ついてくるもの

 高校へは六時台の電車に乗り、駅で私鉄に乗り換えてD高校に通学していました。

 部活動の練習を終えて学校を出るのは十九時過ぎ。

 私鉄に乗りJR駅に戻っても、タイミングが合わず十九時台の電車に乗れないか、部活の疲労で走らず二十時台後半の電車に乗り、家に帰っていました。


 その日はタイミングが合わず、駅で一時間ほど待って二〇時台の電車に乗りました。

 約一時間電車に揺られて、駅に降り立った二一時台も後半。

 私は駐輪場に停めた自転車に乗り、前後に誰もいない夜道を自宅に向けて漕ぎ出しました。 

 部活動で鍛えた脚は快調にペダルを漕ぎ、前輪と接し発電する前照灯が、古い街灯がまばらに照らす暗い街路を照らします。

 しばらく漕いでいると、背後に気配を感じ振り返りました。

 何かが私の後をついてきている?でも、ライトの光は見えないぞ?

 気のせいだったかと思いましたが、気持ち悪いので加速しました。

 マツコ・デラックスと似た体型だと書きましたが、鍛えていましたからペダルを漕ぐ脚力は強かったのです。

 国道を渡るために大幅に減速しました。その時に振り返って見ても、やはり前照灯の灯りは無く人影も見えませんでしたが、何かがついてくる気配は続いていたので再加速しました。

「何かおかしい。こんな事は初めての感覚だ」と焦りました。

 街灯が照らす十字路を自宅方向に曲がって振り返ると、音も無く自転車を漕ぐ真っ黒な人影が真っ直ぐ走り去る姿が、十字路に設けられた街灯に照らし出されました。


 駅舎から出たのは私が最後で、駐輪場から自転車を出したのも最後。

 人影に見覚えが有りましたが、私学女子高に通うその人は一九時台の電車に乗っているはずですし、電車に乗っていたら始発駅なり降車駅構内で姿を見たはず。

 

 三年間で一度だけの体験でしたが、あの真っ黒な人影は何者だったのでしょうか?

 


 


 

 

 

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