夏合宿の夜
私が通っていた高校はD高校と言って、何人ものプロスポーツ選手と著名な日本代表選手を輩出した学校です。
卒業した後に図書館が校舎の傍に新築されたのですが、私が在校中は校舎と道路を挟んで建つ三階建棟の一階に有りました。
ガラスドアの玄関を入ると左に男女トイレが設けられ(二階三階も同様です)、正面は図書室出入口のドア。右は上階に続く階段が設けられています。
二階はドアを開くと間仕切りの無い教室の様な空間で奥の壁に黒板が掛けられ教壇が置かれていました。
ここは主に各種委員会など学生活動に関する事柄に用いられていました。
三階は中央を幅二メートルほどの通路が貫き、突き当りには非常口が設けられ、非常口の外には二階からは使用出来ない非常階段が地上に続きます。
通路の両側には、10人前後が泊まり込める畳敷きの部屋が四つ設けられていました。
ある年の夏、合宿で校内に分散して泊まり込むこととなり、私は二階右手一番奥に布団を敷き眠る事になりました。
数日続いた合宿の最終日前夜。
就寝前に布団上で仰向けになり文庫本を読んでいると、「ハァ~」私の左耳傍で息を吹きかける音に続いて、「キュッキュッ」と革靴を磨く音が聞こえたのです。
なぜか「あ、誰かが野球のスパイク靴を磨いているな」と思い、左に顔を向けると誰もいません。
そこには黒板と教壇に壁が見えるばかり。
慌てて周囲を見回しても至近に誰も居らず、三メートルは離れた場所で下級生数人が会話を楽しんでいるばかりでした。
そもそも部活動で革製品は使用しません。スパイク靴など有る筈は無いのです。
一夜の極短い体験でしたが、一体誰が何を磨いていたのでしょう?
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