第5話 初戦闘
<アインスドット>平原フィールド
街の外にある平原に来た俺達。
ここに現れるモンスターは可愛らしい兎さんのみ。可愛い姿をしてるのに飛び蹴りをかましてくるなかなかヤバい兎さんらしいですわよ?
「ここのモンスターなら死ぬことはないだろ。とりあえずここではレベル5までは簡単に上がるから上げとけ」
それなら安心して初戦闘と行きますか。
ユーキング曰く、この兎達はこちらから攻撃を仕掛けなければ襲ってくることは無いパッシブモンスターらしい。
だから遠距離なら戦いやすいだろうと言うが…的での練習とはまた違った緊張感がある。的ばかりだったからなんか生き物を射つのに躊躇いがあるんだよ!
矢も今は30本しかないのに無駄打ち出来ねぇ…でもやるしかないよな。
とりあえず鷹の目を発動。5m先の兎さんにロックオン!
ぴょんぴょんしやがって…止まれよな…
止まった瞬間に狙いを済まして…矢を射つ!
ヒュン…
見事に頭に刺さりますた。なんと1発で命中の一撃で倒してしもうた。
「おぉ。綺麗に刺さったな。鷹の目のおかげか?」
「まぁそうだな。ロックオンしてくれるし。でも射った後に動かれたら避けられるだろうけど」
その通りだった。ロックオンするまではいいのだが、矢を放った後に動かれたら勿論矢は通り過ぎていくのだ。
そして近くにいた他の兎に矢を射るけど今度は外してしまった。攻撃された兎はこちらに向かってくる。
やっべ?!兎さんがこちらに向かってきた!短剣術取ったけど肝心の短剣が今は無い!
それならどーする?!また矢を射つか?もうすぐそこまで来てますやーん!
シウに飛び蹴りを放つトビウサギ。その蹴りを見事に顔面に受けたシウ。
「ぶはっ!何綺麗に食らってんだよ!避けれただろよ!」
ユーキングは腹を抱えながら笑っていた。
「まだ戦闘2回目で矢も外したのにテンパるだろよ!…っと?!また飛び蹴りを?!」
トビウサギの蹴りを今度は躱したシウは矢筒から木の矢を手に取り弓に装填する…ではなく、右手に持ったままウサギに突き刺した。
「打てない距離ならそのまま刺してやんよぉぉぉ!!!」
「Wow…野性的〜まさかの攻撃方法だわ。短剣持ってない代わりに矢を使うとかよく考えたわ」
まだ笑ってやがる…仕方なしなんだよ。刺しても1回では死なないから2本使ってしまったよね!1刺しで矢が1本消えるなんて燃費悪すぎだろ!矢が消耗品扱いだからか。
「矢で…矢だけで攻撃…弓使いなのに弓を使わない…腹痛てぇ…魔法使えばいいのにさ」
爆笑してるクソイケメンにイラつくけど確かに言う通りやわ。
魔法か…言われて思い出したわ。水魔法取ってたわ。
えっと…使える魔法は…
【水魔法】
アクアボール MP5(10)
水の玉を投げる。
【水魔法】
クリエイトウォーター MP5(10)
水を作り出す。
うん、アクアボールしか攻撃ないな。ここで水を作り出しても意味無いもんな。
兎さんに水をぶっかけたらいいのかな?水も滴るいい兎になるのかな?
とりあえずアクアボールを打ってみる。
手のひらを正面に持って行って…
「アクアボール」
すると手のひらから野球ボールサイズの水の玉が出てきて飛んで行った。
これならさっき使えば飛び蹴り喰らわなくてよかったよね…
早く思い出せば…
でも実際にどれぐらい動けるかっての分かってないとさっきみたいな状況に陥った時に対処出来なくなるよな。
ならわざと攻撃を喰らいにいってみるか。ユーキングには笑われそうだけどな。
30分に渡るユーキングの笑い声が平原に響き渡ることになる。
変なステップするなよ!とか、なんでそこでジャンプするんだよ!なんて色々笑われながら言われましたよ!
しゃーないだろ?元々平和主義者なんだから争いごとは嫌いなんだい!
でもユーキングから動き方についてレクチャー受けたからマシな動きになれた。はずだ…そのおかげかわからないがレベルは5まで上がっていた。スキルも上がってることだろう。
「付加のスキルは試さなくていいのか?エンチャントした矢がどーなるのか見てみたいんだけど」
「お前が見たいだけだろよ!まぁやってみるけど」
目標の兎さんは距離…約10m。鷹の目の限界距離だな。
まずは鷹の目でロックオンしてからの…
「
鏃が赤くなった?なんかそんな気がする。
とりあえず弓を構えて…射る!
止まっていたおかげで腹に見事に命中。普通なら一撃では死なないはずなのに光となって消えていった。
「あれ?一撃や。頭なら一撃で倒せるのに腹で?」
「とりあえずログを見てみたらどれだけのダメージ出たか確認できるだろ」
言われて直ぐにログを確認してみると、普段ダメージが10~15に対して、火属性を加えた一撃は23も出ていた。
なかなか優秀だな。MP消費も10か。無駄打ちしなけりゃいいだけだな。
「これが弱点属性ならもっと増えるな。とりあえずは今のところ1人で戦えてるけど…調教持ってるのに兎はテイムしなくていいのか?」
「兎は俺の趣味ではない!バニーガールは好きだがな!」
「…お前の趣味は聞いてないんだが…でも兎も進化すりゃ強くなるらしいぞ?」
「だが断る!!!」
まずは1人で行けるところまで行きたいんだよ。ならなんで調教を取ったのかって?もしかしたらいい出会いがあるかもやん?運命の出会いがあってその時に調教持ってなかったら悔しいやん?だからだよ!
