第43話 相馬美也視点2
王国の王族は堕落している。
王は権威とゴールドと女にしか興味がなかった。
女王は宝石とゴールドにしか興味がなかった。
王女は宝石、ゴールドと権威にしか興味がなかった。
中でも王女は性格は陰湿、酷薄であった。
彼らが人間的に疑問がわくのは初対面でも感じたことであるが、時間が立てば立つほど明確になった。
半年ごとに召喚しているのもわかった。3月1日と9月1日。地球ともっとも次元距離が縮まるらしい。
異次元から召喚するのは、次元渡りをするといろいろと強化されるからだ。何よりも勇者の称号を得る確率が高い。
そして、私の前にも何組もの勇者やその従事者を召喚してきた。現在は1人も生き残っていない。全員、失敗していた。
とにかく!私は逃げ出さねばならない。こんなおかしな人達と一緒にいては間違いなく命をなくす。
私は脱出した。倉庫から適当な金や銀、通貨を盗んでそれを逃走資金とした。
当然、追われた。私は見つかりそうになり、とあるダンジョンに逃げ込んだ。難易度が凶悪とされるダンジョンである。
ここならば追手を交わせる。他のダンジョンも考えたが、追手を交わすには10階とか20階まで行く必要がある。そうなるとダンジョンから出るのが大変だ。
ところがこのダンジョンならばせいぜい5階程度ですむ。ダンジョンから出るのも楽だ。
そう思ったのだが、このダンジョン、想定よりも魔物が強く、魔素が濃かった。私はそれを3階層で実感していた。そこから先はやばい。しかし、3階では追手をまけない。私は4階層、そして5階層に進んだ。判断ミスなんてレベルじゃなかった。
私は5階層に入った瞬間に魔素酔いを起こし、クラっとした。そのスキを狙って魔物が襲ってきた。私は痛手を負い、なんとか逃げ出したが、気を失った。
私は幸運だった。私が目を覚ますとどこかの室内だった。
「助かったのか?」
私はあたりを見渡すと、女性が二人。エルフと人族であろう。この二人は見たことのないような美形だ。特に人族のほうはおそろしく美しかった。
そして同じく人族の男性。私と同じ黒髪黒目でまるで日本人のようだ。ハンサムではないのだが、魅力のある人だ。
そして、なぜか脇に子犬がいた。この子犬。私には大変恐ろしかった。死を撒き散らしていたからだ。
子犬ほどではなかったが、残りの女性二人と男性一人。只者とは思えなかった。オーラが半端ない。あれは強者特有のオーラだ。
色々尋ねられたが、驚くことが続いた。まず、エルフと思えた女性、フレイヤさんは魔猫だった。しかも彼女が私を回復魔法で救ったのだという。
そして、男性、ダンジさんは私と同郷だった。日本人であり、去年の9月1日に転移させられた人物であった。(転移は失敗したとされる)
後から知るのだが、もう1人の女性リーナさんは女神様だという。天界の人?理解が追いつかない。ただ、確かに人外の美しさを持っていた。
そして、子犬は黄泉の国の番犬だという。名前はガルム。それ、なんというフザけた設定?と思わざるを得ないが、あの雰囲気からはさもありなんだと感じた。本当の姿は巨大な犬だという。魔牛と同等の大きさらしい。
そして、彼らの実力は本物であった。それも後から少しずつ知っていくのであるが、それを初めて実感したのは、私を悩ませた拘束の腕輪。腕輪に記述された魔法陣を簡単に見破り、しかもその場で記述文を書き換えてしまった。
「魔法陣を書き換えたから。お前の自由にできるぞ。誰か拘束したいやつがいたら使え。手錠の強化版として使えるぞ」
ということだった。手錠は魔道具らしいが、そんなに簡単に書き換えできるものなのだろうか。私の受けた説明では、魔道具の魔法陣は書き換え不能ということであったのだが。
次の驚きは、私が助けられた5階層のダンジョン協会そばに建てられた私の拠点。助けられた翌日に建築が終了した。
「俺には土魔法があってね」
いや、土魔法ってこんなに簡単に家を作るのか。この大きな窓も土魔法で作るのか。玄関扉とか。
「さすがに、扉は既存の木製扉だけどね」
大きい家ではない。2LDK程度だ。しかし、冷暖房、浄水設備、下水設備、トイレ設備、お風呂設備、冷蔵庫設備など、日本時代と同等以上と思える設備つきだ。
トイレなど、水に頼らない。風魔法や清浄魔法により、あっという間にキレイになる。というか、このダンジョンは清浄魔法で満ちているという話だ。汚れは1日たつとダンジョンが吸収する。体が汚れても1日後にはキレイになっている。
逆に言うと、汚れはすぐにはキレイにならない。ずっと1日分の汚れを身にまとうことになる。それを嫌う人には温水魔道具付きの魔道具がある。清浄魔法の魔道具やリンス魔道具、そして石鹸水も備わっている。
石鹸の実というのがダンジョンに生えている。それを石鹸に使用する。油汚れもトイレ汚れも万能の優れた石鹸だ。それでいて、決して肌を傷めない。優しい石鹸だった。
リンス魔道具については、リンスというよりもコンディショナーだ。レモン果汁だけは補充する必要がある。シンプルだが、あっという間に髪がしっとり・ツヤツヤとなる。単純なレモン溶液ではない。
王国のバス・トイレの貧相さ、汚さにうんざりしていた私は狂喜した。
さらに可愛い魔猫3匹が私を守ってくれる。彼らは結界防御魔法を発現できるのだ。そして、マジックバッグを所有していた。そこに毎週1週間分の食事が保管される。食事はダンジさんの食堂製だ。
転移前の世界、日本でさえ、ダンジさんの料理より、いや同等の料理でさえ食べたことはない。確かに私はグルメじゃなかったが、そんな話じゃない。ダンジさんの料理は圧倒的に美味しいのだ。
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