第2話 暴力のはじまり

 夢を見ていた。

 家族の夢。父と母。この世界ではない。今は遠い日本の家族の姿だった。

 勇者は異世界転生者だった。高校生だった彼女は登校中にトラックに轢かれてこの世界に迷い込んだ。

 転生の際に女神様の祝福を受け、この世界を救う勇者として降り立った。


「異世界転生って、本当にあったんだ。」


 まさか自分がなるとは思ってなかった。彼女は自分を召喚した人々が、魔王に追い詰められて苦境に陥っていることを知った。


「伝説の勇者さま、どうかお救いください。」


 戦うのは怖かったけれども、自分のおかげで助かったと感謝する人々を見ると迷いは吹き飛んだ。

 彼女は仲間を募り、魔王討伐の冒険に出た。幾多の苦難を乗り越え、いくつもの街を救い、数え切れないほどの魔族を討伐して、そして魔王の奇襲によって勇者は捕まった。




 目が覚める。そこには直視したくない現実が横たわる。

 全裸で鎖に繋がれた彼女は冷たい床の上で寝ていた。

 疲れからか体は泥のように重たい。しかし気を失っている間に洗われたのか、オークたちに犯された汚れはきれいさっぱりなくなっていた。


「…うっ…おぇ…っ」


 気絶する前の情景がフラッシュバックし、猛烈な吐き気を催す。ろくに固形物を摂取していない彼女の胃は迷わず胃液を吐き出した。キレイにされた床に酸っぱいものが飛び散る。

 2、3度吐き出した後、やっと吐き気を抑え込むことが出来た。


「お母さん…お父さん…」


 涙が頬を伝う。今すぐ元の世界に帰りたい。

 もちろんそんなことは叶わないと知っていた。過去の異世界転生者は皆、この世界で生を終えている。何より元の世界の彼女はトラックに轢かれて死んでいた。

 それに私がいなくなったらどうなるか。魔王によって世界が滅ぼされるかもしれない。村で魔族に犯された女の子、生きたまま焼かれた老夫婦、魔族が行った悪行の情景が浮かぶ。

 一緒に戦った仲間たちは無事だろうか。もしかしたら助けに来るかもしれない。希望を捨ててはいけない。勇者はそう自分に言い聞かせた。


 ガチャリ。牢の扉が開いた。思わず体をビクつかせてしまう。扉の方を見るとコボルトたちがそこにいた。

 コボルト、犬の姿をした二足歩行の魔物。知能は低く体躯も人間の子供程度。でも繁殖能力が異常に高いため魔王軍では雑兵として使われている。それ故に数の上で魔王軍で最大規模だった。

 コボルトたちは勇者には分からない言葉で会話をする。しかし何が行われるのかは勇者にも分かっていた。



 コボルトが腰を打ち付ける。姿と同じようにコボルトは犬のような性器を持っていた。長細い性器が勇者の中を抽挿する。


(オークに比べると小さくて楽かな…)


 犯されている事実には変わらないが、勇者にとってはもはやどうでも良いことだった。不快感はあるものの内蔵を付き回されるような異物感はない。

 コボルトのピストンが早まる。勇者はまた出されることにげんなりした思いを抱く。そんなことはお構いなしにコボルトのものは勇者の中に吐き出された。

 ドクドクと精液が注ぎ込まれる感覚がする。あぁ、また出されしまった。


「…ぇ?」


 しかししばらくして勇者はオークとの違いに気がつく。コボルトの射精が終わらない。コボルトは犬と同じく長時間の射精をする魔物だった。


「ぅぁ…ぐぅ…苦し…」


 お腹が圧迫される感覚を覚える。終わらない射精に不快感が増す。奥を突くオークのピストンとは違う苦しさ。

 やっと射精が終わったコボルトが性器を抜く。勇者の中は粘っこいコボルトの精液で満たされていた。


(これはこれで、辛いな…)


 先ほどの楽観的な考えはどこかに飛んでいった。勇者の周りにはまだ多くのコボルトたちが股間を膨らませて待っていた。



 コボルトたちは不満であった。もともと射精が長いコボルトの陵辱はテンポが悪い。待たされてやっと犯した勇者はオークに犯され尽くしてアソコが緩かった。おかげで行為がさらに長くなる。勇者も犯されてもマトモな反応をしない。せめて泣き叫ぶか許しを懇願するかしてほしい。


