第38話 冒険者ギルドは大騒ぎ 人間の街へ行ってみる3

 ほうほうの体で俺は食堂を逃げ出した。マジックバッグからハンバーガーを取り出しこっそり食べようとすると、


「お主、ずるいじゃろ。妾にもよこすのじゃ」


わたくしも」「オデも」


 さっきは偉そうなことを言ってたが、こいつら、さっきの料理を半分も食べてない。

 

 食べ歩きしつつ、服を見に行った。ああ、この街では食べ歩きはみんなしてるから、俺もそれにならったんだ。


 服はさっくり選んだ。実用的な服とか下着とかだからな。というか、俺は日本でも服にこだわったことはない。時間がかかるのはサイズ合わせぐらいで、柄はモノトーンばかりだし、色は黒白灰色ぐらいの地味な色ばかりだ。


 ガルムはもちろん服がいらない。


 めんどいのは女神様とフレイヤだ。


「フレイヤ、おまえ変身スキルでどんな服でもチェンジできるだろが」


 これは女神様も同じ。


「いや、それはそれ、これはこれなのじゃ」


 買ったところでどこに保管しておくのだ。


「マジックバッグに入れておけば、変身したときに着れるであろうが」


 女神様もとっかえひっかえ服選びに時間がかかる。魔石を売ればお金はあるんだから、こっからここまで、とやりたいところだが、女神様的にはそうじゃないらしい。悩むのがいいんだと。訳がわからん。


 あとは宝石とか。お金には困らない。


「まあまあだったの」


 フレイヤは普段から街に行っている。

 買い物も日常的だ。


「私はあんまり街に来ませんからとっても充実してましたわ」


 女神様なんか、キレイすぎるのにさらに着飾ると眩しくて直視できない。まあ、流石に女神様に見合う服とか宝石はこの街には売ってないが。というか、この世界にあるのか?



「まあ、街まで来たんだから冒険者ギルドに挨拶しとくか?」


「そうじゃの。お得意様が何人かおるからの。おまえ、お土産はあるのか?」


「当たり前だろ。マジックバッグに各種用意してあるわ」


 ということで、冒険者ギルドを訪問した。

 

 冒険者ギルドは結構大きな建物だった。3階建ての石造りだがさっきの薬師ギルドの倍はある。さらに体育館みたいな場所も併設している。


 昼過ぎということでギルドには冒険者たちは殆どいなかった。

 10個ぐらい窓口が並んでおり、その一つで俺の名前を告げると、

窓口の綺麗なおねーさんの目が輝いた。


「は、森のダンジョン10階層食堂のマスターでございますね!」


 俺はモリノダンジだって言っただけなのに、個人情報が周知されている。スター並の扱いだぞ。1階のみんなが一斉に俺を見て歓声を上げている。その中を俺たちは丁寧に2階にあるギルマスの部屋に通された。



「おお、よく来てくれた!」


 見た目山賊のギルマスが俺を見るなり立ち上がって大げさに手を広げて迎え入れてくれた。


「ギルマス、これお土産です」


 スター扱いされている俺は気を良くして大奮発した。テーブルの上に並べられる各種料理の数々。


「おお、おお、これが噂の10階層食堂メニュー……」


 噂を聞きつけた職員が全員、ギルマスの部屋に押しかけてしまった。生唾の音が部屋に響く。


「あったかいうちに皆さん召し上がってください」


 マジックバッグに入れておいたからな。調理したてのものばかりだ。


「ギルマス……?」


 ギラギラと瞳孔をギラつかせる職員たち。


「ああ、遠慮なく食え」


 その一言で職員たちは野獣と化した。俺も調子にのってどんどんとマジックバッグから料理を出していく。



「噂は本当だった……」


「これでは街の料理を食べられないぞ……」


「畜生、俺は頑張っても森のダンジョンは3階層止まりなんだよ」


「オレは5階層なんだ。体の変化が起こり始めてるからもう少しの頑張りか?」



 料理は大絶賛であったが、ここでフレイヤと女神様が隠蔽を解いてしまった。


「うわっ、眩しい!」


「え、何、とんでもない美人が!」


「どこから現れたんですか!」


 どうやら、オレの料理が大絶賛されるもんだから、ちょっと悔しく思ったらしい。二人共小物なんだから。まあ、室内は軽くパニック。


 まあ、ガルムはちゃんといい付けを守ってくれたからよしとしよう。下手すると、死屍累々になるからな。


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