第52話 狐さんと狐その⑨
<ハシュマル鉱山入口>
俺は途中でMPが尽きて人の姿に戻ったので、錬金マナポーションを一気飲みして回復をした。
道中、新しいモンスターが現れたのだがキュリアと姫の2人だけで始末してしまっていた。MP切れの俺は2人の後ろで一応は弓を構えていたが矢を放つ前に全て倒してしまっていた。
「ねぇお二人さん…俺の出番が無いんですけど」
「マスターは、今は休憩をしてるのです!ここのモンスターは硬いから普通の矢じゃ効果ないのです!MPが少ないのに無理して戦わなくていいのです!」
(そうなのじゃ、新しく覚えたスキルをマスターが使えばもっと楽に終わると思うのじゃが…燃費が悪すぎなのじゃ!爆発するアーツを普通の矢でしてもそこまでダメージがなかったのじゃ。だからある程度回復するまで妾達が頑張るのじゃ!)
ウォーリアリザードマンを倒し、先を進むと新しく現れたモンスター達はどれもが硬く普通の矢では効果がないモンスター達であったのだ。
ストーンボア、コボルト、ロックスコーピオン、この三体が新しく現れる。
唯一俺がまともに戦えたのはコボルトだけだった。
キュリアと姫が先頭に立ち歩いていると1軒の建物が見えてきた。
近づき看板を見ると
宿・酒場<デンジャラス>
「なんでいつもネーミングセンスが無いんだよ!もっとマシな名前をつけろよ!」
「でもここで休憩が出来るのは有難いのです。少しお腹が空いたのですぅ」
(妾は何か飲みたいのじゃ!)
「それなら少しだけ休憩だな。イベントは12時までだし…ん?運営からメールが来てるな」
運営からのメールを確認してみる。
『本日12時を持ちましてイベント終了になります。結果の発表は13時からとなっておりますので13時までにはアインスドット中央広場にお越しください。お時間までお楽しみください』
俺達がデンジャラスで軽く休憩をしていると、1人のプレイヤーが声をかけてきた。
「なぁ、少しだけいいか?」
「え?あ、はい。なんですか?」
「君があの掲示板で有名になってる狐さんだろ?隣にいる幼女で直ぐにわかったよ。俺の名前は
「あの掲示板…ですか…自分はシウです。こっちがキュリアでそこでお座りしてるのが姫です」
「ほぉ〜森猫もテイムしたんだな。それよりここに来たってことは採掘か?」
俺は鉱山にやってきた理由を亜鐘に説明した。
「属性鉱石かぁ〜運が良けりゃ入口付近でも取れないことはないけど今はイベント中だろ?ポイント稼がなくていいのか?」
「んー特に上位を目指してるとかは無いから残り時間は採掘してみようかと思って」
俺ははにかむように笑い、それを見た亜鐘は
「んふぉ?!かぁ〜...なぁ?シウって…男か?女か?どっちなんだ?高身長な割に中性的でわかんねーんだが」
「俺は男ですよ!立派な男ですからね!そこん所間違えないで下さいね?!」
俺はムスッとした顔で早口で亜鐘に言うと亜鐘はたじろぎ1歩下がってしまった。
「お、おう...変なこと聞いてすまんな。まぁ属性鉱石が欲しいならひたすら採掘するしかないぞ?でもシウは採掘スキルあるのか?」
「持ってなくても採掘は出来るんですよね?」
「出来なくはないけど…スキル持ちより採れる個数は半分以下になっちまうぞ?それでも大丈夫なのか?」
「今回はお試しなんで特に気にしてないから大丈夫ですよ。そろそろ俺達は行きますね」
俺達は座っていた椅子から立ち上がり亜鐘に頭を下げ店を出ていった。
シウが店を出ていき、亜鐘はシウの事を考えていた。
「あれが生の狐さんかよ…くっ!男なんて勿体ない!俺は認めんぞ!あれは…男の娘なんだ!そうなんだ!それより掲示板でこりゃ自慢できるわ。あの忍者と遊び人だけじゃなく俺も狐さんと出会って話したって自慢しよ〜へへ。あっ!フレ申請しときゃよかったぁぁぁ!!!忘れてたァァァァ!!」
「お客さんうるさいよ!叫ぶなら外で叫んできな!!」
亜鐘は店の女将に怒られたのであった。
▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
店を出て鉱山の入口までやってくると1つの洞窟があった。
「これが鉱山の入口か、中は洞窟になってんだよな。モンスターも出るみたいだから気をつけて進むぞー」
「先頭は私が行くのです!」
(それなら妾は真ん中なのじゃー主は後ろにいるのじゃ)
「はいよーとりあえず10分程進んで採掘ポイントがあればそこから採掘していくぞー」
「おーなのです!」(おーなのじゃ!)
