夏合宿の朝

 前話の翌日の出来事です。


 合宿最終日で布団や荷物を引き上げて、下級生含めた八人程度で二階を掃除していました。 

 左右両側の窓を開け放ちましたが、風は時折吹く程度で涼しくは無かったです。

 掃除を終え、あとは窓を閉め退出するだけの状態になった時、「ガンガンガンガン!」と金属同士を打ち付ける振動音が室内に鳴り響きました。

 室内にいた全員が驚き、音の源に目を向けて凍り付きました。

 左奥に一階から三階までを貫く細い金属パイプが三本あるのですが、それが風も無いのに激しく振動していたのです。

 身動き一つできない男達の眼前で、ひたすら激しく振動して音を立て続けるパイプ。

「なぜ振動している?近くで工事がはじまったか?裏手にある運送会社で何かやっているのか?」

 色々な疑問が湧き上がってきましたが、近くで工事は行われておらず、運送会社もトラックは出払っていて振動の源は有りません。

 何より自分たちがいる棟は別の学校施設と隣接していますし、背後は墓地が広がっていて、振動の源が至近にあるわけが無いのです。

 それに振動が伝わっているのであれば、室内に置かれた教卓が振動したり我々も感じるはずですが、まったく感じません。


 突然に始まった振動は唐突に終わりました。

 無言だった全員が一斉に口を開き、「今のはなんだったんだ!」と大騒ぎになりましたが、早く退出して部員達と合流しなければなりません。

 そこで問題になったのが、「パイプの傍の窓を、誰が閉めるのか」でした。

 奇怪な現象を目撃して、誰も近づきたくは有りません。

 皆が沈黙し互いの目線が交錯した結果、ひとりの一年生が閉める事となり、及び腰で窓とカーテンを閉めました。


 何がパイプを激しく揺さぶったのでしょう?

 いくら考えても答えは見つかりません。


 次回は私が一年生の時に聞かされた、遠征合宿で三階に宿泊した他校の生徒が深夜に目撃したモノの話を補足として、書こうと思います。

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