第50話 狐さんと狐その⑦
俺の手元には狐親子が残していった珠だけが残り、辺りは静寂に包まれていた。
「…こんな終わり方なんてありなのかよ…」
「悲しいのです…頑張ったのに…です」(のじゃ…)
俺達は悲しみにくれていると目の前に表示が現れ、
『シークレットクエスト『この命尽きようと…』をクリアしました。報酬として妖狐の魂魄を差し上げます。pt1,000獲得』
表示は消えていき、手元にある珠を見つめていた。
「これはあの親子の魂が眠ってるのかよ…クエストの名前みたいに命尽きてんじゃねーよ」
「マスター…親子の命は尽きたのかもですけど…それを見届け、マスターと今は一緒に居るのです。もしかしたら何か大事なアイテムかもなのです!」
(あの狐は主に魂を預けたのじゃろ?ならば肉体は消えたとしても主の手元には魂魄の珠があるのじゃ。魂はまだ生きておると言うことになるのでは?)
「そうなのか?とりあえず鑑定して確認してみるか」
妖狐の魂魄 レア度9
妖狐の親子の魂が眠っている。
用途不明。
「眠っている?なら起こすことも可能って事になるよな?」
「寝ているなら叩き起こすのです!お寝坊さんはダメなのです!」
(どうやって起こすかじゃな)
「よし!とりあえず何とかなるかもしれないって分かったんだ!一旦街に戻る!そして休憩する!」
「賛成なのです!甘い物が食べたいのですぅ!!」
(妾は…妾は主に乗って欲しいのじゃぁぁぁ!)「それは拒否します!」
俺達は魂魄をどうにか出来ないか考える為に一旦街に戻ることにした。
<アインスドット>
俺達一行は街に戻ると周りのプレイヤーから注目を浴びていた。
俺が先頭に立ち歩いているのだが、その後ろには姫に乗っているキュリアが居るのだ。
(羽ちみっ子!妾から降りるのじゃ!妾の背中に乗っていいのは主なのじゃ!)
「歩くの疲れたから乗ってるのです〜。騎乗スキルをマスターはまだ取ってないから乗れないのです〜残念でした〜」
(くぅ〜!主!早く騎乗を取るのじゃ!そして妾とがった「言わせねーよ?!何言ってんのこの駄猫は?!」
姫の声は俺とキュリアにしか聴こえておらず周りのプレイヤーには「んにゃ!にゃんにゃん!」としか聴こえておらず、俺達を不思議そうに見ていた。
「とりあえず買い食いしたら師匠の所に行こうか。なにか知ってるかもしれないしな。キュリアは甘い物…姫は…肉か?」
(妾は肉より野菜がいいのじゃ!)
「意外なのです...駄猫のクセに肉を食べないなんて…」
「ほんとそれな。野菜を食べる猫とか…草を食べるのなら見るけど...ないわぁ…」
(良いではないか!ヘルシーなのじゃ!ベジタリアンなのじゃぁぁぁ!)
<森の隠れ家>工房
「なんじゃもう戻って来たのか?ん?猫が増えとるが…調教して捕まえてきたんか?」
「この駄猫の事は気にしないで下さい。それより師匠に聞きたいことが」
(駄猫なんかじゃないのじゃ!立派な森猫姫なのじゃぁぁ!!)
「にゃんにゃんうるさいのです!おすわりなのです!」「にゃん!(のじゃ!)」
俺は狐親子の事を師匠に話し、魂魄の事も説明をした。
「この魂魄って一体なんなんです?何かに使うんですか?」
「ふむ…お主に託したのじゃな…その狐は…うーむ…何かに使うと言うより…まぁワシが説明をするより目で見た方がはやいじゃろ。フィノス湖の先に行ったことは?」
「いや…まだないですけど。先になにかあるんですか?」
「フィノス湖の先に行く道があるから、夜にそこへ行ってみるとよいじゃろ…そうすればその魂魄の意味がわかるじゃろ」
一旦休憩をする為に宿屋に向かいログアウトをする。
<フィノス湖>夜
昨日に続きフィノス湖にやってきた俺達は周りを警戒していた。
昨日の事が頭から離れていなかった。マップを駆使しながらフィノス湖の先に進んでいく。
道中、モンスターと遭遇をするが姫が増えたおかげで楽に戦闘を終わらせることが出来ていた。
進んでいくと崩れている建物を発見した。元々は石造りの建物であったのだろう痕跡があるがどんな建物なのかまでは分からなくなっているぐらい崩れていた。
マップを確認し、場所の名前を見てみると。
<冥府の神殿跡地>
と、なっていた。
「ここが師匠の言ってた場所でいいのか?神殿跡地…ここでなにが起きると言うんだ?」
「マスター!なにか現れます!気配が大きくなってるのです!」
(この威圧感…主…やばそうなのじゃぁ…)
神殿跡地の一角が突然光だし、俺達の視界を光で遮った。
あまりの光に目を瞑り顔を逸らしてしまう。
光が収まり、目を開け、光出した場所を見ると1人の女性が立っていた。
『ここに人間が来るとは…何用ですか…ここは冥府への入口…貴方方はまだ来るべき場所ではありませんよ…』
