〃
何処か哀愁漂う彼の背中を見かねたとある男子高校生が,空気を揺らさずに海墨の背後に立つ。
獲物に飛びかかる猫のようなポーズを取れば,銀色のイヤーカフに付属した細いチェーンを揺らしながら頬杖をついてる彼の右肩を勢いよく叩いた。
「みっすーみー!なーに黄昏れてンだよっ!!」
すぱぁん!とワイシャツの下に潜む白い肌が叩かれ少々痛そうな音が広がる。
突然の痛覚に顔を歪めるも,叩いてきた張本人を視界に入れれば若干口角が緩んだ。
「別に黄昏れてなんかないさ,紫焔。それよりも肩が痛いんだけど??」
紫焔と呼ばれたその男…家の立地は正反対なものの,高校で初めて出会ったとは思えないくらい仲のいい友達,
特進コースの特待生として入学した紫焔は,男女から好かれる人格者で海墨のよき理解者。
「元気なさげだろー?そん時は叩いて喝入れすんだよ!」
謎の持論を持ち出してくれば,海墨を元気づけるかのように再度肩を叩く。
先程よりも威力は弱いが,流石に痛い。肩に大きな紅葉型が出来たらどうしてくれるんだよ…と若干笑いながら呟いてみた。
「はいはいありがとうね,それで?何か用があって来たんじゃないの?」
彼か右肩を叩く時は,大体何か用事があるのだ。
頬杖をついていた右手を机の上に乗せて紫焔の瞳をじ…と見つめた。
するとどうだろうか,きょとん,とした顔で海墨を見つめれば,彼の左腕の中に抱えてあったあるモノを見せる。
オレンジ色の表紙に明朝体で大きく書かれた黒い文字…。
「次日本史だぜ?グローバルの方まで移動だぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます