17.アルフのための会議(親分コケコ視点)

 夜も更け、おそらく我らのアフルは、すでに深い眠りのついているだろう。この時間になると、ここ魔獣園の魔獣達は、アルフを起こさないよう、細心の注意を払い話しをし始める。我れのアルフが眠っているんだぞ、我らの話す声で起こすなど、あってはならない。


『では、これより、今日の反省点を話し合う』


『『『はい!! 親分!!』』』


『まず、アルフの父親、エドガーについてだが、相変わらず我らへの挨拶がなっていない。しかもアフルに注意されても、群れのトップである我ではなく、別のコケコに挨拶をしようとは。これについては、更にエドガーがしっかりと理解するまで、教えていかなければいけない』


『『『その通りです!!』』』


 まったくアルフの父親エドガーは、長い間我らの世話をしているというのに、我らのことを理解していない。魔獣園を経営してどれだけ経っているのか。

 

 もちろんエドガーにも、彼の妻ジャーナにも感謝はしている。いや、感謝しきれないほどだ。人間は我々魔獣と敵対することが多い。それは人間にとって、完璧に敵である魔獣だけではなく。無害な魔獣にまで敵意を向けてきて。


 そうした人間達のせいで、どれだけの魔獣達が傷ついてきたか。そしてそんな傷ついた我々が、自然の中で生きていくのは難しく。我も同じような状況だったのだが。

 エドガーはそこそこ危険な魔獣とされている魔獣でも、人に危害を加えないと分かれば、この魔獣園で受け入れ、我々の怪我が癒えるまで、しっかりと怪我の治療をしてくれて。


 今までにどれだけの魔獣が、自然へと帰ることができただろうか。だからこの事に関しては、この魔獣園にいる魔獣達、そして旅立っていった魔獣達全員がとても感謝している。

 

 だが、我らには我らの、それぞれの魔獣には魔獣の、生活というものがあるのだ。我らコケコは、力のある者が群れのボスとなり、他のコケコ達をまとめて、群れの中で揉め事が起こらぬよう、しっかりと群れをまとめる。

 もし揉め事が起これば、その揉め事を起こした者達の話しを聞き、しっかりとその問題を解決する。


 問題ばかりが起きる群れは、ボスが無能とされてその座を追われる事も。我がこの群れのボスになってからは、ボスになりたての頃の数回の揉め事以来、大きな揉め事は起こっていない。

 勿論後からここへ来たコケコ達にも、しっかりと我のことを分からせて。しっかりとこの群れの規律を守ってもらっている。


 そんな我に対し、エドガーの我に対する挨拶といったら。大体こんなに魔獣達と関わっているのに、どうして我らの群れのことを理解できないのか。

 毎日ではないが、エドガーは我々のところに来て、我らの小屋の掃除を。その時に我がボスであると分かるよう、何回か下の者に、我に挨拶をしているところを見せたのだが。


 エドガーにはそれが理解できないのだ。何でみんな並んで鳴いているんだ? それで終わりなのだ。挙句ボスの我に対して、あの軽い挨拶だ。せめて挨拶はしっかりするものだろう。


 それに比べてアルフは。しっかりと我らを観察し、我らの順位を理解して。今日、初めての掃除をしてくれるため、小屋に入って来たが。きちんと最初に、しっかりと挨拶してくれた。

 何故、子供が我々のことを理解できるのに大人ができない。まったく、エドガーにはこらからも指導が必要だ。


『よし、次だが。今回のアルフの掃除。ゴミの分別はきちんとできていただろうか? 皆から見てどうだった?』


『エドガーが散らかして、台無しになりました!!』


『はぁ、そちらに関しては、挨拶同様これからも指導を続ける』


『藁が少し取りにくかったみたいです。平な方が集めやすいかと思いましたが、平過ぎて塵取りで取る時、藁同士がくっ付き、ビロ~ンと繋がってしまって。そのせいで取りにくそうに。もう少ししっかりと集めた方が良いかもしれません!!』


『分かった。藁班はその辺を考え、次回アルフが掃除しに来たときは、気をつけて集めてくれ』


『餌の残りも、もう少し集めた方が良いかもそれません! ポロポロと溢れてしまい、取りにくそうにしていました!!』


『分かった、そちらもそれにで進めてくれ』


 アルフの初めての掃除。アルフはどうだっただろうか? 嫌になっていなければ良いのだが。次回も来てくれた時のために、しっかりと話し合っておかなければ。


 と、話し合っている時だった。向こうも方から『グギャア』という鳴き声が聞こえ。あの声は我と同じくらい、この魔獣園で暮らしている、我にとっては迷惑な魔獣の声だ。何だあの嬉しそうな声は。


 我はこの魔獣園にいる魔獣の中で、かなりの古株だ。我が来る前にすでにこの魔獣園にいて、まだここに残っている魔獣は5匹ほど。我と同時期にここへ来て、残っている者が6匹ほどいる。


 他にもなかなかに古い者達はいるが。アルフが生まれてから、ここへ残る魔獣が増えてしまい。そういう魔獣達は我ら古株が、自然へと帰る者達を選び話し合いの後、自然へ帰ってもらっている。


 だがその帰ったら者達も近くに留まり、アルフに何かがあった場合、すぐに動けるようにと、待機してもらっているため。最近は近隣に住んでいる魔獣達が、この魔獣園の出の者だ。


『グギャア、グギャアァァァ』


『グワァ、グワアァァァ』


『何だと!!』


 今奴は何と言った? アルフに贈り物をして喜ばれただと!!


『コッコ、コケーッ!!』


 我はすぐに奴に言う。そんな嘘、すぐにバレるぞ、と。だが奴の答えは。言ってろ、我らは今日、何回アルフに喜ばれたことか、と言ってきたのだ。奴らめ、アルフに何を贈った!?

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