第39話 動き出す


 川辺で休息をしている俺達はこの後のことについて話をしている。


「マスター、この後はどうするのです?また時間が経つのを待ってるのです?」

「それだと勿体ないよな。違うエリアに行ってみるか?」

「それがいいと思うのです。東の森に行ってみますか?あそこならセーフティゾーンまでは行ってますし、ボスに挑戦も出来ると思いますです!北も行けるのです!」

「まぁ確かに南はまだ湖しか見つけてないしな。いま17時過ぎだし、挑戦するには東がベストだろうな。なら東に行きますかね。その前に…1時間だけ時間をくれ!原石を…原石を取らせてぇぇぇぇ!!」

「…はぁ…採取30分の分解30分ですよ?」

「くっ!せめて錬金で30分も追加で…」


 キュリアにジト目で見られる俺…なんか変な扉が開きそうだわ…

「…全部を1時間で終わらせます…はい…」

「よろしいのです!では…スタート!」


 ~~1時間後~~


「はぁはぁ…もう俺のライフMPはゼロよ…はぁはぁ…」

「1時間経ったので東の森にいきましょうか?マスター?」

「少しだけきゅうけ「行きましょうね?」…はい」


 移動しながら錬金マナポーションをがぶ飲みしていた。

 なんとか1時間で各属性のストーンを5個作り終えていたものの、原石はまだアイテムボックスの中に大量にある。

 ブツブツ文句を言いながら移動をしている俺に対してキュリアは槍を振り回しながら現れるモンスターを笑顔で蹴散らしながら前を歩いていた。


 アインスドットに入り屋台で軽く腹ごしらえをしてすぐに東の門から森に向かう2人。


 俺は歩きながらでも錬金が出来ないか試していた。


「マスター?歩き錬金は危ないからやめた方がいいのです」

「歩きスマホみたいに言うなよな…少しは錬金でアイテム作っておきたいじゃんよ…錬金シート無くても分解は出来るんだよ!ならしちゃうじゃん!魔法付加も歩きながらできるじゃん?したくなるじゃん!!」

「マスターは子供ですか…」

「俺より小さいキュリアに言われた?!キュリアだって子供じゃんよーー!!」

「…ふっ…そんな事を言う人の方が子供なのです…」


 俺達のやり取りを他のプレイヤーはもちろん見ていた。

 そしてこの事も掲示板に載ることを俺達はしらない。



<東の森>


「この森にはいい思い出無いんだけどな…」

「Gさんが現れるからです?」

「もちろんだ!あのストーカーが居なければ気にならないんだけど…てか今日は全く現れないな?」

「そう言えばそうなのです…1匹も来ないなんて不思議なのです」


 虫たちを倒しながら進んで行くがいつも現れる黒き悪魔は出てこなかった。

 するとその時1人のプレイヤーと思われる人物とすれ違う。その人物は黒いローブを身にまとい顔はフードで見えなかった。


「……混沌の始まりだ……」


 すれ違いざまに謎の人物が言葉を発する。

 すぐ様振り向くがその人物は既に居なかった。


「あれは…プレイヤー…じゃない?マーカーが住人と同じ色だったぞ…それにあのセリフ…」

「混沌…ですか。悪魔でも出てくるのでしょうか…」

「んーわからんが、とりあえずユーキングにこの事を伝えておくか。もしかしたら何かしらのイベントかクエストかも知れないしな」


 ユーキングに先程の事をメールにて伝え、セーフティゾーンにやってきた。そのまま休むこと無くボスエリアに向かう。

 エリアに踏み込むと挑むかの選択肢が現れる。もちろんYesをタップすると、今回のボスエリアは西の森とは違い普段と変わらない森であったが、1本だけ太い木があり高さも周りと違い倍の高さはあった。

