第31話 オーディション1
「なんか、俺のほうが緊張してきたよ」
翔太はアシスタントマネージャーとして、同席している。
オーディションで使う小道具として、PCを持ち込んでいるため、これらを準備したり確認するのが翔太の役割だ。
「ものすごく、シンプルな台本ですね」
翔太は台本を見て言った。
演劇の台本を見るのは初めてで、この業界に興味がない翔太でも、気持ちが高ぶってきた。
台本はオーディション当日に配布された。
これは、情報漏えいを防止する意味もあり、一般的なようだ。
台本はオーディション後に回収される。
(これだけ情報が少ないなら、漏えいしても影響はないと思うけど、ルールで決められているんだろうな)
📽️─────
【登場人物】
的場 IT起業家
上岡 ベンチャーキャピタルの投資家
【会議室】
的場が上岡にプレゼンテーションの資料を配布する。
または、的場がプロジェクターに資料を投影する。
的場 それでは、○○○について説明いたします。
的場が○○○のプレゼンテーションを始める。
※ ○○○の部分は任意。
上岡は的場のプレゼンテーションを聞きながら、リアクションする。
的場 以上です。なにかご質問はありますか?
上岡が質問する。
─────🎬
神代は主役の的場役で、メインスポンサーである上村が上岡役となる。
ここまでは想定通りだ。
プレゼンテーションの内容はオーディション参加者が事前に用意することになっており、内容は原作から著しく逸脱していない限りは制限がない。
オーディション参加者は狭山と岩隈、そして神代の3名だ。
狭山と岩隈は監督である風間の推薦で、神代はプロデューサーの山本からの推薦で参加している。
審査員は上岡役との兼務で上村と、風間、山本の三名である。
岩隈はベテランの俳優で実績もある。
風間の推薦は妥当と言えるだろう。
原作の主役から年齢が一番近いのは狭山で、岩隈がそれを上回り、神代が下になる。
性別も考慮すると、狭山がもっとも原作の主役に近く、神代はもっとも遠くなる。
「上村さんが上岡役なのは大きいですね!」
神代の発言に翔太と橘は頷いた。
上村を落とす 作戦だったため、都合のいい展開になった。
審査員だけでなく、相手役にもなるほどこの作品に思い入れが深いのだろう。
「狭山も同じ作戦で来ると思います」
翔太は神妙な表情で言った。
狭山のアドバイザーである船井なら、同じ作戦を取ることが想定される。
(同じ土俵になったら、百戦錬磨の船井に勝てるだろうか……)
「心配しなくても、大丈夫ですよ」
橘は自信満々に言った。
神代も同様に、負けるなどとは微塵も思っていないようだ。
翔太は二人の自信の根拠に見当がつかなかったが、きっと大丈夫なのだろう。
***
オーディションの順番はくじ引きで決められ、次のようになった。
1. 神代
2. 岩隈
3. 狭山
「一番手ですか……これって有利なんですか?不利なんですか?」
全くの門外漢である翔太が質問した。
「うーん、人数が多いと中だるみするので、間の人が不利になる場合もあるけど、今回は三名だから関係ないと思うよ」
神代が答えた。
順番は全く気にしていないようだ。
(料理漫画などの対決場面では、後攻が圧倒的に有利だけど、あれはフィクションだからなぁ)
翔太はとりとめもないことを考えていた。
「機材の準備があるので、最初なのは助かるよ」
会場には電源とインターネット回線が用意されていることを事前に確認済みだ。
セットアップに時間がかかるため、先に準備できるのは大きなアドバンテージだ。
「えへへ、私、くじ運いいでしょ!」
神代は全く緊張していないようで、頼もしく感じる。
『梨花さんって、オーディション前はいつもこんな感じなんですか?』
翔太は小声で橘に聞いた。
『こんなにテンションの高いのは初めてです』
橘は小声で答えた。
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