第49話 狐さんと狐その⑥


<西の森>川辺セーフティゾーン


 姫をテイムして新たに仲間にした俺は姫のスキルについて考えていた。

 そして姫の大きさはボスとして現れた時よりあきらかに小さくなっていたのだ。

 ボスとして現れた時は大型トラック並の大きさだったのだが、今ではポニークラスの大きさになっていた。

 そんな姫とキュリアを交互にみて頷いた。


「なぁキュリア…乗れるんじゃね?姫に」

「乗れそうなのです…でも乗る自信がないのです…」

(ふん!こんな羽ちみっ子が妾に乗ろうなんて3年と2ヶ月早いのじゃ!)

「やけにリアルな年数だな、おい。でも出来なくはないだろ?ちょうど2人…1人と1匹はスキルに空きがあるから騎乗を覚えたら行けるんじゃね?」

「1匹…ぷっ…名前は姫なのに匹扱い…ぷっ!!」

(主ーー!ひどいのじゃー!妾もちゃんと1人として扱って欲しいのじゃぁぁ!!)

「えぇ…だって猫じゃん…匹扱いじゃんよ…人として数えられねーわ…」

「なのです…」



 キュリアと姫を説得して騎乗スキルを取って貰った俺であった。


 スキル【騎乗】

 騎乗出来る動物、モンスターに乗ることが出来るようになる。


(主は取らないのか?妾は主に乗ってもらいたいのじゃ!)

「んー。断る!姫に乗ったら振り落とされそうだし…」

「マスターの上に乗るのはわたs「何言い出すのかな?!キュリアさん?!」」

(よくわからないのじゃ。でも主も騎乗スキルを取れば移動が楽になるのじゃ!羽ちみっ子は飛べるからいいけど主は歩きなのじゃ。お得じゃよ?)

「んーとりあえずは頭に入れておくわ。今はまず狐の所に向かうぞ。姫のせいで遅れたし早くいくぞ!」「駄猫のせいなのです!」

(妾は悪くないのじゃぁぁぁ!!)


 俺達は以前、子狐と通った道を歩いていき狐の元に向かっていった。

 たどり着くまでにもどき達に何度か襲われたがキュリアと姫だけで葬っていた。

 意外にも2人は息が合っており、初めて騎乗した割に攻撃を外すことなく上手く行っていた。


「上手くできてますやん…あれだけ騒いでたのに戦闘になれば息ぴったりかよ…なんか羨ましいやんけ…」


 俺は1人軽くヤキモチを妬いていた。

 そして狐が待つ洞窟に到着して中に入り狐の元に向かう。


「キュ?キュキュイ!」


 子狐が俺を見つけると鳴きながら走ってこちらに来た。


『…昨日の人間か…どうした?妾はもうそんなに長くは持たぬぞ…殺しにでも来たか?』

「その呪いを解けるかもしれないアイテムを持ってきたぞ。飲んでみてくれ!」「なのです!」

(よくわからないのじゃが…飲むのじゃ!)


 アイテムボックスから解呪アイテム、聖なる気つけ薬を取り出し狐の口元に近づけた。


『飲ませてくれるか…人間よ。ん…美味しくはないのだな…』


 狐に飲ませて鑑定をしてみた。


 ??? Lv???(呪い)


「なんで呪いが解けてないんだよ…アイテムでダメなら元凶の狸をどうにかするしかないのか?」

『人間よ…もうよい…どうせこの命長くは持たん…妾が理性を失う前に殺してくれ…』

「何言ってるのです!この小さい狐はどうするのです!」(のじゃ!)

『…この子を連れて行ってはくれまいか…』

「それは出来ないな。あんたの呪いを解く、それしか俺は受け付けねーから。キュリア、姫。大将の狸を探しに行くぞ。」

「もちろんなのです!」(やってやるのじゃー!)


 俺達は元凶である狸を探しに洞窟から出るために入口までやって来た。

 そして外に出た瞬間、モドキ達が数匹現れ襲って来た。


「いきなりかよ!待ち伏せでもしてたのか?!ちっ!クイックショット!」

「駄猫!やるのですよ!」(羽ちみっ子に言われなくてもわかってるのじゃ!)


 キュリアと姫もモドキ達を蹴散らし始めた。

 しかし突然モドキ達が動きを止め、1箇所に集まりだした。

 すると集まった場所から1匹の黒いライオンが姿を表した。

 白い鬣に黒い体。


『人間よ!そこにクソ狐が居るのはわかっているぞ!我の前に差し出せ!さすれば貴様ら達は見逃してやろうぞ!』


 黒ライオンは俺達に向け吠えた。

 俺は怯むことなく声を上げる。


「てめぇがあの狐に呪いを掛けた元凶か!」

『それがどうした?我であるならどうする?殺すか?笑止!貴様ら人間に殺られる我ではないわ!!』


 カースラクーンドッグ(ライオン形態) Lv30


「キュリア!姫!ここで奴を仕留める!いくぞ!」

「了解なのです!」(らじゃなのじゃ!)