「やっとるか。」


 牢内に声が響く。魔王は今日も勇者の様子を見に来た。

 コボルトが直立し敬礼する。行為を行っていたコボルトも慌てて勇者からイチモツを抜き出す。


「構わん構わん。」


 魔王の御言葉は万民に普く伝わる。言語体系が全く違うにも関わらずコボルトとの意思疎通に問題はない。故に魔王は多種族を統べることができる。

 コボルトは恐縮しきった様子で勇者に挿入した。


「ぅ…まお…う…」


 勇者には昨日のような気迫は残っていなかった。それでもゆさゆさと犯せれながら魔王に精一杯の眼光を送る。


「やっぱり反応が薄いな。」


 犯される勇者を見て魔王は呟いた。当然だった。オークどもに一晩日犯されて生きている方がおかしいのだ。

 もっとも魔王はこの程度で勇者が死なないことも、犯されすぎて反応が薄くなることも折込済みで牢に来ていた。


「よし、ここは趣向を変えよう。」


 そう言うと魔王は腰に下げた剣を抜きはなった。そしてコボルトに挿入されている勇者に近寄ると、その剣を一気に振り落とした。


「あガぁっっ!?」


 勇者の右腕が切り落とされた。

 細いが不健康ではない、きれいな女の腕が牢の床に転がる。

 勇者か一瞬何が起こったか理解できず、切り落とされた腕を見て初めて脳が痛みを理解した。


「ああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」


 痛みに悶える。途方もない喪失感が襲ってくる。断面からドクドクと命が流れ出る。

 痛みで体に力が入り、膣がきつく締められた。突然の刺激にコボルトは歓喜する。緩かった肉便器は泣き叫ぶ名器になった。さすがは魔王さま!魔王さまバンザイ!

 コボルトはピストンを再開する。痛みに悶える勇者に容赦なく腰を打ち付ける。


「ひぅ!あぐっ!やめっ!やめで!じぬ…!」


 突かれるたびに血が流れ出すような気がして、勇者は死の恐怖に怯える。口からヨダレを撒き散らし、下等種として蔑まれることの多いコボルトに懇願する。

 しかしその姿はかえってコボルトたちの欲求を刺激した。我慢できなくなった他のコボルトが勇者の口に無理やり性器を突っ込んだ。


「うぐっ…ぉぇ…!」


 むりやり喉の奥まで突っ込まれて勇者はえづく。吐き出したいが顔を掴まれ奥まで挿れられて口を閉じることもままならない。ツンとした生臭さが鼻をつく。気持ち悪くて涙が出る。


「うぅっ!おごぉ!おぐ!」


 涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら勇者は喉を犯される。お腹の異物感と腕の痛みと…勇者の頭は一気に入ってくる感覚を処理できずにパンクしていた。


「うぅ!うぐぁ!」


 膣を犯すコボルトがピストンを早める。口を犯すコボルトも合わせるかのように腰の動きを早くする。血はますます流れ出て、酸欠で頭がチカチカする。床には愛液と血が混ざった池ができていた。


「うぅ…うぅぅぅ…!」


 コボルトが力強く腰を動かす。性器からまたドロドロしたとした精液が吐き出された。粘っこい精液が喉に絡みつく。必死に飲み込むが次から次へと流れ出て息ができない。


「おい、殺すなと言ったはずだ。」


 そこで魔王が動いた。勇者の口に挿入していたコボルトを無理やり引き剥がす。

 口から性器が離れる。勇者は喉に溜まったものを吐き出そうとするが上手く行かない。


「しっかりしろ。」


 魔王が勇者の背中をさする。ゲホゲホとやっとの思いですべての精液を吐き出した。


「げほっ…はぁ…はぁ…ふひゅぅ…はぁ…はぁ…」 


 口と鼻から精液を垂らしながら、勇者は酸欠の体に空気を送り込む。背中をさする魔王の手は大きく、温かかった。

 ふと、父親を思い出す。優しかった父。小さい頃はお父さんに頭を撫でてもらうのが嬉しくて、いろんなことを頑張った。


(何考えてんのよ…)


 慌てて思いを振り解く。魔王に父性を感じた自分に嫌悪感を覚える。口から垂れた涎とも精液とも分からないものを右手で拭った。


「…え?」


 魔王に落とされたはずの右腕が、元通りについていた。


「回復魔法をかけた。」


 魔王はニヤリとして勇者に語りかける。背中をさすられた時に感じた温かい感覚。あれは回復魔法のものだったのか。

 ふと視界の端に何かが写った。先程切られた腕がまだ転がっていた。


(切られた腕を生やした!?)


 仲間のヒーラーを思い出す。彼女らヒーラーとしてはかなり優秀だった。切られた腕をくっつけることもできた。でも腕を生やすなど彼女ですら…いや、人類の魔法では不可能な領域だった。

 突然、魔王が本当に恐ろしいものに感じた。背筋を震わせる。こんな化け物に、私は戦いを挑もうとしたのか。


「さあ、続きを始めよう。」


「え…」


 スッと魔王が立ち上がる。

 そして剣を逆手に持つと、勇者の手の甲に突き刺した。


「あぐっ!」


 鋭い痛みが走る。生えたばかりで綺麗な腕に鮮血が飛び散る。痛みに耐えようと目を閉じる。


「コボルトはまだまだいるからな。」


 恐る恐る目を開ける。そこには股間を活きり勃たせたコボルトたちが今か今かと待ちわびていた。


「いや…いやぁ…!」


 勇者の地獄はまだ、始まったばかりであった。


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