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教室につけば,紫焔を宥め席に座らせる。自身も日本史の教科書一式を後ろのロッカーに突っ込めば,自分の席に戻り先ほど聞きかけた質問をLINEで送る。
『さっきの話なんだけどさ』
ぽこ,と音を立ててメッセージが送信される。
間に誰もいない,白波と一対一で話せる貴重な場だと意識してしまい指先が震えた。
すると,即座に既読が着きメッセージが返ってきた。
『おー!どした?』
まるで眼の前で彼女が喋っているような錯覚を引き起こせば,どうしようもなく恋をしているのだな…と自覚しては顔がぽぽぽ,と赤く染まった。
そうだ,彼女がスマホを見ている間に連絡をしなければ。と焦ってメッセージを打つ。教室の距離や時間割が全く違うため,この機会を逃したら次はいつ連絡を取り合えるかわからないのだ。
『いや,なんでもないよ。
それより次の教科はなんなのー?』
家系の話をするのは一旦やめておこう,と彼の直感が言っている。
1秒でも話せる時間を増やすためにとりあえず無難な話題をふってみた。
『次かー?次は…数学だぜ。アタシ数学苦手なんだよ,いっつも赤点ギリギリでさぁ』
そんな返信がくれば,思わず吹き出してしまう。
かわいいな,と思いながら赤点を取ってしまいショゲている彼女を脳内に描き出した。
ふと,何かが脳裏を駆け巡る。
数学…自分の得意科目ではないか。
閃いたかのように眼をキラリと輝かせば,猛スピードでスマホのキーボードをタイピングした。
『数学苦手?俺でよければ教えるよ』
メッセージを送り終えた後に,この文…なかなかに気持ちが悪いのでは?と自覚してしまい頭から湯気が上がる。
送信を取り消そうも既読がついてしまったため,もう後に引くことはできない。
絶対引かれてる…と落ち込んでしまった海墨の心情とは真逆に,返ってきたメッセージは明るいものだった。
『いいのか!?すーごい助かる…是非お願いします!!』
ほっ,とし胸をなでおろせば,幸せそうな笑顔を見せながら上機嫌そうにキーボードを叩く。
『もちろん,いつにしようか?』
『明日の放課後って空いてるか?そっち行くぜ』
『わかった,明日の放課後2のIに来てね』
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