第150話 後輩

ℹ️─────

148-150話は「俺と俺で現世の覇権をとりにいく」の75-77話と同じ時間軸です

https://kakuyomu.jp/works/16818093081647355813


全体の時系列情報は下記を参照してください

https://kakuyomu.jp/users/kurumi-pan/news/16818093086120520701


内容は微妙に変えていますが、ほぼ同じものです

─────✍


「鷹山かぁ……」

翔太は内心で頭を抱えた。


鷹山はデルタファイブの新人社員で、景隆の後輩だ。


(あの頃からそうだったのか? もしくはデルタイノベーションをきっかけに仲良くなったのか?)

デルタイノベーションはデルタファイブの社内で行われるコンペだ。

顧客に対して最も優れた提案をしたチームが表彰される。

石動は鷹山とチームを組んで参加しており、翔太と新田は技術面でサポートしていた。 ※1


翔太は鷹山が石動の仕事に興味をもつを知っているが、石動は気づいていないだろう。

石動の様子や、当時の自分の状況を思い出し、この推察は間違っていないといえる。


「フルタイムじゃないよな?」

「あぁ、俺と同じで、パートタイム希望だ」

「それはよかった」


デルタファイブは数万人規模の従業員を抱えるグローバル企業だ。

この会社を辞めてまで、翔動に入るにはリスクを取りすぎだろう。


「鷹山は優秀だ。それは俺が保証する」

「お前のほうが付き合いが長いもんな」


鷹山はデルタファイブでメキメキと頭角を現し、社内でも屈指の人材となることを翔太は知っている。


「じゃあ、問題はないんじゃないか?」

「まぁ……そうだな」


翔動にとって優秀な人材は喉から手が出るほどほしい状況だ。

Web Tech Expoのスポンサーをする理由にもなっている。

その点において、鷹山は申し分ない人材といえる。


(今の時点で、会って気まずいのは俺だけなんだよな……俺だけが気にしなければいいのか……)

石動は翔太が経験した人生とは別の未知を歩み始めている。

今後、石動と鷹山の関係がどのようになるかは未知数だ。

翔太の個人的な感情を判断材料に入れるのは、明らかに筋違いだ。


「いいんじゃないか。アルバイトなら辞めたくなったらいつでも辞めていいし」

反対する理由は何一つなかった。


***


「鷹山です。よろしくお願いいたします」

鷹山さん。柊です」


ワンルームマンションの一室で、翔太は鷹山と再会を果たした。


「鷹山でいいですよ?」

「ありがとう鷹山。ではよろしく」


久しぶりに会った鷹山は当時の初々しさを再現していた。

配属されて以来、部内人気ナンバーワンと言われた要因となっている愛くるしい態度や仕草もそのままだ。


***


「――ありがとう鷹山。では改めてよろしく」

柊と初めてあいさつを交わした鷹山は不思議な感覚を覚えた。


(初対面……だよね?)

柊とは初対面のはずであるが、とてもそんな感じがしなかった。

柊のことは石動から断片的に情報を得ているが、伝聞から得られた情報とはまた違う感じであった。


(石動さんに似ているんだよね)

デルタファイブに勤務しているときは、ついつい石動のことを目で追ってしまうため、石動のことをよく知っていた。

鷹山は、柊とは会ったばかりなのに、柊には石動と同じような波長を感じる自分に驚いていた。


(それに……なんで?)

石動と柊が一緒にいる空間は、彼女にとって、えも言われぬ多幸感を醸し出していた。


⚠─────

※1 「俺と俺で現世の覇権をとりにいく 第20話〜 」https://kakuyomu.jp/works/16818093081647355813/episodes/16818093082812719191

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る