第2部 ダンジョン食堂、リニューアル。そして精霊たち
第52話 店の拡張整備。というか庭園
「ダンジ様。イザナミ様にご招待状を送りましたの。ですので、
「準備ですか?」
「ええ。イザナミ様はお花が特にバラが大変お好きでございますのよ。ですので、少しお店をキレイにしたらどうかと思いますの」
以前から女神様は店の庭園を整備してくれていた。
「天界の庭園のようにしようかと思っておりましたのですが、天界の庭園は少々杓子定規と申しますか、幾何学模様を好み、シンメトリーに配置したりしますので、興がそがれることがございますの」
「ああ、なるほど。形式ばってると」
「ええ。ですので、ダンジ様。何かご提案を授かれないかなと思いますの。ダンジ様がご提案を思い浮かべるだけで私はそれを受け取ることができますから、何か提案がございましたらお願いしますわ」
「うーむ、こんな感じ?」
俺はとある日本の有名な庭を思い浮かべた。
「まあ!バラの花のトンネルですか?素晴らしいですわ!それ、是非とも、取り入れたいですわ!」
それから、イスラム庭園。
「中庭の真ん中に水路を設けてその周囲に回廊を。そして、奥にテラスを作ってそこでお茶を頂くのですね。それもいいですわ。実に素敵ですわ!」
◇
女神様は俺のイメージを元にあっという間にダンジョン食堂の隣にバラの庭園を完成させてしまった。
入口はバラのトーチ。
そのまま十字状にバラのトンネル。
四隅はテーマ性をもたせたバラの庭園。
「なんだか、たくさんのバラの品種がありそうですね」
「私は天界の花担当ですの。ですから、花に関しては思い通りになりますわ」
花担当なんだって。
女神様、ただの酒好きじゃなかったんだ。
バラの庭園をエントランスとして
その奥にイスラム庭園。
ヘネラリーフェ庭園という有名な観光地がある。あの庭園のアセキアの中庭をアレンジして、真ん中に細長い水路、噴水、サイドには様々な植栽。さらに周囲を回廊で囲み、そこにカフェテーブルを設置。
1階と2階が出っ張った凸形をしており、1階の屋上がウッドデッキの敷かれたテラス風の広いルーフバルコニーになっている。バルコニーからは中庭及びバラの庭園が一望できる。
女神様はこれらを1日で完成させてしまった。
「いかがでしょうか」
「素晴らしすぎます」
あのイスラム庭園の歴史的な渋さも再現している。
俺のイメージ通りなのだ。
イスラム庭園は一度だけ観光したことがある。その分、記憶が強固なので、女神様も再現しやすかったのかもしれない。
でも、これらは100%女神様の趣味。
隅々にまで女神様の感性が息づいている。
一言でいえば繊細なんだ。
「これならば、イザナミ様もお喜びになりますわ」
これカフェなんだよな。
ここで焼き肉、できないよな。
イメージが合わないもの。
「ダンジ様の食堂のエリアを広げて、植栽を周遊型のイングリッシュガーデンでまとめ、東屋を点在させてはいかがでしょうか?」
うーむ。もうね、女神様のいう食堂エリアは縦横500m以上ある。広大な庭園というか山野だな。
ここに池や水路、丘を設け、花や低木、料理用の畑で飾っていく。東屋は適度な間隔をおいて配置される。この東屋でみんなが食事をとるわけだ。
「この程度の距離でしたら、転移魔法陣を設けて瞬時に移動すればいいのですわ」
こともなげに宣う女神様。
「少し魔猫を鍛え上げて、もっと強力な結果を張れるよう、訓練させましょう。そうすれば、魔物のリポップも抑えられますわ」
いつもはグータラの魔猫、特訓コースが決定した。しばらくは女神様とガルムの指導のもと、魔猫の悲鳴がダンジョンにこだました。
なお、食堂拡張についてはダンジョン協会と協議した。まあ、即座にOKが出たんだが。
近所には多数のご近所さんが引っ越してきている。食堂計画に重なるご近所さんには土地を空けてもらうため、彼らにはよく説明して特別メニュー無料サービスをつけて引っ越してもらった。彼らの新しい自宅と店にも転移魔法陣を設け、利便性も確保したのでかえって喜ばれた。
これらの店の改造・拡大はわずか数日で完成させた。イメージさえしっかり頭に浮かぶのであれば、それを実現するのは簡単だという。さすがは堕ちたとはいえ、女神様である。
◇
店を大幅にリニューアルしたことで高位魔物も大いに刺激を受けた。自分たちの住まいも拡大・改造し始めたのだ。
「これだと、10階層があっという間にパンクしてしまうぞ。ダンジさんの店はともかく、個人の家は広さ制限する必要があるな」
ダンジョン協会ではこのダンジョン史上初めて、住宅建築の許認可をすることにした。といいつつ、ダンジョン協会10階層支部は5階層本部よりも大きい敷地・建物を確保した。
「個人とは違ってダンジョン協会は公益性が強いからの」
なんだかものは言いよう、というような気がする。
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