女性が俺に威圧を掛けながら言葉を放つ。
俺は吃りそうになりながらも声を出す。
「こ…ここに来れば…これ…の意味が分かると…言われて来たんですけど…」
アイテムボックスから妖狐の魂魄を取り出し女性に向ける。
『それは魂魄ですか…この世に未練があり留まったのですね…なるほど…貴方はそれをここに届けに来たと…』
魂魄を見せた途端に威圧は無くなり俺達は倒れ込みそうになるほど疲れきっていた。
「届けに来たかはわかりません…でもそれをここに持っていけば魂魄の意味がわかると言われたので来ただけです。それはどうすればいいのですか?」
『その魂魄を私に預けてください…』
俺は女性に近づき魂魄を渡す。すると女性は魂魄に向かって何かを囁いていた。
囁き終わると魂魄は宙に浮かび、砕けた。
魂魄が砕けると同時にオレンジの光が2つ現れ姿を作り上げて行く。
そこに現れたのは光となったはずの狐親子。それが俺達の目の前に居た。その姿は狐の姿ではなく、俺と同じように狐耳と狐尻尾を生やしている人の姿であった。
「え?!なんで現れたの?!死んだはずだよね?甦ったのか?」
『甦ったのではありません…あるべき姿にしただけ…』
女性は狐親子に顔を向け、頷いた。
『人間よ…迷惑をかけたな。まさか冥府の入口に届けてくれるとはおもっていなかったぞ?妾達の魂魄を食えばお主の力になったであろうに』
『お兄ちゃん!また逢えたね!僕嬉しいよ!』
「僕?!まさかあの狐はオスだったのです…まさかなのです…あんなにマスターに懐いていたからてっきりメスだと思ってたのです…」
「驚くところそこなの?!普通こうやって姿を現した事に驚きません?!」
(お化けなのじゃぁぁぁ!!怖いのじゃぁァァァ!!)
「姫はそこ?!西の森の夜はゴーストにスケルトン現れるよね?!あんたそこのボスでしたよね?!」
『…賑やかじゃな…それより余り時間もないからな、折角こうやってまた会えたんだ、お礼ぐらい今回はちゃんとしないと悪いな。なぁ我が子よ』
『うん!お兄ちゃんにちゃんとお礼がしたい!僕はお兄ちゃんにこれをあげる!貰ってくれる?』
子狐が俺に手渡してきたのはビー玉程の大きさの綺麗な水晶だった。
★妖魔水晶 レア度7
『お兄ちゃんの役に立つはずだから使ってね!』
「ありがとな…ちゃんと使わせてもらうな!」
子狐の頭を撫でながらお礼を言った。
『次は妾の番だな…お主…名はなんと言う?』
「シウ…だけど?それがどうかしたか?」
『最後ぐらいちゃんと名前で呼ばないと無礼だろ?』
「なら俺にも2人の名前を教えてくれないか?無礼なんだろ?」
笑いながら2人に言うと
『僕は妖狐の
「叢雲…か…切れ味良さそうな名前だな…」
『妾は
雪那が1歩近づき俺の顔に両手を添え、唇を重ね合わせた。
「なにをしてるですぅぅぅ!!!こっちが女狐だったのですぅぅぅ!!!」
(妾の主の唇が幽霊に奪われたのじゃぁぁぁぁ!!!!)
俺は固まっており動けずにいた。
雪那は唇を離し、こう告げる。
『これが妾のお礼なのだ。こんな美人に唇を奪われて嬉しいだろ?ふふ』
「女狐がぁぁぁぁ!!!成仏しやがれですぅぅぅぅ!!!」
(お化けと接吻…お化けと接吻…はっ!妾が主の唇を消毒すればいいのじゃ!名案じゃ!!)
「駄猫もなにを言うかですぅぅ!!!その毛を狩り尽くしてやるのですぅぅぅ!!!」
『はっはは!キスはおまけだ。本当のお礼はシウにもう渡したよ。キスした時にな。妾の力を分け与えた、後で確認してみると良い』
ここまで見守っていた女性が告げた。
『そろそろ時間です…よろしいですか?』
今まで固まっていた女性の言葉で息を吹き返した。
「時間?!もういくのか?」
『こうやってシウの前に姿を出せたからもう悔やむことはないさ。妾達を救ってくれて本当にありがとう』
『お兄ちゃん!お母さんを助けてくれてありがと!向こうでもお母さんと一緒に居られるから僕は嬉しいよ!』
「…そっか…2人一緒に居られるならそれでいいよな!うん!向こうでもなかよくするんだぞ?」
『わかった!』
『では…冥府にお送り致します…』
女性が告げると雪那と叢雲、女性の前に門が現れる。門が開かれ2人は門の中に入っていき俺達に手を振る。
『シウ様…おふたりをお助け頂きありがとう御座いました。また貴方とは会うことになるでしょう…また魂魄を手に入れたのならばお越しください…それでは今日はこれにて失礼致します』
女性も門の中に入り、俺に一礼すると門は閉ざされ消えていった。
『『この命尽きようと…』裏ルートをクリアしました。pt5,000獲得しました』
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