新耳袋

 新耳袋をご存じでしょうか?

 角川書店から文庫として全巻刊行されていますが、私が読んだのはハードカバーの単行本でした。


 何巻だったか覚えていませんが、新耳袋を一晩で読み終えると小さな怪異に襲われた小池壮彦氏他数人の体験談が一話に纏められて掲載されていました。

 その巻を、私も一晩で読み切ろうとしていたのです。

 

 数話を残すばかりとなった午前二時頃。

 家族は皆就寝して、私だけが布団に横たわって読みふけっている状況でした。

 突然、二階廊下から軋み音が聞こえてきたのです。


 ギシッ、ギシッ。人が歩く音です。

 一階では両親が眠っていましたが、どちらかが上がってきたなら階段の照明が点灯したり、階段を上る足音が聞こえるはずなのに、真っ暗な廊下から聞こえてきたのです。

 つい先ほど読んだ話が頭の中を駆け巡り、私は慌てました。

 読むのは構いませんが、映像を見るのも体験するのも御免です。

 

 本を閉じて電気を消した途端、音は消えました。

 廊下と自室を仕切る襖の上部に貼られた障子の向こうは、深い闇に包まれていました・・・・・・

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