ある程度進み、壁を見ると俺の視界には採掘が可能なポイントが色付いて見えた。
「ここで少しやってみるか。2人は周りの警戒を頼む」
「了解なのです」(らじゃーなのじゃ)
ツルハシをアイテムボックスから取りだしポイントに向かって振るう。
数度ポイントに向かって振るうとポイントから色が消え採掘出来なくなった。
「ここはもう終わりか、次にいってみよー!」
それから俺達は時間を忘れてひたすらポイントを探してはツルハシを振り続ける。
暫くするとキュリアが俺に声をかけた。
「マスター?また悪い癖が出てるのです!時間は大丈夫なのです?」
「はっ!今何時だ!……12時…イベント終わってるやん…てか急いで戻らないと!」
「はぁ…やっぱりマスターはこういった作業をすると時間を忘れるのです…急いで街に戻るのです!」
(主!妾に乗るのじゃ!そうすれば少しでも早く移動できるのじゃ!さぁさぁ!妾に乗って妾の上で暴れるのじゃぁぁぁ!!)
「嫌なんだが…でもそんなこといってる場合じゃないな…キュリアは光の翼で飛んでいくんだろ?」
「もちろんですの!」
俺は渋々、姫の背中に乗ると姫は喜び猛スピードで走り出した。
(ひゃっほぉ〜!主に乗ってもらえたのじゃ!合体したのじゃぁぁぁ!!)
「言い方考えようね?!てか目の前モンスターいるから!あぁもう!」
俺は姫の背中に乗りつつも弓を構え矢を放つ。鷹の目でロックオンをしたおかげで、いくら姫が飛び跳ねようが蛇行しようが相手を逃さなかった。
街につくまで俺はアシ〇カ気分を味わっていたのである。騎乗スキル恐るべし...
ちなみに、鞍が無くても軽くお尻が痛いぐらいですんだ。手綱が無くても大丈夫だった...駄猫に鞍とか手綱とか付けれるのかはわからんけどな!
<アインスドット>
俺達がアインスドットに到着したのは12時半を過ぎていた。
13時までには間に合ったが姫に跨ったまま街に入った為昨日に続き注目を集めていた。
そんな俺の前に見知った人物が現れた。
「よっ!やっと戻ってきたのか。しかも...猫に乗って登場とはなかなかの強者だな!ぷぷぷ」
「うるせーよユーキエモン!姫に乗ってたの忘れてたんだよ!それよりなんでお前がここに居るんだ?」
「は?姫?まさか…まぁそれは後で詳しく聞くとして…俺はラード達の成果を見に来たんだよ。サクヤちゃんもさっき居たぞ。友達と合流するとか言ってたぞ」
「あーホノニャンにリアちゃんか。お前ら律儀やのぉ」
「ほれ、さっさと中央広場に行くぞ。ラード達がお前の事を気にしてたぞ?メールしても返事が全くないって言ってたけど」
「かなりバタバタしてたからそんな余裕が無かったんだよ」
中央広場に付きラード達と合流してお互いの話をしていると、
『はーーい!皆ちゅーもーくー!今から結果発表しちゃうよー!結果発表するのは勿論…この!まーくんがやっちゃうぞ〜!拍手〜!』
運営の1人であるまーくんが現れ、イベントの結果をプレイヤー達に報告し始めた。
『まずはソロ部門から上位5名を発表しちゃうぞ〜?みんな覚悟はいいかにゃ?まず第5位〜7922ポイントで…トンガリ!おめでと〜!みんな拍手〜♪︎』
「8000行かないで5位なのか?なら俺…呼ばれるんじゃね?」
俺は小声で言うが隣に居たラードに聞かれていた。
「え?シウさんのポイントはいくつなんです?」
「9500ちょい…」
「僕より多いですね…僕は8500ぐらいですよ…でも僕達これで上位に入る事間違いないですね!」
『それじゃ次は〜第3位だぞ〜8622ポイント獲得の…ラード!なかなか頑張ったね〜♪︎みんな拍手〜♪︎』
「おっ?ラードおめでと!」
「ありがとうございますシウさん!」
『第2位の発表行っちゃうよ〜!第2位は9715ポイントGETしたシウ!隠しクエスト見つけてポイント稼いじゃったねぇ〜♪︎よく頑張りました!みんな拍手だよ〜♪︎』
「シウさん2位ですよ!それに隠しクエスト発見したんですね!凄いですよ!」
「あー、まぁありがと?でもクエストはまぐれだよ?それより1位は誰なんだろな?」
『それじゃぁ栄えある1位の発表に行っちゃうぜぇ!第1位は…13048ポイント獲得した〜ストレクーガ!おめでとぅ〜!ランキングに載った人達にはプレゼントがあるから期待して待っててね〜♪︎』
「ほ〜俺と結構な差があるな、かなりの数を倒したんだろうな。あとは俺みたいに隠しクエストを発見したんだろうな」
「ですね。僕達は地道にエリアボスを倒したりして稼いでましたけど」
「それでもそのポイントは凄いと思うよ?」
ソロでの発表が終わりパーティ部門の発表に入った。
こちらでは俺の名前は呼ばれることが無かった。ラードのパーティは見事に5位に入っていた。
こうして俺達の初めてのイベントは幕を閉じた。
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