第12話 焼肉のタレ2 不思議なダンジョン
醤油づくりだけに没頭していたわけではない。
店には
・柚
・とうがらし
・にんにく
・しょうが
・ねぎ
・白ごま
・玉ねぎ
・ミニトマト
があった。
もちろん、未使用だ。
いずれに土に埋めると、大豆同様芽が出た。ネギは土に挿しただけでどんどん成長し、枝分かれした。
柚以外は1週間前後、柚は1ヶ月ほどで収穫。
それを利用して、焼肉のタレを作る。
できれば、砂糖があるといいのだが。
「砂糖?ああ、このダンジョンには砂糖の木というものがあるのじゃ。赤い実がなっての、その実がとても甘いのじゃ」
「ほう、そんなのがあればすぐにでも採りに行きたいんだが」
「まあ、待て。結構深い階層にあっての。後日の楽しみにするのじゃ」
「えー」
「それにしても、さすが職業大調理人、究極調理スキルの持ち主じゃの。普通はダンジョン外の植物は発芽しないことがおおいのじゃが」
「ほう、そうか。そうだとしても、簡単に成長しすぎな気がするんだが」
「このダンジョンだと普通じゃの。植物の成長速度は非常に速い。しかも、リポップするときはすでに成長した姿で登場する」
「種からも成長し、リポップもするってなったら、やたら数が増えすぎやしないか?」
「ダンジョン全体での数の制限があるのじゃ。通常はその数までは無限に増加するようじゃの」
「通常は、ってそうじゃない場合もあるのか」
「うむ。これは特に魔物でおきるのじゃがの。魔物のうち、ハイレベル魔物、高位魔物は普通通り
「ふむふむ。そこにも低位魔物と高位魔物の違いがあるのか」
「そうじゃ。そいつらがたまーに異常増殖する。スタンピードと言っての、そうなるとダンジョン全体が大騒ぎになるし、やつらがダンジョンの外にも溢れ出して外の世界も大騒動になるのじゃ。じゃからの、妾たちは積極的に奴らを狩る必要があるのじゃ」
「はあ、そりゃ大変そうだ」
「何をのんびりしたことをゆーておる。お主も今後はどんどん狩っていくのじゃぞ」
「は、俺もやんのか?」
「そうじゃ。それが高位魔物の特に若いやつらの義務なのじゃ」
「どっひゃー。なんだか、村の青年団とか消防団とかと同じ響きがあるな。年寄りはいいのか」
「うむ。腰が痛いでの」
「おまえも年寄りなのか」
「妾は年寄ではないが、腰をやられておっての」
「嘘くせーな。俺の料理食べるとエネルギーが充填されるとか言ってなかったか?で、リポップとやらだが、こうやって発芽した植物。収穫したらリポップするんか?」
「うむ。外の世界から持ち込んだ植物の場合はリポップよりも根っこを残しておいたほうが早く成長するの」
「再生野菜ってことか」
「外の植物の場合じゃと、リポップする間隔が長いのじゃ」
「枯れてしまったらどうなる?」
「枯れるまではかなりの期間があるのじゃが、枯れたらまたリポップということじゃの」
「ところで、フレイヤ。この瓶詰めオリーブの実。発芽すると思うか」
「うーむ、するようには思えんが、お主、回復魔法をかけてみよ」
「回復魔法?……あ、メニューに出てきた」
「料理に関係するものは何でもできると言ったじゃろ」
「おお。だが、その前に塩分を抜いて……よし、回復魔法。うわっ、オリーブの実が光ってなんだか生き生きしてきたぞ」
「回復魔法というか、蘇生魔法じゃの」
「凄いな、俺。聖女様か」
「男で聖女というのは気持ち悪いのじゃ」
「そんな事言うと、LGBTの団体から抗議受けるぞ」
「LGBT?なんなのじゃ?」
「いや、独り言」
で、オリーブの実。
植えてみた。
なんと、芽が出てきた。
本当に瓶詰めオリーブが蘇生した。
ただでさえ、オリーブは発芽しにくい、と言われている。俺も本当に洒落のつもりで土に埋めただけ。それが発芽し、勢いよく成長し始めている。
俺、死人を蘇らせることができるかも?もし、蘇生魔法を発現したら、神に等しいってことじゃないか?
「あんな、ダンジョン限定で蘇生魔法はありうるのじゃ」
「まさか」
「ダンジョンは外とは理が違うからの。ダンジョンに吸収される前なら復活魔法とか蘇生魔法は有効なのじゃ」
おお。
凄いこと聞いた。
俺はやっぱり聖女様だった。
いや、待てよ。心臓死と脳死がある。外の世界でも、心臓が止まったぐらいなら蘇生できるかもしれん。救助活動でもそういう話あるよな。
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