古書

 フリマアプリを通じて1冊の怪談文庫を購入しました。

 購入して2、3時間で発送頂いたのですが、通常であれば翌日に届く距離なのに3日かかりました。

 嬉々として封を開け取り出した瞬間、「なにか変だな」と感じたのです。

 ごく普通のビニール袋に包まれ、封筒に入っていただけなのですが、何冊も購入してきて初めて感じる不吉な感覚。


 薄い文庫ですから、遅読の私でも3日で読めると考えたのですが……

その夜から急激に体調が悪化してしまったのです。

 本を手にすると妙な感覚を覚え、息苦しさと全身に倦怠感を強く感じるのです。

 私は無職の病み人なので多くの人と接する事はなく、また、空間に踏み込む事もほぼありませんが、2度目の新型コロナを発症していました。


「なんだ!コロナの苦しさか!」

と思いましたが、どうも違いが有るのです。

 本を置けば苦しくないのに、読み進めようと手にすると途端に強く苦しく。

 読む事を放棄してしまえば良いのでしょうが、なぜか「読み切らなければならない」との思いが心の奥底から湧き上がる……。

いや、要求されたのです。

 コロナ以外の体調変化も起こり、歩行も辛くなりました。


 入手してから10日以上経過した、8月13日の朝に読み終えました。

 外したカバーを掛け直し読み終えた本の山に積むと、それまで手のひらから伝わってきた感覚は消え失せました。


 偶然の一致だと嗤われても当然ですが、開封して手に持った時に感じた違和感は忘れないでしょう。

 そして、二度と感じたく有りません。

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