4.親分コケコにご挨拶、みんなにご挨拶

「ねぇ、パパ」


「何だ? そこでもう少し待っていてくれ」


「あのね、コケコはパパがごあいさつしたら、こげきしない」


「は? 何だって?」


 パパが板をかまえながら聞いてきました。


「パパ、ごあいさつしないから、みんなおこってこげき」


「ご挨拶?」


 パパは1度板を下ろして僕の所へ。それでどういうことかって聞いてきました。


「パパはご挨拶してるぞ。みんなおはよう!! ってな。おはようはご挨拶だろう?」


「そのごあいさつじゃダメなの。ちゃんとごあいさつ。あはよございますって」


「ちゃんと? アルフが何を言っているのか分からないが、おはよう! じゃだめなのか? 分かった、やってみよう」


 そう言ってまた板を構えるパパ。さっきみたいにそっと入って行って止まって、コケコ達もまた止まって。


「おはようございます!!」


 元気よく言ったパパ。ああ、違うよパパ。それじゃあダメなの。あ~あ、またパパ、攻撃されちゃった。あのね、元気欲だけじゃなくて、ちゃんと親分コケコに、しっかりとご挨拶なんだよ。


「いててて。アルフ、やっぱりダメみたいだ。今ご飯だけ先にやるから、ウササの方へ行こう」


 もう、ご挨拶すれば大丈夫だよ。それからせっかく集めておいてくれたゴミを散らかさなければ、その後も攻撃されないはずだし。


「パパ、ぼくごあいさつい? はいってもい?」


「それはちょっとダメだな。アルフが今の攻撃をされたら大変だからな。怪我したくないだろう?」


 頬をさすりながら戻ってきたパパに聞いてみたけどダメだって。でも、本当にご挨拶すれば大丈夫なはずなんだよ。

 僕、いつも美味しい卵をくれるみんなにありがとうもしたいし、あろがとうのお掃除もしたい。


「パパといっしょ、ダメ? すぐににげるの。パパ、にげるのはやい」


「逃げるの早いって、なんかそれはそれでちょっとな言い方だな。まるで俺がいつも逃げていて、逃げ足が早い、弱い男みたいじゃないか」


「ねぇ、パパ。ダメぇ?」


 僕はパパを見上げます。


「くっ、どうにも俺はアルフのその顔に弱い。分かった分かった、でも危ないと思ったら、挨拶前でも逃げるぞ。はぁ、後でママにこれがバレたら、パパはとっても怒られるんだからな」


 やった!! パパが挨拶して良いって。パパが板を持ち上げて、僕はパパの後ろに。それからまず入り口の所に立って、コケコ達の様子を見ます。もしかしたら最初から攻撃されちゃうかもそれないからって。大丈夫なのに。


「今のところ、大丈夫か」


 ね、大丈夫でしょう。


「ん? 何だ?」


 パパの言葉に僕はパパの後ろから顔を出してみます。そうしたらさっきまではパパを攻撃しようとして、みんなが集まっていたんだけど。今は右と左、両方に分かれていて、真ん中が開いていました。


「何でみんな端によったんだ? まぁ、良いか。これならアルフも近づけそうだ。でも警戒はしておかないと」


 そっとそっと1歩ずつ、僕は初めてしっかりとコケコの小屋の中に入りました。今まだは小屋の外から種を入れたり、パパ達が持ってきてくれた籠から卵を出したりしていたから、中に入ったことなかったの。


「よし、ゆっくり進むぞ。ゆっくりだからな」


「うん!!」


 それからみんなが開けてくれた道を、少しずつ進んだ僕とパパ。それで真ん中まで来た時パパが止まって、みんなに挨拶しろって。


 え? ここで? リ親分コケコは1番奧の所に座ってるのに? ここからのご挨拶じゃ、親分コケコは怒っちゃうよ。

 う~ん、みんな避けてくれてるし。僕だけ親分コケコの所に行っても良いかな? 僕はパパの後ろから出て、親分コケコの方に歩き始めます。


「あ、おい!! アルフ!? 俺の後ろから出るんじゃない!! 危ないから戻ってきなさい!! な、何だお前達! そこをを退いてくれ!!


 パパが慌てて、僕の方へ来ようとしました。そうしたら今まで端に寄ってくれていたコケコ達が、パパの周りにズササッ!! って集まってきて、パパを囲んじゃったんだ。それにみんな攻撃の格好をしていて。パパはすぐに動けなくなっちゃいました。


 パパ、僕ご挨拶してくから待っててね。動いたら攻撃されちゃうよ。すぐに僕は親分コケコの所へ。ちゃんとお掃除してくれてたゴミを散らかさないように、そっとそっと歩いたよ。


「えと、はじめまして!!」


 うん、今まで何回も小屋の外に来ていて、みんなのことを知っているけど。この小屋の中で会うのは初めてだから、初めましてって言ったの。


「アルフです!! おはようございます!!」


 僕はブンッ!! って頭を下げて、しっかり親分コケコにご挨拶しました。それでお辞儀をしたまま、親分コケコが挨拶をしてくれるまで待ちます。少しして……。


「コケコーッ!!」


 大きな声で親分コケコが鳴きました。この鳴き方は、いつも親分コケコがみんなにおはようって言ってる時の鳴き方だ!! 僕のおはようございます、大丈夫だったみたい! 僕はすぐにお辞儀をやめて、次のお願いをします。


「おそうじ、い? あと、ごはん、い?」


「コケコーッ!!」


 うん、これも良いって。良かったぁ。あっ、でもその前に。他のコケコにもご挨拶しなくちゃ。親分コケコの次のコケコは……。あっ、あのコケコだ! 僕は急いで次のコケコの所へ、それでまたご挨拶をして。


 1羽ずつのご挨拶が終わったら、最後に残った全員にご挨拶。


「おはようございます!!」


『『『コケコッ、コケコーッ!!』』』


「おそじします!!」


 僕がそう言ったら、みんなが壁の方に退いてくれました。


「パパ、ごあいさつおわり!! おそじできる!!」


「え、え? 何だこれ? 何がどうなってるんだ?」

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