第38話 くぅーん



 時間を忘れ様々な錬金アイテムを作り出した俺は満足して工房を後にしてキュリアが待つ店に戻った。

 すると店の中はプレイヤーが大量に来ており満員御礼であった。

 師匠が眉間に皺を寄せながら声を掛けてきた。


「お主なにかしたのか?お客が来る事はいい事なんじゃが…ちと多すぎやせんかの?」

「俺は何もしてないっよ?むしろ俺も説明して欲しいぐらいなんだけど?!」

「お主が原因じゃないとなると…あの天使っ子が原因かの?」


 俺はキュリアの方を見るとプレイヤー達は


「名前なんて言うの!」「今度俺達と一緒に行動しない?」

「あの首狩りの従魔だよね?あんなやつの所より俺の方においでよ」

「そのうち君の首も狩られるよ?」


「え?テイムモンスターって他のプレイヤーの所に移動できるの?ってんなことより…」


 キュリアの元に向かい他のプレイヤーに声を掛けた。


「キュリア大丈夫か?なぁプレイヤーさん達よ…店の迷惑になってるから帰ってくんね?」


 するとプレイヤー達は俺を見ると様々な声があがる。


「ひっ!首狩り!狩られる!」「んだよ!てめぇがこんな可愛い従魔をもってんじゃねーよ!」「あれが首狩り…ホンモノ…」「きつねこわいきつねこわい…」「あら?なかなか可愛いじゃない?食べちゃいたい…」「キツネたん…はぁはぁ…」


(最後の方はなんか怪しくねーか?とりあえずめんどくさい事になりそうだな…こんなとーきーはー)


