第10話 変装

打ち上げから帰宅した翔太の携帯電話に、田村からの電話がかかってきた。

撮影のことを心配して、田村が連絡をしてきたのだろう。

「柊くん、今話せる?」


「うん、今ちょうど帰ってきたところ。撮影の件だよね?」

「あ、そうそう、そうなんだよ」

取ってつけたような返事が返ってきた。これ以外の用件が思いつかないが……


翔太は田村に問題なく撮影が完了したことを報告した。

色々とやらかしてしまったことは伏せておいた。


「今朝言っていた、奢ってあげる件なんだけど、友達を一人連れてきてもいい?」

「もう、体調は大丈夫なのか?」

田村は相手が異性相手でも、全く気にしないタイプだ。

二人きりが気まずいとかそういう理由ではなさそうだ。


「あ、その友達はすごく忙しいので、今度の土曜日しか時間がとれなくて、その頃には私も良くなってると思う。

時間とお店もこっちが指定していい?」

「奢られる立場なので、なんでもいいよ」

田村は同期だが、高卒入社なので年下になる。

会社からもらえる給料はたかが知れているので、もらえるものはもらっておく。

面子や体裁などはどうでもいい。


***


土曜日、翔太は指定された店に到着した。

ランチタイムのピークが過ぎ、席がやや空いてきたようだ。

田村とその友人はすでに到着していたので、翔太は席に向かった。


「はっじめまして!リカと言います。よろしくお願いしまーす!」

リカと名乗った女性はやたら元気に挨拶した。褐色の肌が明るさを強調している。

髪は明るく染められており、長い髪をポニーテールにまとめている。

カジュアルなシャツにジーンズという装いだ。

翔太は得意ではないタイプだが、丁寧に挨拶した。

「田村の同期の柊です。よろしくお願い―――ん?」


リカの手元に目を向けると、派手な爪をした指でなにかを操作をしているような動きをしている。

翔太は小声で聞いてみた。

「もしかして、神代さん?」

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