第29話 もっちもち


<西の森>


 姫を無事に討伐した俺は先に進めるようになったがその場に佇んでいる。

 キュリアが姫にやられ死に戻りをしている為に街に戻り教会に行くべきか、それとも先に前に進み第2の街に行くかを考えていた。


「後味悪い勝利だなこれ…くそ!どうするよ…先に行きたい気持ちはあるけど…でもやっぱり行くなら相棒のキュリアと一緒じゃないとダメだよな。よし、ここは素直にキュリアを迎えに行きますかね!そうと決まれば回復してダッシュで戻るぜ!」


 すぐさま行動に移す。今のところの回復量が1番高いリプリル味の錬金ポーションを飲み干して走り出す。

 森狼などは目もくれずひたすら街を目指して走り続けている。


(キュリアを迎えに行ったら何か買ってあげなきゃだな。俺を庇ってくれたんだし…それに今も教会に1人で寂しくしてるだろうからな。好きな物でも…金が無いからまずは換金してからだな…)


<アインスドット>


 街に入ると教会にすぐ向かった。寂しく待ってるであろうキュリアを少しでも早く迎えに行くためにずっと走り続けている。


(ここまで走れるなんて流石ゲームの世界だな。リアルなら確実に足が死んでるわ。よし教会に着いたぜ!)


 教会の中に入り、死に戻りしているであろう部屋に入ろうとするが中からなにか賑やかな声が聞こえる。


「この子なになに?!めっちゃ可愛いんですけど!!」

「その子って確か狐さんのテイムモンスターだよね?天使ちゃんだよね?」

「あの首狩り狐さんのなの?!あんな物騒な人が天使をテイムなんて…矛盾してるわ…」

「きっと今も首狩りしてるのよ…笑いながら…あぁ…あの笑いの声が聴こえる…頭の中に…あの声が!!!」

「しっかりして!ここは安全よ!気をしっかり持って!貴女は生きてるわ!首がちゃんとあるから大丈夫よ!」

「でもこの天使ちゃんなかなか凄い装備じゃない?天使ってより戦乙女に見えるよね?」


 なに?この雰囲気…めっちゃ入りづらいんだけど…しかも俺に恐怖してる人もいるじゃんよ…兎に角!迎えに行かなければ!


 部屋に入ると数人のプレイヤーが入口を見る。



「キュリアー迎えに来たぞー」



 一瞬世界が止まったように静寂になるリスポン部屋。



「首狩りが現れた…あぁ…狩られるのね…」

「隠れなきゃ隠れなきゃ隠れなきゃ…」

「首狩りさん…背が高い割に意外と可愛い?ほんとに首狩りさんなの?え?」

「はぁはぁ…男の娘…はぁはぁいいわぁ…」



(ますたーまってたのですぅー!)


 様々な反応があったが周りを無視してキュリアの元に行くとキュリアはすぐさま俺の頭に座り込み狐耳を弄り出したのだ。


(ますたーおそいですのー!さみしかったのですーー!!)

「ごめんて、ここでたら森狼の素材売ってからなにか買ってあげるからそれで許してくれよ」

(む〜。それならあまいものをようきゅうするのです!)

「りょーかい。それなら行こうかね」


 教会を後にして俺達はキャットファイトに向かった。

 そこで一休みする為に。


 喫茶<キャットファイト>


 今回は個室ではなく普通にカウンターに座り、まったりとしておりキュリアはパンケーキをひたすら食べていた。俺はフレンドリストを確認してある人物にコールした。


「もちもち?もちもーち!もっちもち!!」

『もちもちうるせーよ!なんだよこの野郎!』

「ユーキエモン!姫に勝てたぞ!本当に装備達ありがとな!キュリアがやられたけどなんとか勝てたぜぃ!」

『おー!やっと第2の街に行けるようになったのか。キュリアちゃんがやられたなら今はアインスドットか?』

「おう。喫茶で休憩してるところ」

『それならちょうどいいかもな…なら今から俺達もそっちに向かうわ。ちと待っててくれ、すぐ行くから』


 そう言うとユーキングがコールを切った。

 それから数分後にユーキングは3人のプレイヤーを連れてキャットファイトに入ってきた。


「待たせたな。なぁシウ?この前俺が言ったの覚えてるか?北に行ってみようって話を」

「あー。俺の称号の首狩りの検証だっけ?お前さんの所のクランメンと一緒に言ってみようかって話だろ?覚えてるけど…まさか今からとか言わねーよな?」

「正しくその通り!俺たちは今から北に行く予定にしてたんだよ。どうだ?行かねーか?」

「いやいや、キュリアがデスペナ中だし。それにそっちの3人さんはいいのか?」


 俺が3人を見ながら言うと


「俺は大丈夫ですよ!寧ろ首狩りさんの戦い方見てみたいですしね」

「私も大丈夫でーす。その天使ちゃんが居るなら文句なし!」

「…どっちでもいい…やる事は変わらないし…」


 1人は重装備をして背中には大盾を背負っており、もう1人は白いローブに杖を装備していて魔法使いか僧侶だろう。口数の少なかった少女は腰に2振りの剣を差していた。

「この3人は俺のクランの新メンバーなんだ。レベル上げついでに明後日のイベントの為に各エリアの確認に行く予定にだったんだよ。3人もいいって言ってるから行こうぜ。それにデスペナもどうにかなるぜ?ここにいいアイテムがあるんですがな…どうしやす?お客さん…」


 ユーキングがアイテムボックスから取り出したのは


 女神の涙 レア度6

 一日に1度だけデスペナルティを解除する事が出来る。


「それをくれるのなら凄く嬉しいんだけどなぜそこまでしてくれんだ?」

「とりあえずお前がどれだけ強くなったか見てみたいってのが1つ、それと正直この3人はまだレベルが10だから戦力が欲しい。あとはエリアボス倒したお祝いかな?」

「それなら喜んで貰うわ。なら行くか」




 こうしてユーキング達4人とパーティを組んで北に行く事になった。


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