23.誰の声? 気のせい?

 誰の声? 僕とママ以外に誰かいた? そう思いながら後ろを見た僕。でも僕の後ろには誰もいませんでした。あれぇ? 気のせいかなぁ? 誰かお話ししてなかったぁ?


『ヒヒィ? ヒヒィ』


「あ、ごめんね。すぐにあげるねぇ」


 僕は慌てて、次にご飯を待ってくれているシマウの方を見ます。今のは待っててくれたシマウが、どうしたの? お芋ちょうだい、って言ったと思うんだ。僕はすぐにお芋を持ってシマウにあげます。


「おいしいですかぁ」


『ヒヒィー!!』


 その後、シマウ全員にご飯をあげて。でもママの治療はまだ終わっていなかったから、もう1回ご飯をあげようと思った僕。ママにご飯をあげて良いか聞きました。ご飯のあげ過ぎはパパもママもダメだって。


「良いわよ! でももう1回だけにしてね。自分でご飯を持ってこれる?」


「うん! だいじょぶ!!」


 ママが良いって言ったから、僕はお芋を持ってこようと思って、籠を持ち上げました。持ち上げたけど、半分地面に擦っています。籠に物が入っていても、入っていなくても、大きな籠だからどうしても地面に擦っちゃうんだ。


 ズルズル引っ張って行こうとする僕。でも急に籠が軽くなって。見たら1番大きなシマウがまた籠を咥えてくれていました。


「ありがと!!」


『ヒヒィー!!』


 籠を持ってもらって、お芋が置いてある場所へ。他のシマウもみんなついてきました。お芋が入っている箱にはお芋がいっぱい。でもママに言われた通り、シマウの分だけお芋を籠の中に入れます。


 あのね、みんなが手伝ってくれたんだ。僕が大きなお芋を籠の中に入れたら、みんながそれぞれお芋を籠の中に入れてくれて。僕が入れた大きなお芋を、1番大きなシマウが食べれば数はちょうどに。みんなありがとう。


 お芋の準備ができたから、さっきご飯をあげていた場所に戻ります。戻る時も1番大きなシマウと、別のシマウが籠を咥えて運んでくれたよ。それからすぐにまた1列に並ぶシマウ達。僕はまた1番先頭のシマウからお芋をあげていきます。


 そして半分くらいのシマウにお芋をあげた時でした。


『ママ……、ママ……』


『今1番のお兄ちゃんが、お水を探してくれてるからね。それで体を綺麗にしたら……』


 あれ? また聞こえた? またさっきの声が聞こえて、僕はすぐに後ろを振り向きました。でもまたまた一緒。後ろには誰もいなかったんだ。


「あれぇ? やっぱりちがう?」


『ヒヒィ? ヒヒィィィ、ヒヒィ?』


「あのね、こえがきこえたきがするの。でも、だれもいないんだぁ」


 今のは1番大きなシマウが、どうしたんだ? さっきから後ろを向いて、何かあるのか? って言ったと思ったの。だから声のことをお話しして。


『ヒヒィ? ヒヒィィィ、ヒヒィ』


 今のは多分、声がする? 誰かがいるような気配はしないが。って。それからすぐに1番大きなシマウが、声が聞こえた方の柵ギリギリまで歩いて行って、静かにじっと向こうを見つめました。


 他の今まで、どうしたの? 何かあるの? って騒いでいたシマウ達も、1番大きなシマウが前を見つめたら静かのなったよ。

 きっと声がするか確認してくれてるんだね。それで他のシマウは1番大きなシマウがちゃんと声が聞こえるようの、静かにしてくれたの。


 少しして1番大きいシマウが僕達の所へ戻って来ました。それから首を横の振って。声、聞こえなかったみたい。う~ん、やっぱり僕の気のせい?


『ヒヒィ? ヒヒィィィ』


 今のはね、どんな声だった? 詳しく教えろって。だからさっきよりも詳しくお話しした僕。それで話しが終わると、今度は他のシマウ達が聞きに行ってくれて。でも帰って来たみんなは、やっぱり首を横の振りました。


 やっぱり僕の気のせいなのかな? お話し、とっても小さな声で、最後の方は分からなくなっちゃうくらいで。

 でもお話しを続けてくれていたら、最後は聞こえなくても、他の声は聞こえるよね。それにみんなは僕よりも、とっても耳良いんだから間違えないし。


 あのね、魔獣さんのことが書いてある絵本に、魔獣さん達はみんな、とってもとっても耳が良いって書いてあったんだ。人の聞けない音が分かっちゃうの。パパとママも同じことを言っていたし。そんな耳の良い魔獣さん達が間違うわけないもん。


「ぼくの、まちがい。ごめんなさい。ごはんとめちゃった、すぐにごはんあげるね。ならんでださい!!」


 僕がそう言ったら、さっき途中まで並んでいた順番のまま、みんなが1列に並んでくれました。うん、最初はシマシマ模様が少し濃いシマウで次が……。


 そうして今度はちゃんと最後までご飯をあげた僕。ご飯をあげ終わるとちょうどママの治療が終わって、ママが僕達の所に。


「終わったわよ」


「けが、なおったぁ?」


「後何回か治療すれば、完璧の治るわよ」


「そか!!」


 良かった。後少しでも治るって。


「さぁ、ママが来たから背中の乗せててもらって良いわよ」


「やった!!」


『ヒヒィーッ!!』


 1番大きなシマウが僕の洋服を咥えて、僕を自分の背中へ放り投げようとします。


「待って待って!! 私が乗せるから!! もう、どうしてみんな、放り投げて乗せようとするのよ」


 あのね、シマウだけじゃなくて、他の背中に乗せてくれる魔獣さん達も、みんな僕を放り投げて背中に乗せてくれるんだ。

 ちゃんとピッタリに乗せてくれるのに、パパもママも危ないからダメだって。それでみんなやらなくなったけど時々放り投げて、パパ達の怒られるんだ。面白いのにね。


 1番大きなシマウの乗って、柵ギリギリを歩いていきます。他のシマウ達も僕達の後ろからぞろぞろ1列でついて来てるよ。


「これもおかしいわよね。どうしてアルフがいると、誰だろうが列をなすのかしら」


 そうして歩いてもらって、あの場所に通りかかりました。さっきの声の所ね。それで耳を澄ませてみたんだけど、声は聞こえなかったよ。やっぱり僕の気のせいだったのかなぁ?

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