葬祭業

 葬祭業の営業に職を得た人の話。


「この仕事は幽霊を見たという人が多いのですが、あなたは大丈夫ですか?」

 面接の終了間際に、役員から軽い調子で訊かれたそうです。

「まったく問題ないです。大丈夫です」 

 怪しいモノの存在を信じていない彼は、『何を馬鹿なことを』を質問してくると呆れたそうです。

 営業職に必要な資格試験に合格するまでは、ひたすら勉強を繰り返す日々だったそうですが、数日経った頃から徐々に影が視界に入る様になったそうです。

 営業所にいる間は何も見えないのですが、一歩離れるとチラついてくる。

 順調に資格試験の模擬テストで確実に合格点を取れるようになりましたが、反比例するように体調が崩れてきたそうです。

 

 試験本番数日前の日曜日。彼は自宅トイレから外を見ると、レース?のついた帽子を被った喪服女性が滑るように近づいてきて、窓外を通り過ぎて行ったそうです。

 結局、資格試験には合格しましたが、体調が大きく崩れ発熱と倦怠感が続き、復職の目途がつかず退職したそうです。


 退職以降もしばらくの間は頻繁に影が出現していたそうですが、数年経った今は頻度が低下しているそうです。

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