〃〃

チャイムが校内に鳴り響けば,LINEでのやり取りが終わってしまった。

既読がついたまま返ってこなくなった画面を名残惜しそうに見つめていると,隣に座っていた女子高生がひょこりと顔を覗き込ませる。


「な〜にニヤニヤしてるのよ,気持ち悪いわね。

いいことでもあったのかしら?どーせどうでもいいような事なんでしょうけど。」


眼の前で繰り出される高度な数学の授業を横目に海墨に話しかけるのは…彼の幼馴染である錫音せきね朱璃あかり

どうやら先ほどから話しかけていたようだが,全く気が付かない彼に相当腹を立てていたようで。

彼女の朱い瞳がじと…と海墨を睨みつける。


「そうですどうでもいい事です〜」


棘のある言葉に少々腹を立てながら怒りを顔に出さないように自制をする。

昔から何かと海墨に絡んでは棘のある言葉を投げつけてくるので少々苦手…らしい。


「ふ〜ん,海墨のくせに」


そう呟けば,こんなにつまんない授業なんて受けません,と言わんばかりに机に寝そべる。

勿論顔は海墨に向いたままで。


「もういい?勉強したいんだけど」


「勝手にしなさいよ」


彼女の返答に口元が引きつり,一刻も早く離れたい…だなんて顔に出てしまっている海墨。

教科書の下に忍ばせておいたスマホに通知は来ていない。

次のチャイムが鳴るまでの約45分間,白波から返信が来ないことはわかりきっているのにどうしてもLINEが気になってしまいスマホから眼が離す事ができない。


「…早く会いたいな」


そう小さく呟けば,朱璃に背を向け机に寝そべる。

青く澄み渡る穹に白波を思い描いては,いつもより長く感じる授業を空想のお供に目を瞑った。

早く終わってくれないかな,だなんて思いながら。

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