18.無事に贈り物を贈れた今回は我々の勝利だ(グーちゃん視点)
夜中、魔獣園の魔獣達が話しをし始め、魔獣園の中は少しだが騒がしくなった。しかし皆アルフを起こさないようにと、なるべく小さな声で話している。時々大きな鳴き声が聞こえる事もあるが。自然では当たり前の声であって、そこまで問題ではない。
以前のように、その大きな声での話し合いが続き、アルフが寝られなくなるのは問題だが。あのときは本当に可哀想なことをした。寝ているアルフの妨害をするなど。
だが、あれの原因は、向こうで暮らしている、我らと同じ時期にここへ来た、コケコ達のボスのせいだ。奴が我らに自慢話をしただけなのに、ぎゃあぎゃあと文句を言い始め、騒ぎになったのだから、我に責任はない。そう、ないのだ。
我らとアルフとの付き合いも、今年で3年目。ついにアルフは今日から、エドガーと共に、我らの世話をしに来てくれた。これで今までは遊びに来ていただけのアルフと、もっと長く接することができるようになるだろう。
この魔獣園にいる魔獣達にとって、いや周りに住んでいる魔獣達にとって、アルフは特別な存在だ。実はアルフは、両親も誰も気づいてはいないが、神から送られてきた神の愛し子なのだ。こんな素晴らしい存在が、我々の住む場所で誕生するなど。
神に愛される存在というだけあって、アルフが生まれた瞬間、我らはすぐにそれに気づき、そしてアルフから溢れ出る、温かく全てを包み、我らを癒してくれるような力に、我々はすぐに惹かれることに。
それからは我らは皆で話し合いをし、どんな脅威からもアルフを守っていこうと、どんな脅威からも絶対に守ると誓い。そう誓ってから3年が過ぎたのだった。
もちろん我らのようにアルフを好きになり、守っていこうと思う魔獣ばかりではない。神の愛し子など関係なく、人間は人間として、敵だと獲物だと考えている魔獣達が時々街を襲ってきては、街の人々を襲う同じ感覚でアルフを狙ってくる。
そして魔獣だけではなく、もしアルフが神の愛し子だと、人々にバレた場合は。人間や獣人の中には、神の愛子のアルフを攫い、金儲けをしようとする奴らが、必ず出てくるはずで。そうなったら場合も、我らは全力でアルフを守ると誓っている。
まったく、あれほどまでに、とても気持ちがいい力で、我々を包んでくれているというのに、そんなアルフを狙うなど。
と、ここまでは全員で話し合い決めたことだが、他のことでは、魔獣達との争いとなっている。が、別に悪いことで争っている訳ではない。
ここまでスクスクと育ってくれたアルフ。このまま更にスクスクと成長してくれれば、いつかアルフも魔法を使える日が来るわけで。
これもまだ両親達は知らないようだが、人間よりも力を持っている我らなら、アルフのまだ表に出ていない力を知ることができ。そう、我らは鑑定の能力で、アフルが使えるようになる魔法を知っているのだ。
神の愛子なだけあって、さまざまな魔法が将来的に使えるようになるアルフ。その魔法の中に魔獣契約があるのだ。
魔獣契約……。心を通わせた人と魔獣が契約することで、更にその契約した人間と深く繋がることができるようになる魔法。
あんなに可愛い可愛い、とっても可愛い……。ゴホンッ、素晴らしいアルフと、いつか契約ができる。それを知った我らは、アルフが魔獣契約できるようになったら、1番に契約してもらおうと、ずっとアルフに自分をアピールしている。
これが我らが争っている理由なのだ。なにしろここはライバルだらけだからな。しかもここだけではない。ここから出て行って、アルフを守るために近場で待機している者達も、そのチャンスを狙っている。
だから今日も、少しでもアルフにアピールできるよう色々頑張った。シャーナが戻ってこずにだらけていたアルフ達のために、ただの泥ではなく、少し魔力を上げて、サラサラな砂で泥を作り、触り心地のいい泥を作った。
その後はいつもはやらない、細かい魔法の操作をして、水をバケツに入れてやり。泥が勿体無いというアルフ達に、泥でいつでも遊べるように、頑丈な小屋を作った。ちょっと山型だが問題ないだろう。そして最後は、細心の注意を払いながら、風魔法で遊ばせてやり。
あの者達に負けるわけにはいかないからな。そう今日アルフが接触している、コケコ達とウササ達と子タート達だ。
コケコの方は朝から騒がしくしていたから、すぐに何をしているのかは分かり、アルフに掃除でアピールしていることは分かっていた。
そしてウササの方でも、小鳥達に偵察を頼み、何をしていたかは把握できていて。贈り物がないことは分かっていたからな。だから我らは泥や小屋、魔法の贈り物をした。
そのことを今、夜中に話し合いを始めた皆に伝えてやったのだ。我々はこれだけの贈り物をし、アルフがとても喜んでくれたと。するとすぐに文句を言ってきたのは、あのコケコ達のボスだった。
『コッケー!! コケコー!!』
みんな同じように贈り物をすべきだと? そんなこと関係あるか。
『コケコ、コケコケ、コケコ』
柵の中になかなかれてもらえないお前達よりも、直接接触できる時間が長い我の方が、これから更に絆を深められるだと。ふん、それだってもう少しアルフが自由に動けるようになれば、問題などない。
と、2匹で話しをしているときだった。我々の話に入ってきた者が。夜で皆が静かに話しているおかげで、奴の声がしっかりと聞こえたのだ。昼間は小鳥達に調べさせていたが。
「きゅう、きゅ!! きゅうぅぅぅ」
『何だと!! そんな事を!! それは報告にないぞ、どういう事だ!!』
「きゅうぅぅぃ! きゅ!! きゅきゅきゅっ!!」
抱っこまでは分かる。だが抱きしめられて、撫でてもらっただと!?
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