22.お掃除はお休み、シマウの所へ

「じゃあ、行ってくる」


「お昼に帰ってくるのよね?」


「ああ、そのつもりだ。今日はアイスホースの方へ行く予定だからな。お昼だけ食べに戻ってくるよ」


「パパ、きょうはぼく、どこもいかない?」


「そうだな、今日はアルフは、お掃除がお休みの日だからな」


「みんあと、あそぶのだめ?」


「今日はママもお仕事があるからな。デージーが来てくれるから、家で遊んでいてくれ」


「あ、それだけれど。デージー、具合が悪いみたいで、今日お休みするって、さっき連絡があったのよ。だからアルフは私が連れていくわ」


「そうなのか? 大丈夫なのか?」


「ええ、ちょっとした風邪だと思うから、今日治療院へ行ってくるって」


「なら良いが。いつも色々やってくれるからな。少し休みを取ってもらうか」


「そうね。後で話しておくわ。アルフ、今日はママと一緒に、シマウの診療に行きましょう。元気が良い子とは遊んでいて良いから」


「うん!!」


「お~い、隊長!!」


 僕の今日の予定が決まった時でした。外からパパを呼ぶオリドールおじさんの声が聞こえたよ。オルドールさんは、パパのことを隊長って呼ぶんだよ。何でだろうね? 


「分かった、今行く!! それじゃあ昼に」


 パパにバイバイしてパパはお仕事に。僕はママが準備が終わるまで玄関で待っていて、ちょうどママの準備が終わった時に、迎えの荷馬車が到着しました。今日は同じ方角に行く、エルビンさんの荷馬車に乗せてもらいます。


「奥様、坊っちゃま、おはようございます」


「おはよございます!!」


「おはよう、さぁ、アルフ行きましょう」


 今日のままのお仕事は、怪我をしている魔獣さんの怪我の治療です。とっても酷い怪我や、とっても酷い病気の魔獣は、別のお医者さんがお家に来て治してくれるんだ。凄い治す魔法を使えるんだって。

 

 それでほとんどの魔獣さんはすぐに治っちゃいます。でもなかなか治らない魔獣さんも時々いて、そういう魔獣さん達は毎日先生が来て、毎日治療してくれるんだよ。


 今日ママが治す魔獣さんは、その凄い先生じゃなくて、ママでも治せる魔獣さんなんだ。ママはね中位の治せる魔法を使えて、凄い治す魔法もちょっとだけ使えるの。だから今日はママが治療です。


 治してもらう魔獣さんはシマウです。シマウマさんに似ている魔獣さんで。地球のシマウマさんは縦とか横に白黒シマシマ模様だけど、シマウは全部横にシマシマ模様なの。

 それから小さな角が1本頭に生えていて、いつもその角がパチパチしてるんだよ。雷の魔法が得意なんだ。


 足を骨折したシマウがお家に来て、骨折はもう治っているんだけど、まだ少し痛いみたいみたいなんだ。


「ママ、ごはんあげてい?」


「ええ、良いわよ。あっ、でも乗るのは、ママのお仕事が終わってからにしてね。この前みたいに勝手に乗っちゃダメよ」


「うん!」

 

 でもこの前は、僕が勝手に乗ったんじゃないんだよ? 僕がみんなにご飯をあげていたら、1番大きなシマウが、僕の洋服の首の所を噛んで、ヒョイッ! って僕のことを上に飛ばしたんだ。


 それで僕はそのまま、1番大きなシマウの背中の上に着地。ちゃんとお腹から着してね、そのままシマウが柵の中を1周してくれたの。だから僕が乗りたいって言ったんじゃないし、勝手に乗ったんじゃないんだよ?


「では、2時間後くらいにお迎えに」


「ええ、頼むわね」


 エルビンさんと別れて、すぐに僕とママはシマウの小屋に。まずはシマウを小屋から広い柵の中へ出してあげるところから始まります。


「おはよございます!!」


『『『ヒヒィー!!』』』


 みんながおはようをしてくれます。シマウの鳴き声はヒヒィーなんだ。えと、色々な種類のお馬さん魔獣がいるんだけど。そのお馬さん達の声ととっても似ています。

 お馬さん魔獣達は『ヒヒーンッ!!』で、シマウは『ヒヒィー!!』なの。ね、似てるでしょう?


 シマウの小屋は、パパじゃなくて他の人が一昨日綺麗にしてくれたからとっても綺麗。藁もいっぱい敷いてあって、その藁が1番敷いてある場所に、足の痛いシマウが寝そべっていました。


「じゃあアルフは、この餌をあげながら待っていてね。自分で運べる?」


「うん!! ひっぱる!!」


「あなたいつも引っ張るね。まぁ、しょうがないのだけれど」


 ママに餌の入っている籠をもらって、ズルズル引きずりながら、柵の方へ出て行ったシマウ達の所に。あっ! もう並んでる! 早く行かなくちゃ!!

 魔獣園の魔獣さんはご飯をあげる時、ほとんどの魔獣さん達が並んでくれるの。シマウ達もそうなんだ。


「みんな、まってぇ」


 一生懸命に籠を引っ張る僕。と、急に籠が軽くなりました。軽くなったっていうか、何も感じなくなったっていうか。後ろを見たら1番大きなシマウが、籠の端っこを噛んで籠を持ってくれてたんだ。


『ヒヒィ!』


「ありがと!!」


 多分、持ってやるから早く行けって言ったんだよ。僕は1番大きなシマウのちょっと前を歩きながら、並んでくれている先頭のシマウの所に。今日のご飯はさつまいもににているお芋です。


「1ばん、どぞ!!」


 僕がお芋を持って前に出すと、先頭のシマウがゆっくり食べ始めます。食べ終わったら次のシマウに交代。みんなゆっくり食べるけど、あんまり遅くは食べません。


 前にね、あんまり遅く食べるシマウがいて、途中で喧嘩になっちゃったんだ。それでそのシマウがみんなにとっても叱られて。それからはみんな同じくらいの時間で食べるようになったの。


「おいし?」


『ヒヒィー!!』


 みんな足の痛い子以外、元気いっぱい。その後もどんどん僕はシマウにご飯をあげて行きます。でもその途中でした。


『……ママ』


『大丈夫、お兄ちゃんがいるからね』


 そんな声が聞こえた気がして、僕は後ろを振り返りました。

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