じゃもう心もとないしな…鉄鉱石をパンくんに渡してインゴットにしてもらえばええんか!その手があったか…)


 1人でアイテムボックスの中を確認しているとキュリアから声を掛けられた。


「マスターそろそろ移動をするのです。確認してみたい場所があるからそこに行ってみるのです」

(ひとりブツブツ煩かったのじゃ!移動開始なのじゃ!)

「俺一人だけ除け者にして話し合いするから暇だったんだよ!悪いかよぉぉ!!」


 キュリアと姫が確認をしてみたかった場所はPK達に襲われた場所からすぐ近くの大きな木であった。

 その大木は直径2m以上はあると思われる程の太さであった。


「この木の周りだけ雑草が少ないのです、もしかしたらこの近くにあるかもしれないのです。さっきは特に確認もせずに素通りしたので今回は調べてみたいのです!」


 キュリアに言われるがまま大木の周辺を調べてみる。

 しかし、特に変わったところもなく石碑を見つけることが出来なかった。


「やっぱどこにも石碑なんてねーよな…ふぅ…少し休憩すっか…」


 俺が大木に触れた瞬間だった。

 大木の根元が光りだし、いままで無かった樹洞が現れた。

 人1人が入れる程の樹洞だった。俺はすぐさまキュリアと姫を呼び戻した。


「こんな風になっちゃいましたが…どうしますか?隊長?奥を覗いてもよく分からないんですが…なんか吸い込まれそうで怖いのです」

「マスターが怖いとか言うのはなんか腑に落ちないのです…でも石碑は無いのに…」

(ここにあるのじゃ、主がその樹洞を発見したら現れてたのじゃ)


 樹洞のすぐ側に石碑が現れていた。それを俺が確認してみると石碑にはこう書かれていた。


『人の姿無き者のみ許される楽園の入口。その者の通行を許可する。人は空間が拒否し拒むであろう。立ち去るが良い』


「これがまさかの獣人だけの村の入口なのかい?樹洞の先が見えないのにどうやっていけと?」

「入ってみたら分かるのです!私は人の姿をしてるけど天使なのです!プリティでキュートな天使なのですぅぅぅ!!突撃ぃぃぃ!!!」


 キュリアは叫びながら樹洞に入っていった。


「自分でプリティとか言ったらお終いだろ…てか入れたみたいだな。次は姫が行くk(妾は猫の姫なのじゃ!皆から愛されるアイドルの猫姫なのじゃぁぁぁ!!!目指せNo.1アイドル猫なのじゃぁぁぁ!!!)お前も何言ってんだよ!てか俺を置いていくなよな!」


 キュリアと姫に先を越された俺は急いで樹洞の中に入っていった。

 樹洞の中に入ると今までの静かなる森ではなく知らない平原が広がっていた。


「謎の空間なのです!?あんな穴の中に変な空間があるのです!」

(これは何かしらの魔法を使っておるようじゃな…どんな魔法なのかは分からないのじゃ…)

「とりあえず先に進めるようだし行ってみるか。ここに留まってても意味はないだろうからな」


 街道がちゃんとあり、街道に沿って暫く歩いていると、1つの村が俺の目に入った。

 村の入口まで近くと櫓から声が聞こえた。


「ここに何用だ!見知らぬ者よ!」


 1人の獣人が俺の目の前に櫓から飛び降りてきた。

 その獣人は頭には真っ白な兎の耳が付いていたのだ。


「えーと、獣人の村を探してたらここに来たって感じなんですけど…入れなさそうなら引き返します!それじゃ!」


 引き返そうとした時、兎の獣人が


「お前も獣人だな、それならば村に入る資格はある。そこにいる者も人の姿はしているが…違うようだな、ならば許可する。その猫は何も言わずに入るが良い」




「おじゃまします?」



 こうして俺達は獣人の村に入る事が出来た。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る