それからも各属性のエンチャントを試してみた。
それぞれの属性で効果が違ったのだ。
火と水はまぁ普通に威力が上がった。風は矢を撃ってから相手に当たるまでの速度が上がった。土は速度は遅くなるが貫通する事が出来た。
そして付加はエンチャントだけじゃなくバフもかけれる。攻撃・防御・素早さ、この3つを30秒だけだが上げることが出来る。
ユーキングから「普段、街に居る時もバフをかけたらレベル上がるの早くなるぞ?その代わり目立つけどな」っていわれた。
人目のつかない所でやりましょうか…極力目立ちたくないからな…
俺達2人は平原から街に戻ってきた。
俺の装備を整える為だ。今の俺の装備じゃ平原より先のエリアに行くには無理だと言うことでまずはNPC…このFLOの世界では『住人』と呼ぶらしいが。
その住人がやっている店に行くことになった。街の中央広場でやっている露店もあるのだが、この露店はプレイヤーが開いているので少し値が張るのだ。
だから最初は住人の店で買う方が安く上がるらしい。
武器屋<アイアンフィスト>
街にある武器屋に俺達は入った。
店の中には様々な武器が飾られており、壁だけでなく樽の中に無造作に剣なども入っていた。
そして俺はカウンターで座りながらこちらを見ているドワーフであろう店の人に声を掛けたのだ。
「たのもーー!!俺に弓をくだせぇ!」
「お…おぅ。そんな声を挙げなくても聞こえてるからいいんだが。弓だったな、ちょっと待ってな」
そう言うと店の主は座っていた場所の後ろにあるドアを開けて入っていった。
「お前はいきなり何を言ってるんだよ…普通なら商品を見せてくれだろ…言う言葉は」
「んなこと俺には通用しないのだよ!それより俺の所持金1万Gしかないけど全部装備揃うのか?」
「最初の金だけである程度は揃う筈だぞ。それに金属製の鎧とか装備しないだろ?なら安く出来るはずだし」
すると店の主が戻ってきて俺に声を掛けてきた。
「1万Gで全部揃えたらいいのか?それならワシが見繕って来てやろうか?弓を使うってんなら弓使いだな?なら軽装がいいな。防具達も持ってきてやろう」
「あっ!おやっさん!なんか短剣もついでにお願いしやす!」
するとおやっさんはドアに向かっていたが右手だけを上げて『はいはい、わかったよ』的な感じで右手を上げたのだ。
そして直ぐに戻ってきてそれぞれの装備を見せてくれた。
まずは弓だ。
ショートボウとロングボウの2つ。ショートボウは短弓、ロングボウは長弓。
ショートボウは弦を引くのにそこまで力が要らないけど攻撃力も低い。飛距離もロングボウより短いけど大きくはないので小回りがきく。
ロングボウは弦を引くのに力がいる分、攻撃力も飛距離も中々のものだ。しかし、連射もしにくければ小回りもききそうにない。それに装備をするには必要なSTRが10は要るんだ…俺には装備出来へん…
レベルが上がってるからポイントを振ればいいけど短弓で別にいいかな。
そして防具達は上半身はモンスターの皮を使っているレザーアーマ、そして一応ガード出来るようにと篭手。下半身も皮を使った防具があるのだが予算的にきついと言われて初期のズボンのままだ。でも一応は脛当てを用意してもらっていた。後は靴だな。
短剣は何種類か出してくれた。どこにでもある様なナイフからサバイバルナイフにダガー、それにククリやカランビットナイフまで出てきた。
「短剣だけで色々種類があるぅ…お値段しだいぃ…」
そう、俺の手持ちは最初に貰ってある1万Gしかないんだよ!喫茶店での支払いはユーキングがしてくれたから良いけど。
「お前さんはどの短剣がいいんじゃ?」
俺はそれぞれを見てみたがちゃんと今のステで装備出来るのはナイフ・サバイバルナイフ・ダガーの3本。ククリはSTRが足りてなかった。カランビットナイフもあるけど使い方がイマイチ分からんから却下。
「使うならダガーが良いかな。腰に装備してれば使いやすそうだし」
「それなら防具とダガーじゃな。値段は1万でいいぞ。弓を使うなら矢も必要じゃろ?この矢筒も持っていきな、これはサービスしといてやるよ」
なんですと?!イマイチ相場がわからんけど…
ユーキングをチラッと見るとユーキングも少し驚いていた。
「1万は越してるけどいいのか?ダガーだけでも4000Gはしてるぞ?防具も合わせたら越してる気がするんだが」
そうなの?おやっさんいいの?
「なーに!こーやってサービスしといたらまた来てくれるかも知れんじゃろ?だからだよ!がはは」
太っ腹なおやっさんだ…修理とか必要になったら必ず来るからね!それまで待っててね!
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