 弓を構えた瞬間、黒ライオンは俺めがけ突進してくるが横から姫が体当たりをして妨害をする。


「やらせないのです!蒼月斬!」

「ナイス姫!パワーショット!」


 体当たりを食らった黒ライオンは体勢を崩し、その隙にキュリアと俺はアーツを打ち込む。


『人間風情が!ダークランサー!』

 黒ライオンは闇魔法を使ってきた。黒ライオンの周りに黒い槍が複数現れ、俺達に向かって飛んできた。

 直撃はしなかったが掠っただけでHPは4分の1削られていた。


「まともに食らったらやべぇじゃんよ!距離を取れば魔法使ってきそうだけど…キュリアと姫、前衛は任せたぜ?それとキュリア、幻影よろしく!」


 俺は1歩下がり走り出す。洞窟の周りは木々が生い茂り、姫と戦ったような開けた場所ではないのだ。

 すぐ様気配遮断を使い木々に混ざり込む。黒ライオンは幻影に気を取られ俺の姿を見失っていた。


『羽虫に猫風情がぁぁぁ!!我の邪魔をするなぁぁぁ!!』


 黒ライオンは黒い靄に包まれ姿を変えて現れた時。

 ライオンからゴリラに変わっていたのだ。

 腕を振り上げキュリア目掛け振り下ろすがキュリアは素早く避けカウンターで黒ゴリラの横腹に槍を刺し込む。

 姫は爪に魔力を込め魔爪を使い薙ぎ払う。


 力任せに腕を振り下ろすがキュリアと姫は軽く避けてしまう。

 その間に俺は森に隠れつつ矢を放ち続ける。

 見る見るうちに黒ゴリラのHPは削られていき黒ゴリラは怒りの咆哮を上げる。


(なんとかこのまま行けそうかな…ん?洞窟からなにか出てきてる?まさか!親狐が出ようとしてるのか?!)


 洞窟の入口を見ると親狐がゆっくりと姿を現した。


『狐ぇぇ!ようやく姿を現したか!そろそろその力尽きるだろうよ!我が糧となれぇ!!』


 黒ゴリラは姿を変え、またライオンの姿になり衰弱しきっている狐に走り出す。

 飛びかかり噛み付こうとした時だった。


『グアァァァ!!!キエウセロォォォ!!』


 狐は何かに取り憑かれたかのように豹変していた。

 黒ライオンが噛み付こうとした時、狐の周りには黒い炎の玉が無数に現れ、黒ライオンに放つ。


『貴様!我が呪いにまだ抵抗をするか!自我を失ってまで抵抗をするとは!』

『グルゥゥゥァ!』


(マスター!どうするのです?!)

(あの中に入るのはキツそうなのじゃ…)

(とりあえずは後方からあの化け狸に攻撃をするぞ。あの狸を殺れば元に戻るかも知れない!)


 俺達は後方から魔法や弓で攻撃をしていたのだが狐は俺達にも黒い炎を飛ばしてきた。


『コロスコロスコロス!!』

『ぐぅ!こんな所で…我は倒れてはならんのだ!狐がぁぁ!』


 狐は複数出していた黒い炎を1つに纏め、巨大な炎の塊にし黒ライオンに放つ。

 黒き炎に包まれた黒ライオンは消し炭になっていた。

 ライオンの姿から巨大な狸に戻って光となって消えた。

 狸が死んだ事により元に戻ると思われて居たのだが、


『グルゥゥゥァ!!!ホロビロォォォ!!』


 我を忘れている親狐は俺めがけ黒き炎を投げつけて来た。

「マスター!結界!!」(避けるのじゃぁぁ!!)


 キュリアは結界を張るが狐の黒い炎は複数飛ばされており直ぐに結界は破られた。

 残り1つとなった黒い炎は俺に当たろうとした時


「キュイーー!!」


 俺の目の前に子狐が飛び込んで黒い炎の犠牲になり俺を助けた。


「お…おい!大丈夫か!今すぐポーションを…待てよ…光になるのはまだ待てよ!」


 ゆっくりとだが子狐は光となって消えようとしていた。


「待てって!直ぐに回復するから!」


 錬金ポーションを子狐に振りかけたが光は一向に消えようとしない。

 この間、狐は何故か動きを止めていた。


「キュ…キューン…(おにいちゃん…お母さんを助けてあげて…)」

「なんだよ!最後に念話なんか使ってんじゃねーよ!お前も…お前の母ちゃんも助けるから生きろ!」

「キュイ…キュイキュ…(これあげる…大事にしてね…)」


 子狐は消える前、俺に1つの欠けた球を渡し光となって消えていった。


(人間…妾を…早く…殺せ!完全に自我を無くす前に!)

「それしか…方法はないのか…」

(我が子を…この手で殺めてしまった…生きている意味がもうない…だからせめて我が子が心を許した人間の手で終わらせて欲しい…)

「……わかった…お前がそれを望むなら俺は否定しない」

(済まぬな…迷惑をかける…我が子がお主に魂の欠片を渡したのなら妾もお主に渡すぞ…人間よ…)


 子狐が渡してきた欠けた球が光り、綺麗なオレンジに輝く珠となった。


「お前の魂確かに受け取った…あの世で子供と仲良くしろよ…じゃぁな」


 俺はダガーを握りしめ、狐の首目掛けダガーを振る。


(ありがとう…人間よ…)


 狐は消える前に俺達に向け言葉を放ち、笑顔で狐は光になって消えていった。


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