第51話 狐さんと狐その⑧


イベント最終日



 フィノス湖で狐の親子、雪那と叢雲を冥府に送り届けた後、街に戻りログアウトをしてその日を終わらせた。

 翌日、ログインをすると直ぐに姫が飛びかかってきた。

(主〜おはようなのじゃ!おはようのちゅーするのじゃー!!!)

「しないわ!なんで駄猫とキスしないといけないんだよ!」

(駄猫じゃないのじゃぁぁぁ!!)

「マスター…猫はダメなのですよね?それならわたs「キュリアともしないからね?!」…ちっ!マスターは昨日の女狐がいいと言うことなのですね!」

「なんでそうなるの?!もうやめよ?!まだ朝だよ?!朝から疲れるわ!なんかどんどんキュリアが闇堕ちしてねーか?!」

「むぅ…それより今日はどうするのです?今日が最終日なのです」

(暴れに行くのじゃ!)


 今日はイベント最終日、12時までがタイムリミットであり俺達はどこに狩りに行くかを話していた。


「ずっと西か南しか行ってなかったし東か北に行ってみるか」

「虫達は嫌なので北に行きたいのです!もしくは駄猫...森狼をいたぶりに西でもいいのです!」

(妾は駄猫じゃないのじゃ!この羽ちみっこが!)

「んにゃ?!私は羽ちみっこなんかじゃないのですぅ!」


1匹と1人は威嚇しながら言い争いをしている。

姫は尻尾をピーンと伸ばして唸ってるし、キュリアも何故か姫の真似して同じ格好で対抗してるし...


「お前らなにしてんねん。キュリアも姫の真似しないの...めっちゃ情け無いぞよ...とりあえず仲良しなのは分かったから…まずは北にでも行ってみるとしますか…北エリアの先にある鉱山を目指してみるか。ギンガム氏が属性がついてる鉱石を欲しがってるみたいだし…俺の弓に使いたいだけだろうけど…」

「わかったのです!それよりマスター?昨日の女狐から貰った力を確認しなくていいのです?」

「そういやまだ確認してなかったな…見てみるか」


 俺は自身のステータスを開いて確認してみる。


 PN:シウ Lv28

 種族:魔獣人(妖狐)

 メイン職業:弓使い

 サブ職業:錬金術師(【錬金Lv24】)


 HP:220(120+100)

 MP:450(200+250)


 STR:30

 VIT:95(20+75)

 INT:50(25+25)

 MND:30

 AGI:65(30+35)

 DEX:114(50+64)


 ステータスポイント26


 スキル

【弓術Lv27】【短剣術Lv22】【鷹の目Lv20】【付加Lv26】【魔力上昇Lv20】【水魔法Lv19】【体魔力自動回復Lv15】【調教Lv3】【気配察知Lv20】【気配遮断Lv20】【影魔法Lv15】【投擲】【空き】(【隠密】【魔弓】【瞬足】【負の遺産】)

 固有スキル

【狐火】【氷炎魔法】【魔獣化】


 称号

【水精霊ディーネの加護】【錬金術師の弟子】【首狩り族】New【妖狐の友】New【冥府への送り人】



「……なんか色々増えてますな…てか魔獣人てなに?!それにステポ振ってないのにステが上がってる…そして固有スキルに謎の称号…変わりすぎじゃね?!」

「マスターがどんどん人からかけ離れていってるのです…」

(主は何を目指してるのじゃ?妖狐の神にでもなるつもりなのかえ?)

「俺に聞かれてもわかんねーよ!普通にプレイしてたつもりなのに…」


 種族が獣人から魔獣人に変わり、狐から妖狐に変わっていた。しかし、見た目に変化は特に無かった。

 基本ステータスも上昇しており、妖狐の雪那が持っていたと思われる固有スキルまで手に入れていた。


「そんなことより!北に行くぞ!時間もそんなに残ってないんだから北のエリアボス倒して鉱山にいってみよう!」

「了解なのでーす」(のじゃ!)


 俺達は北エリアに向かう前に師匠の店に寄り、採掘する為のツルハシを5本ほど買って行く。採掘スキルが無くても多少は取れると聞いていた為向かうことにした。



 北エリア<鉱山へと続く道>


 道中現れてくるモンスターに苦戦することなく短時間でボスエリア手前のセーフティゾーンまでやってきた俺達。


「この先はボスエリアだな、出てくるボスはウォーリアリザードマンか…リザードマンの強化バージョンだな」

「私たちならちょちょいのちょいなのです!それよりマスターは新しいスキルを使わなくてよかったのです?さっきまで普通に戦ってたですけど?」

「とりあえずボスで試してみたかったからさ…なんか普通のモンスターに使っても勿体ないじゃん?」

(妾は毒に麻痺にアイテムを投げつけられたのじゃ…あの時は…)

「あっ…まぁ…気にするな!エリアボス倒したらまたスキルに空きが出来るけど何を取ろうか(勿論!騎乗なのじゃ!)…まぁ取ってもいいけどさ…」

(それなら取るのじゃ取るのじゃぁぁぁぁ!!主に乗られるのじゃ!)


 俺は今後の移動の事も考え騎乗スキルを取る事にした。


「でもボス戦では乗らないからな!んじゃ挑戦してみますかね!」

「了解なのです!」(やる気MAXなのじゃーー!!)


