第78話 起業
「えええっ!?」
翔太の発言に、神代が驚きながらも不安な表情を見せた。
「柊さん……まさか……」
『おぃおぃ、神代さんが絶望的な顔してるぞ』
石動は、わなわなと震えている神代を心配そうに見ている。
「梨花さんが思っているようなことにはならないから、大丈夫だよ――あっ!」
翔太は、安心させるように言ったが、神代の本名を言ってしまったことに気づいた。
「石動さんなら大丈夫ですよ。それで――」
橘も続きが気になるようだ。
「石動が立ち上げた会社に俺が入ることになりました」
「「えっ?!」」
「柊が表に出ることを嫌ったので、俺が代表になります」
「それで、当事務所とアクシススタッフさんとの契約を、石動さんの会社に切り替えるということですね」
「話が早くて助かります」
橘は翔太が言わんとしたことを先読みして言った。
「ええぇっ! なんでそれだけでわかるの?!」
驚いている石動に、神代が「うんうん」と同意している。
「ふふふ、柊さんのことですから」
「むぅ、理由になってないですー」
神代は不満顔だ。
(まさか、マウント取ってるとかじゃないよな……)
「サイバーフュージョンさんとは、当事務所との契約ですから、こちらはこのままで大丈夫ですね」
「はい、問題ないと思います」
「ごめん、ついていけない、どういうことだ?」
石動の疑問はもっともだ。
翔太は霧島プロダクションとの契約について、なにも説明していなかった。
「アクシススタッフから俺が霧島プロダクションに派遣されているんだよ」
「え? お前の会社はIT業界だろ? 芸能事務所に? アストラルテレコムは?」
「それは――」
翔太は石動に、ブログのメンテナンスなどの仕事をしていることを伝え、サイバーフュージョンとの関係も簡単に説明した。
「あの……それで柊さんは――」
「うちとの契約先が変わるだけで、基本的にはそのままってことよ」
「よかったー」
神代は心底ほっとしたような表情を見せた。
神代の反応を見た石動は翔太をジトーっと睨んだ。
『なんだよ?』
『さっきの件、後でまた聞かせてもらうからな』
石動は席を外したときの話を蒸し返すつもりのようだ。
「それで、いつ頃になりそうでしょうか?」
「野田の転職先が決まったら、野田と同じタイミングで辞める予定です。
アストラルテレコムの今の部署は俺と野田しかいないので、一人だけ残ると大変なんですよ」
「ああ、なるほど……アストラルテレコムさんもアクシススタッフさんも大変になりそうですね」
「野田さんは行く先が決まってるの?」
神代はようやく普段の表情に戻った。
「サイバーフュージョンを紹介しているんだ」
「そっか! 最強のコネだね!」
「どういうことだ?」
「野田は知ってるだろ? お前と初めて会った時に一緒にいたやつだ」
「ああ、知ってるが、俺が知りたいのはコネのほうで――」
「サイバーフュージョン社長の上村さんに直接お願いしたんだ」
「えええっ!? なんでお前が?!」
「えっと、石動にはどこまで説明できますか?」
翔太は映画について、橘に確認した。
「そうですね、もうすぐ製作発表があるので、そのタイミングでお願いします」
映画の制作発表では、映画のタイトルやキャストなどが公開される。
橘の発言から、スポンサーの情報もこのタイミングで話すことは問題なさそうだ。
相談の結果、 映画『ユニコーン』の制作発表会見に石動を連れて行くことにした。
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