「もしもし?ユーキエモン?アインスドットの雑貨屋にすぐ来い。緊急事態だ」

『だいたいの状況はわかってる、今アインスドットだからすぐに行く』

「3秒で来な!」

「来てやったぞ!!」

「本当に来たよ!てかこの状況どうにかしてくれユーキエモン!」


 ユーキングが現れたことにより森の隠れ家には静寂が訪れ、ユーキングが一言


「消し炭&首を狩られたくなければ…わかってるよな?」


「「「「「狂戦士!さーせんした!!」」」」」


 ユーキングが来たことによりこの騒ぎは治まり俺達は感謝していた。


「流石にあれはないわな、後で掲示板の方でしっかりと注意しておくわ」

「すまんのぉ、ユーキエモン…なんでこんな事になったんだよ…」

「そりゃキュリアちゃんが進化して幼女になってるって掲示板で騒がれてるからだろよ。そのキュリアちゃんを見つけたプレイヤーがここを掲示板で広めたんだよ」

「まさかの?!みんなロリコンかて!」

「まぁ騒ぎは収まったからいいんじゃね?んでお前はここで何してんの?」

「ん?ここの工房借りて錬金してただけだけど?ユーキエモンもまたクランメンバーの教育?」

「ここがお前の師匠の所なのね。その通りで明日のイベントに向けて最終調整って感じだな」


 ユーキングと少しだけだが話をして別れていった。

 新しく作った攻撃アイテムを試すべく西の森のエリアボスの元に足を向ける俺とキュリア。

 西の平原でふと疑問に思ったことがあった。


「アイテムを投げるのはいいけど…俺ってノーコンだけど大丈夫なのか?」

「トビウサギで試してみますか?」

「そだな、とりあえずその辺の石を投げてみるか」


 足元にあった石を拾い、目の前にいるトビウサギに投げるが当たらなかった。

 何度投げてみても当たる気配がない。


「ここまでノーコンだったのかよ…俺…こんなんじゃアイテム投げる所の話じゃないやん…はっ!スキル枠が空いている!ピッチングみたいなスキルはないのか!」


 すぐ様スキル一覧を見て、良いスキルを発見する。そのスキルは


【投擲】

 物を投げる時に補正が掛かる。


「これじゃね!すぐGETだ!そして試してみるのです!」

「なのです!」


【投擲】スキルを手に入れ、再度トビウサギに石を投げてみると今度はしっかりと当たったのだ。


「キタコレ!よし、今から俺は石ばかり投げるからキュリアはトドメを頼んだ!ボスの所に行くまでずっとだからな!」

「目指せ石投げ名人なのです!」

「えぇ…そんな名人は目指したくないかな…せめて投げナイフとかで名人になりたいんだけど…」


 エリアボスの元に向かうまでに投擲スキルのレベルが10に上がっていた。

 レベルが上がる事に飛距離も伸び、威力も上がっていっている。森狼相手では石を投げただけで光に変えて行っていた。


「こりゃやべぇな…石だけで森狼倒せるなんて…もう少しレベル上がったら森狼の頭を粉砕出来るんじゃね?」

「やっぱりマスターは石投げ名人に「ならねーよ?!」ならないのですか…残念です…」

「なんで残念がるの?!キュリアさんそこでガッカリしないでくれるかな?!」

「それなら頭粉砕名人に「だからならねーよ?!」……ちっ」

「キュリアさん堕天しちゃったの?!ねぇ?!舌打ち辞めてくれないかな?!」


 馬鹿な事を話しているうちにボスエリアに到着していた。


「今回はアイテムの実験だから程々に長の相手をよろしくね、キュリア」

「はいなのです!石投げ名人の元に近づけさせないのです!」

「…もぅいいよ…それで…さぁ行こうか…」


 ボスとの戦闘が開始すると同時に俺は長に向かって走り出し、各属性のストーンを手に持ち1つずつ投げ出した。


「まずはファイアストーンだぜ!そーれ」


 長に当たると同時に小規模の爆発が起きた。


「うそん…インパクトショットと同じぐらいの爆発ですやん…なら今度はアイスストーン!」


 走りながら全てのストーンを投げていく。


 アイスストーンは当たると同時にストーンから氷の槍が生え、ウィンドストーンでは人程の大きさの竜巻が起き、アースストーンは当たった瞬間に長をノックバックさせた。

 各属性を使ってみて長を見てみると既にHPはレッドゾーンになっていた。


「なんか凄いぃ…後は…毒の矢と麻痺の矢がどれだけの効果か試したいんだけ…なんか可哀想になってきたんだが…」


 雄叫びを上げ森狼を呼び出すがキュリアがすぐ様殲滅に掛かる。

 魔弓を手に持ち麻痺の矢を長に向かって放つ。

 横腹に刺さると長の動きが鈍くなりはじめ少しすると動かなくなった。

 鑑定をしてみると


 森狼長 Lv16(麻痺)


 と、なっており状態異常に掛かっていた。

 すぐ様、毒の矢を手に取り動かなくなった長に撃ち込む。

 すると


 森狼長 Lv16(麻痺、毒)


 状態異常が同時にかかっていた。


「なんか…このやり方酷いな…あっキュリア後ろから森狼来てるぞ、影縫い!」

「助かりましたマスター!せいっ!」


 影縫いで森狼の動きを止めると同時にキュリアは白兎で森狼の頭を飛ばした。

「うん......残酷…俺も人のこと言えねーか」


 残りは長だけになったがその長も既に虫の息。

 俺は長の近くまでやってきた。


「なんかごめんな?こんな戦い方して、お前さんは正々堂々とやりたかったよな?また来るからそん時はまたやり合おうな?な?」


 言葉が通じるか分からないが話しかけると。



「…クゥーン…」

「おぇ?なんか聴こえた?まさか長…お前か?」


 しかし返事はなく残りのHPを毒が蝕み全損し、光になって消えていった。


「なぁキュリア、今の聞こえたか?」

「悲しそうな鳴き声だったのです…少し可哀想でした…」

「今度はしっかりと戦おうな…」



 ボスエリアを後にして川辺のセーフティゾーンで俺達は休息をした。



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