 そして、その木から巨大な蜘蛛が降りてきたのだ。


 キリングスパイダー Lv18


 キリングスパイダーには目が無く無眼であり、赤、緑、黒の3色の不気味な色合いをしていた。


「うわぁ…気持ち悪ぅ…なにあの色…センスないわぁ…しかもデカすぎっしょ…体だけで3mぐらいありません?」

「近づきたくない色ですの…マスター、前衛しません?」

「キュリアの方が装甲あるよね?!てか糸飛ばしてきたよ!回避!」


 俺達が話していると、痺れを切らしたがごとくキリングスパイダーが糸を吐き出し攻撃してきたが、回避した。

 俺はすぐにファイアストーンを取り出し、投げつける。


「虫さんは火が苦手だろ?燃えちまいな!キュリアは結界を自分に張ってから突貫!俺はぼちぼち援護する!」

「突貫したくないですけど、やるのです!マスター付加を!」

「はいよ!【付加】パワーアップにディフェンスアップ!からの付加火のインパクトショット!」


 キュリアにバフを掛けると同時に爆撃を仕掛ける。

 キュリアが白兎で穿こうすると、キリングスパイダーは糸を周りの木に吐き付け、移動を開始し始めた。


「あの糸は移動にも使えるのね…それになかなか早いやんけ!そっちが動き回るなら俺は隠れさせてもらうぜぃ?」

「暗殺者マスターなのです!」

「囮みたいにしてしまうけど頼んだぞキュリア。やつは周りを移動したけど、結局はあのデカい木に戻ったみたいだから多分上から攻撃してくると思うぞ」

「了解なのです!」


 隠密を発動させ木々に隠れる。

 キュリアが1人になると同時に、頭上から糸を丸めた弾が降り注いできた。

 右に飛び、避けたキュリアだったがそこにキリングスパイダーが飛び降りてきた。

 白兎を構えて刺そうとするが、複数の脚でガードされた。その隙を見て、キリングスパイダーの背後から俺はアースストーンを投げつける。

  だがキリングスパイダーは尻から糸を出し、アースストーンを絡め取って回避した。

 無眼のキリングスパイダーは、何も見えない代わりに他の感覚が研ぎ澄まされており、それによって俺の行動が阻まれたのだ。

 糸を吐きながら再度木々を移動していくキリングスパイダー。


「背後からの攻撃が当たらないとはな、めんどくさい敵だな。視界を奪おうにも目が無いしな」

「なんとか動きを止めるしか無さそうなのです」

「あれだけ動かれると影縫いも打てねーんだよね…っと!そこか!」


 糸弾を飛ばしてきた方向にクイックショットを撃ち込む。矢は刺さったがキリングスパイダーは動きを止めずに走ってきた。


「マスターは下がって!乱れ突き!」


 キュリアと立ち位置を代わり槍術アーツをすぐ様使って攻撃をするが、HPを減らすものの動きを止められない。


「影縫い!くそ!ダメかよ!キュリア右だ!」


 ジグザグに走っていたキリングスパイダーはキュリアの右から体当たりをしてきた。俺の咄嗟の指示にも回避は間に合わず、キュリアは体当たりをもろに受け飛ばされてしまう。

 飛ばされた先にはキリングスパイダーが走りながら糸を吐いていたせいで作られた、粘着性のあるネットがあった。そこにキュリアが貼り付けられた。


「蜘蛛の巣にキュリアが囚われちまったやん!とりあえず蜘蛛の巣をファイアストーンでどうにかできねーか?」


 蜘蛛の巣にファイアストーンを投げつけてみるが、それもまた貼り付いてしまう。

 その間にキリングスパイダーは動けないキュリアに対して糸弾を打ち込む。

 貼り付けられているキュリアはキリングスパイダーにとっていい的であった。

 キリングスパイダーに向け矢を放つが、脚で払い落とされてしまう。

 アーツを使って攻撃をするが、今度は移動され避けられてしまった。


「だぁぁぁぁ!!なんなんだよこいつは!蜘蛛の脚便利すぎだろよ!クイックショット!アクアボール!インパクトショット!!」

 連発して撃ち込むと、アクアボールとインパクトショットはキリングスパイダーに命中した。


「キュリア!一か八か、光の翼でその巣をどうにかできねーか!?」

「やってみるのです!【光の翼】なのですぅぅぅ!!」


 キュリアが光の翼を展開すると、糸が切れ脱出に成功した。その勢いのままキュリアは光の翼を羽ばたかせ、キリングスパイダーに突撃を仕掛ける。

 それを飛んで避けるキリングスパイダーだが、俺はその隙を見過ごさなかった。


「今なら当たるだろうよ!麻痺の矢を喰らえや!」


 1本だけではなく次々に麻痺の矢を撃ち込む。脚で払い落としていたキリングスパイダーだが、捌ききれずに数本刺さってしまい麻痺を受けてしまう。

 キュリアがキリングスパイダーに近づき


「魔力全開ですのぉぉ!!切り刻むのですぅぅぅ!!」


 光の翼を出したままキュリアは一回転するとキリングスパイダーに光の翼が当たり斬られていく。そのままキリングスパイダーは吹き飛び動かなくなっていた。


「トドメはおれが貰うぜキュリア?久しぶりの魔力全開魔弓の鎧通し!!」


 動かなくなったキリングスパイダーにゼロ距離での鎧通しを使い光に変えていった。


『エリアボスを討伐しました。初回討伐ボーナスを獲得しました』


「ふぅ…めんどくさい蜘蛛だったよ…てかキュリアさん?光の翼で相手を斬ることも出来たの?」

「やってみたら出来たのです!蜘蛛の糸が切れたから出来るかなと思ったのです!!」


 ドヤ顔でキュリアは言い放った。

 一言物申したかったが俺は我慢した。



 そしてその2人を遠くから見ている者がいた事に気づかなかった。


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