魔が差して
授業終わりまであと30分と少し。
普段なら代わり映えのない教師の授業をBGMに内職に励んでいるが,今日は勉強が手につかない。
詰め込もうと思っていた日本史のワーク,超難関国公立大学の過去問集,使い込まれてボロボロになった単語帳。
今までの人生では最重要ポジションに君臨していた教材たちだったが,突如やって来た
彼女の姿を思い描いていると,スマホのバイブ機能が机を揺らす。
ブーッ、と鈍い音を立てるスマホを驚愕した手で慌てて持ち上げれば,即座に画面を確認する。
差出人は…白波だ。
まだ授業中なのに…?と若干疑問に思いながらLINEを開いてみた。
勿論参考書の下にスマホを置き直し,周りからバレないように細工を施してある。
『今授業中だよな?ゴメンな通知荒らしちゃって』
『海墨ってアレルギー持ってるか?明日お菓子持ってくからさ、何か好みとかあったら教えてくれー!』
文面だけでも伝わってくる彼女の無邪気な笑顔。
ボールを咥えご主人の前で尻尾を振っている仔犬が脳裏に浮かんでしまい,つい吹き出してしまった。
『アレルギーは特にないよ,お菓子…は色々制限されて生きてきたからよく知らないんだ』
『よかったらさ,白波さんの好きな物を食べてみたいな』
スマホの小さなキーボードを指先でタイピングすれば,瞬時に返答メッセージを入れる。
流石はJKといったところだろうか,直ぐに既読が着いてこちらも嬉しい気持ちに満たされる。
『おー!なにか厳しい家庭なんだな…?』
『それじゃ,お菓子はアタシに任せといてくれ!』
こちらの事情に深堀りして来ないところに信頼をおぼえる。
早く返信しなきゃ…とウキウキ気分でタイピングしていると,再度スマホが揺れる。
なんだ…?と疑問に思いながらつぎのメッセージ画面を開く。
そこに書いてあった名前は…姉だった。
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