第33話 お客様は神様です1 そのうちドンペリコールか?
俺は料理に忙しくて接客には殆ど関与していない。
でも、3部門とも上手く回っているようだ。
特に順調なのが飲み屋部門。
ただ、メニューは充実していない。
醸造酒として
りんご酒
白ワイン、赤ワイン
エール
蒸留酒として
シードル(リンゴ蒸留酒)
ブランデー
ラム酒
を用意している。
ソフトドリンクもね。
これにつまみとして
ジャガイモ系
ポテトフライ、成型ポテトチップス
その他の野菜系
野菜スティック
果物系
フルーツ盛り合わせ
玉子系
おでん、だし巻き玉子、醤油漬け玉子、
鶏系系
焼き鳥
牛肉系
ビーフジャーキー
こんなところだ。
サキュバスたちが料理するので複雑なものはできないし、料理魔道具で間に合わせようにも、魔道具製作は時間がかかるのだ。ほいほい作れるものじゃない。
基本は酒だし、適当なつまみがあればいい。勿論、つまみにも手を抜いてはいない。簡単なつまみでも最高級だと自負している。
しかし、飲み屋で重要なのは話し相手だろう。目立つのは女神様だ。彼女が単純に接客してくれるだけでみんなが大喜びする。そりゃ、類まれなる美貌の持ち主の女神様だ。性格もつっけんどんじゃなく愛想がいい。しかも、この女神様、
「まあ」「すごい」「さすがですね」「そうなんですね」「よくわかります」「私もそう思います」
「いいことを聞きましたわ」……
でも、かけてもいい。女神様、殆ど話を聞いていない。でも、相槌だけで延々と話を盛り上げる。ほんのちょっとだけでも話を聞けば、女神様は内容を把握してしまうみたいだ。だから、お客さんも上機嫌でお帰りになる。
「天界には酒飲みが多くてですね、毎日お相手してましたのよ」
ああ、そういや女神様も酒飲みだった。
今は自重しているけど。
サキュバスたちも負けていない。こっちはちゃんと話を聞いている。親身そうに話し込んでる。
彼女達にのめり込む人が多いのはよくわかる。美形で話を真剣に聞いてくれて、ちゃんと気の利いた返事をしてくれる。これで惚れるな、というほうがおかしい。
俺も久しぶりに表に出てみると、常連さんであるホブゴブさんがクダを巻いていた。
「オレはね、すっごく悔しいわけ。いつも」
「どうして?」
「だってさ、オレ、いつもゴブリンの兄貴分みたいに見られるわけ」
「そうじゃないわけね?」
「そうなんだよ!ゴブリンとホブゴブリンは全然違うの。種族も。中身も。全く違うの!」
「違うよねー。なんで混同しちゃうのかしら」
「それなんだよ!オレとゴブリン、形が似てるって言うんだ。違うよね?全然違うよね?ゴブリンはカッコ悪いし、俺はカッコいいし。色も緑だっていうんだ。違うよね?ゴブリンのは下品な緑だし、俺のは上品な緑だし。全然違うんだよ!」
「そうよね、私にはわかってるわ。全然違うわよ」
「だろ?ゴブリンってアホじゃん。アホっていったらゴブリンじゃん。なんで賢いオレがそんなのと兄弟だっていわれるのかわかんねーよ」
「ホントだよねー、みんなわかってないよねー」
「やっぱり、ルーシーちゃんはわかってるよね!ああ、もう一杯蒸留酒もらお。あ、ボトルで入れてね」
「ありがとうございます!ホブゴブ様、ボトルはいりまーす!」
おお、盛り上がってるなー。こりゃ、ドンペリみたいな高額の酒を用意したら、凄いことになりそうだな。コールとかどんどん開発したりして。やらないけど。
ちなみに、ホブゴブさん。以上の会話(実際はもっと長い)を3回繰り返してお帰りになりました。
ついでに言うと、ホブゴブさん、毎晩、同じ愚痴をこぼしている。まさしく、壊れたスピーカー(苦笑)。ルーシーにはインセンティブあげなくちゃ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます