26.臭い臭〜い、芋虫さんの泥

「ママ、キレイにしてから、もってこなかった?」


「全部そうだったから、まとめて家で綺麗にしよう思って忘れていたのよ」


「おそとで、キレイのほうがいい」


「そうね。次からは気をつけるわ。あっ、それと。ちょうどお外はあの泥が多い時だから気をつけて。もしお家の近くにあったら、パパかママに教えてね」


「うん。くしゃいのダメダメだもんね」


 何で僕とママが臭い臭い言っているか。それは特別な泥が、草と花についていたからです。


 僕、袋を開けた時、あんまり臭くてビックリ。だからすぐに逃げたんだよ。それでママは最初息を止めて、草と花を取り出して。袋を開けたままだと、お部屋の中が臭くて大変なことになっちゃうから。


 手に持っている草と花がとっても臭かったけど我慢して、袋をしっかりと縛りました。

 そして臭い草と花を持って別の部屋に。そのお部屋にはその臭い匂いをとる、特別なお水が置いてあって。それで草と花を洗って、風魔法で乾かして戻って来ました。


 泥はもちろん普通の泥じゃないよ。グーちゃんとグリちゃんが作ってくれた泥とぜんぜん違うの。ある虫さんには大切な泥なんだけど、僕達や鼻が人よりもとっても良い魔獣さん達には、ちょっと。ううん、とっても迷惑な泥なんだ。


 お外が暖かくなってくると、とっても可愛い、僕の指先くらいの芋虫さんが、土の中から出ています。寒い季節は土の中で眠っているんだ。それで暖かくなって来たら外の出て来て、いっぱいご飯を食べた後、とっても可愛い蝶々になるの。


 でも、その芋虫さんのご飯が問題なんだ。その芋虫さんのご飯は特別で、葉っぱも食べるんだけど、泥も食べるんだ。

 泥の中には芋虫さんが蝶になるために大切な栄養がいっぱいで。その泥を食べると、とっても大きなとっても可愛い蝶々に。


 そしてその泥を作る方法は、泥と、どこからか持ってきた魔獣さんの食べ残しの腐ったお肉に魚に果物の残り。後最後に芋虫さんの自分のフン!! 泥以外全部臭い物ばっかり。


 芋虫さんは凄いんだよ。僕と子タート達が、ちょっときゅうきゅうに遊べるくらいの範囲に、この臭い物をいっぱい集めてくるの。僕の指先くらいの大きさの芋虫さんのなのにだよ。


 それで集めて来たやつを全部混ぜて、最後に自分のフンを混ぜます。そうすると芋虫さんのフンが色々な物を溶かして、1日経つと泥に変わります。芋虫さんのフンが特別だから、泥に変わるんだって。


 その泥がとっても、とぉ~ても臭いんだ。パパやママ、働いている人達は、時々ご飯を作る時に出た生ゴミや、芋虫さんと同じ魔獣さん達の食べ残しを使って、キレイに乾燥させて、肥料を作ります。


 でも臭いものから作った物でも、肥料になった時には臭いのが全部消えていて。畑に前いてもぜんぜん平気です。

 芋虫さんと途中まで同じ感じなのに、芋虫さんの方は鼻がおかしくなっちゃうくらい臭いんだよ。これも芋虫さんの特別なフンのせいなんだって。


 しかもこの泥が、洋服についたり手に付いたりしたら。ママがさっき使った特別な水を使わないと、1週間くらい匂いが取れなくなっちゃんだ。ママはそれで大切なお洋服を何枚もダメにしたって。


 嫌がっているのは僕達だけじゃありません。鼻がとっても良い魔獣さん達は、僕達よりももっともっと、この泥の匂いがダメダメで。とっても怖い危険な魔獣さんも、全部じゃないけど避けて通るんだよ。


 だから冒険者さんとか商人さんは、危ない場所へ行ったり通ったりする時は、わざとこの匂いをさせて進むの。自分んも臭くて大変だけど。


 そんなみんなんがダメダメな泥を、芋虫さんは大好きだから、どんどん食べていって。どんどん栄養をとって。そして綺麗な蝶々に。


 でも、芋虫さん、蝶々になるのは良いんだけど、くさ~い泥、そのままにして飛んで行っちゃうんだ。

 そかも蝶になるまで、ずっと食べて、ずっと泥を作っているから、泥はあんまり減っていなくて。


 何ヶ月も自然に匂いが消えるのを待つか、ママが使った特別な水を、泥にどんどん混ぜていって、どんどん薄くしていくしかないの。


 だから今の季節は、足元に気をつけて歩かないとダメ。あっちにもこっちにも、本当にいっぱいあるんだ。


 しかも泥同士の匂いが混ざっちゃうと、どこに泥があるかハッキリ分からなくなって。間違った方へ進んじゃって、泥の中の入っちゃうことも。そんなことになったら大変。だからしっかり確認しないといけないんだ。


「ほんとに、も、だいじょぶ?」


 僕は1歩1歩、そっとそっとママに近づきます。


「大丈夫よ、しっかり洗ったから。さぁ、この中からさっき頼んだ、草2種類とお花を探してくれるかしら。ママ、まとめて慌てて掴んじゃったから、他の草や花も混ざっているから」


 僕はママのお話しを聞きながら、クンクン、フンフン、草と花の匂いを嗅ぎます。ほんとにほんと~に大丈夫?


「クンクン、フンフン」


「ね、大丈夫でしょう?」


 なんかまだ臭い気がする。気のせい?


「いやねぇ、そんな顔しちゃって。そんな顔していたら、可愛い顔がその変な顔から戻らなくなっちゃうわよ」


 ん? 何?


「さぁ、分けてね。ママは準備の続きをやるわ」


 ママがテーブルに草と花を置いて、僕を椅子に乗せてくれて、僕は椅子の上に立ちます。椅子の周りには僕が落ちても大丈夫なように、クッションが引いてあるから、だから立っても大丈夫。


「これはちがうくさ、これはつかうくさ。クンクン、くさくない」


「草と花を探すのに、匂いチェックまで入っちゃったわね。それにしても、あの袋はあの泥用の袋で、外に臭いが出ないようになっているけれど、洗うのが難しいのよね。そうなると使い捨てになるから、ストック分も含め、今度買いに行かないと」


「ママ、これくさい!!」


「え? まさかそんな……、本当ね」


「ママ、これダメ!!」

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