 ボスエリアに踏み込みYESをタップする。

 岩場の隙間から一体のリザードマンが現れる。

 右手には大剣を持っており引きずりながら俺たちの前に姿を現す。

 見た目はボロボロだが鎧を着ており今までのリザードマンと違うと言うのは一目で判断できた。


 ウォーリアリザードマン Lv23


 俺よりレベルは低いが気を抜くことなく弓を構える。

 矢を放とうとすると俺の頭上からリザードマンが襲い掛かってきた。


「上かよ!岩場の上に隠れてたのか?!」


 しかし、リザードマンは俺に攻撃することは出来なかった。飛び降りてきたリザードマンを姫が魔爪で薙ぎ払ったのだ。


(主は妾が守るのじゃ!)

「ちっ!いい所取られたのです!なら私はあのトカゲ大将を倒すのです!」


 キュリアはウォーリアリザードマンに光の翼の羽根で牽制をしながら白兎で攻撃を仕掛け始めた。


「あれ?なんか俺の出番なくね?とりあえずまだリザードマン達が現れたからそっちを駆除しますかね。妖狐としての力を試させて貰うぜぃ!【氷炎魔法】氷華炎舞!」


 氷炎魔法の1つである氷華炎舞を一体のリザードマンに向けて放つと、リザードマンの足元が凍り始め無数の氷の槍が足元からリザードマンを刺し始める。

 刺し終わると同時に氷の槍が溶けだし足元から黒炎が上り始める。


「うわぁ…なにこれ…かなりえげつねぇ…」(ある意味拷問なのじゃ…これは喰らいたくないのじゃ…)

「てかMP消費激しいわ!1回で100も持っていかれたわ!容易く使えないなこれは…」

(使いすぎると直ぐに無くなるのじゃ。一撃必殺なのじゃ!かっこいいのじゃ!!)


 一方、キュリアはウォーリアリザードマンと一騎打ちをしていた。

 ウォーリアリザードマンが大剣で素早くキュリアに切りつけて来るがキュリアは華麗に避けカウンターで応戦していく。

 大技を決めるではなくカウンターの練習をキュリアはボス戦で行っていた。


「サクヤお姉ちゃんより攻撃速度が遅いのです!そんなのじゃ私に当たらないのです!」


 ウォーリアリザードマンのHPが半分を過ぎると咆哮を上げ体の色が赤くなり始めた。


「体の色が変わったのです!これは何かありそうなのですぅぅぅ!!」


 ウォーリアリザードマンは身体強化を使った為に体の色が変わり、攻撃速度や攻撃力等が変わっていた。


「なぁ姫さんや?キュリアさんが笑いながら戦って見えるのは気のせいですかな?」

(主…笑ってるのじゃ。あの羽ちみっ子は戦闘狂なのじゃ…でも主も笑いながら戦ってる時がよくあるのじゃ。それよりもう一個のスキルは試さなくていいのかえ?)

「あー魔獣化だよな〜説明を見る限りこれを使ったら確実にMPが無くなるんだよな…まぁあと少しでボスも倒せそうだし使ってみるか…【魔獣化】!」


【魔獣化】MP消費 全て

 全MPを使い魔獣となる。MPの量により変われる時間が変わる。

 1秒に付きMP1消費。

 ※1度魔獣化したらMPが無くなるまで戻ることは出来ない。魔獣化している時はMP回復不可。アイテム使用不可。


 俺はアーツや付加等使っていた為、残りのMPは半分以下であった。

 魔獣化を使うと俺の姿は雪那の狐姿と瓜二つだった。

 毛の色は俺のカラーである白磁色をしていた。


「俺が本当の狐になったの?!これが魔獣化なの?!てか普通のスキルが使えなくなってるぅぅぅ!!」


 弓術や水魔法等、普段から使っていたスキルは使用不可になっており使えるスキルは

【氷炎魔法】【狐火】【魔爪】【咆哮】【疾風迅雷】【騎乗】

 この6つであった。


「マスター?!マスターが妖狐に変わったのです?!」

「魔獣化したらこの姿になっちまったよ…しかもなんで騎乗がこの姿で残るんだよ…」

「乗れるのです!マスターに乗れるのです!!人馬一体となって…違うのです…天使と狐なのです…はっ!天狐一体となってこの世界を駆けるのですぅぅ!!!」

「勝手に乗ってくるなぁァァ!!!あぁ!もう余り時間無さそうだからこのままボスに突っ込むからな!」

「任せるのです!馬上槍ならぬ狐上槍なのですぅぅぅ!!!」(羨ましいのじゃぁぁぁぁぁ!!!!!)


 俺は妖狐の姿になりキュリアを乗せウォーリアリザードマンに駆けていく。

「こいつも使っておくぜ!【狐火】!」

 俺の体の周りに5つの黒い火の玉が現れウォーリアリザードマンに飛んでいく。

「マスターとの共同作業なのですぅぅ!!剛一閃!」


 ウォーリアリザードマンの横を駆け抜けると同時にキュリアはアーツを打ち込む。

 その後も縦横無尽に駆け回り俺の上でキュリアは攻撃を仕掛けていった。その間、姫は香箱座りをして2人を見守っていた。

(羨ましいのじゃ…妾も主に乗って欲しいのじゃ…乗ってもらって…あんなことやこんなことを…ぐへへ)


 残MPが50になる前にウォーリアリザードマンを倒した。


「私達の勝利なのですぅぅぅ!!」


 俺の背中に跨っているキュリアは槍を天高く掲げ叫んだ。


「もう降りません?キュリアさん?戦闘終わったんですけど?」

「このまま鉱山まで走るのです!マスターのMPが切れるまで走るのです!はいやー!」

「お尻を槍の石突で叩くなよ!わかったよ!姫いくぞ!ダッシュ!!」(かけっこは負けないのじゃー!!)


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